もう一度君に好きと言ってほしい

すいかちゃん

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第二話

親友と恋人になった夜

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幼い頃は、ただただ単純に好きだった。
一緒にいると楽しいとか、側にいると嬉しいとか。そこにはなんの下心もなかった。だけど、身体が成長するにつれて心も変わってきた。
啓介に対する好きは、友達としての好きじゃない。キスをしたい、身体に触れたい、1つになりたい。そんな欲を孕んだ好きだった。一度気がついてしまった想いに、司はひどく戸惑った。男が好きなわけじゃない。啓介が好きなのだ。だが、告白は無駄だとわかっていた。啓介は普通に女子が好きだったし、告白したところで気持ち悪がられるだけだ。だが、押さえ込もうとすればするほど苦しくなり、司は限界を感じていた。
「俺さ、啓介が好きなんだ。恋愛感情として…」
高校卒業の日。司は、ありったけの勇気を振り絞って啓介に告白した。両想いになりたかったからではない。自分の心にケジメをつけたかったからだ。いつまでも望みのない恋をしていたくなかったからだった。啓介にフラれて、司は自分の恋心に区切りをつけようとしていた。
だけど、司の恋は片思いではなかったようだ。啓介からも好きと言ってもらえた。初めてのキスは、想像していたよりずっと柔らかく甘かった。本当ならこれでめでたしめでたしなのだが…。
(…今日もなんもなかった)
デートした日。司はベッドにダイブして、ぼんやりと窓の外を眺めた。日曜日。啓介から映画に誘われた。司がずっと観たかった韓国映画。ベースはサスペンスだが、ロマンス要素が加わってかなりドキドキする。暗闇を利用して手を握れば、そっと返してくれた。
(今夜こそはって思ったのに…)
帰り道。わざとラブホテルが見える道を選んだ。啓介が誘いやすいように…。なのに、啓介ときたらそんな素振りも見せなかった。美味しいラーメンを食べてさようなら。別れ際にキスはしたが、なんて健全なデートなのだろう。男女ならこれでいいのかもしれない。だけど、司としては不満だった。
(これじゃあ、単なるダチじゃん)
キスだって、司からねだらないとしてくれない。
(やっぱり、俺が男だからなのかな…)
中学の時、啓介があるグラビアアイドルのファンだったことを思い出す。確か、ロリ系の顔ですごい巨乳。彼女に夢中になっている啓介を見て、司は自分の気持ちに気がついたのだ。なぜなら、そのグラビアアイドルがものすごく嫌いになったから。
(…男を抱きたいなんて、思わねーよな)
仰向けに寝転がり、司は自分の身体を掌でなぞる。ぺったんこの胸に、中央には男性としては当たり前にある性器。
(俺、贅沢なのかな…)
好きと言ってもらって、キスもしてくれて…。それだけじゃ満足できないなんて。だが、司としては不安で仕方ないのだ。もしかしたら、あれは勘違いなんて言われたら立ち直れそうもない。早く恋人としての証が欲しかった。
(自然と裸になれる場所なんて…)
銭湯やプールでは、人目がありすぎる。かといって、自宅の風呂に誘うのは変だ。
(そうだっ)
あることを思い出し、司は押し入れを漁った。目当ての雑誌を取り出し、ニンマリと笑う。

