この歌声が届くまで

蒼村 咲

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9月25日 木曜日

第39話 思わぬ刺客

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 事件が起こったのは、合唱祭本番を来週に控えた木曜日だった。
 教務主任の篠田先生を伴って、なんと教頭の梶田先生が生徒会室にやってきたのだ。

「たいへん盛り上がっているところ悪いんだけどねえ」

 もったいぶった口ぶりで教頭先生は生徒会室の面々をぐるりと見渡し、最後に生徒会長である桐山会長に向き直った。合唱祭実行委員長である新垣くんではなく、桐山会長に。

「今年は一学期にも二学期にも、気象警報の影響で休校になった日が何日かあったでしょう。あの分の遅れをね、どうしても定期テストまでに取り戻しておかないといけないんですよ。生徒会長たる君なら、お祭りと勉学、どちらが大切か考えるまでもないでしょう」

 教頭先生が言い終わると同時に、生徒会室に痛いほどの沈黙が落ちる。
 教頭先生は、カリキュラムの遅れを盾に、桐山会長の生徒会長という立場を人質に、合唱祭の中止を迫ってきたのだった。
 新垣くんが抗議しようと口を