「温泉?」
学食でカツ丼を食べながら、啓介が瞳をキラキラと輝かせる。さりげなく広げた雑誌には、温泉の穴場スポットが載っていた。
「たまにはどうかなって。ほら、啓介って温泉好きだろ?」
ドキドキを隠しながら、司は用意していたセリフで啓介の興味をひいた。昔、啓介が温泉巡りしたいと言っていたのを思い出したのだ。温泉だったら裸になるのは当然だし、裸になればそういうムードになるだろう。
「いいね。行こっか」
啓介の言葉に、司は思わずガッツポーズをとった。こうして、恋人同士となって初めての旅行へと出発した。
旅行とは行ってもさほど遠出ではないため、ボストンバッグ1つで事足りる。
「なんか修学旅行以来だな。旅行なんて」
「そ、そうだな」
のんびりと観光地を楽しむ啓介と違い、司は緊張して落ち着かなかった。なにせ、今夜は啓介と…。これまで妄想で様々なシチュエーションは試してみた。だが、どれもこれも空回りしそうで…。関係を深めるどころか、嫌われてしまいそうな気がして仕方なかった。
(大体、俺に色気なんてあるはずないんだよ。啓介を誘ったって…)
笑われるか嫌われるかのどちらかもしれない。司のテンションはだだ下がりだった。美しい景色や楽しげなアトラクションも、司の心を明るくしてはくれなかった。だが、司は気付かなかった。啓介が心配そうに自分を見つめていたことに…。
「思ったより広いな」
司が予約したのは、部屋に露天風呂が付いているタイプだった。窓からの景色も悪くなく、和風モダンな内装は文句なしといったところだ。夕食には大きめのカニが出て、味も絶品。なのだが、司はやはり喜べなかった。一緒に温泉に入ろうとさえ誘えず悶々としていれば、啓介から話があると言われた。
「なぁ、司。僕、なにかしたかな?」
敷かれた布団の上。啓介がおもむろに口を開く。
「え?」
「旅行中、ずっと上の空だったよね。楽しくなかった?」
沈んだような啓介の声に、司は慌てまくった。だが、この状況をうまく説明できない。まさか「啓介とエッチすることばかり考えていた」なんて言えない。
「ちっ、違うよっ。ただ…」
「ただ?」
啓介の眼差しが鋭くなり、司が怯えたように俯く。これでは、嫌われるばかりだ。司は、正直に自分の気持ちを話すことにした。
「俺、啓介ともっとちゃんと恋人になりたいんだ。ちゃんと、その、セックスもしたい」
「え?」
司の言葉に啓介が驚いたような声を出す。司は、この恋が終わったと思った。
(きっと軽蔑された。身体だけが目的と思われた)
司はギュッと目を瞑り、啓介の言葉を待った。が、答えは力強いハグと息まで奪いそうな激しいキスだった。舌を貪られ、司は啓介にしがみつくようにしてその激しさに耐えた。
「…啓介?」
「良かった。僕だけじゃなかったんだ」
心底安心したような呟きに、司は啓介も同じ気持ちだったと知った。
「そういう経験なかったから、いつ言えばいいのかわからなくて…。不安にさせていたなら、ごめん」
啓介の背中を抱き返しながら、司は(こういう奴だったよな)と思った。奥手で、いつも相手のことばかり考えている。そんな啓介だから好きになったのだ。司は啓介に軽くキスをした。キスはどんどん深く激しくなり、自然と啓介が押し倒す形となった。
「…抱いていい?」
啓介の言葉に、司は耳まで真っ赤にして頷いた。電気が消される音が妙に生々しくて、司はギュッと目を閉じた。やがて、全裸の啓介が覆い被さってくる。

「ん…っ、あ…っ、はぁ…っ」
布団の上で、司は激しいキスと愛撫に息を喘がせた。薄目を開けて、自分の身体を貪る啓介にフッと笑みを浮かべる。
(こんな啓介、初めて見た)
普段はおとなしくて優しい啓介も好きだが、こんな風に野性的な姿もいい。司は啓介の背中を強く抱き締めた。互いの息遣いの荒さが増していき、触れるだけでは満足できなくなってきた頃。啓介の指が躊躇いがちに司の後ろをなぞった。
「…あっ」
思わず声を上げれば、啓介の指が慌てて離れる。
「ご、ごめん」
司が謝れば、啓介が笑いながら首を左右に振った。
「僕こそ、ごめん。やっぱり嫌だよね?」
「違うっ。ただ…」
「ただ?」
「もし、失敗したらって…」
これまで、司はソコに触れたことがない。本や噂では感じるらしいと聞いたが、実際はやってみないとわからないのだ。もし感じなくて、啓介をガッカリさせたら…。だが、啓介と繋がりたいという気持ちも本当なのだ。
「大丈夫。そんなことで司を嫌いになったりしないから」
「う、うん」
啓介は自身の指を舐めると、ゆっくり慎重に司の蕾を開いていった。最初は違和感しかなかったというのに、次第に奥がムズムズしてきて司は思わず啓介の腕を掴んだ。
「はぁ…っ。なんか、変…っ」
「どんな風に?」
首筋や乳首にキスをしながら、啓介が指を増やしていく。萎えかけた司の前は勢いを取り戻し、次第にビクビクしてきた。感じていることは明白だ。
「良かった」
「いや…っ、出る…っ」
「たくさん出して。僕の指で、感じて」
司は何度も指でイカされ、やがて身体中の力が抜けていった。そして、その瞬間を啓介は待っていた。ハァハァと荒い呼吸を繰り返す司を、啓介は時間をかけて貫いた。
「んん…っ、はぁっ、あっ、あ…っ」
「司。もっと力抜いて…っ」
「無理…っ。啓介、デカ過ぎ…って、嬉しそうにするなっ」
啓介が腰をリズミカルに揺すれば、司の全身に甘い震えが走る。
「あっ、ん…っ、啓介っ、もっと早く…っ、あ…っ」
「司っ、好きだよ」
啓介の囁きを聞いた瞬間。司は堪らない快感に喘ぎながらイッた。心と身体が一緒になったような、そんな感じだった。
この夜。司は、やっと啓介と恋人になれたことを実感した。
翌朝。気恥ずかしさを隠しながら、二人で露天風呂に入った。さほど広くはないため、肌は常に密着状態だ。気がつけば唇を合わせ、じゃれ合うように肌に触れた。
「啓介。好きだよ」
「僕も、司が好きだ。ずっと…」
湯気が立ち込めるなか、二人は飽きることなく愛を確かめ合った。









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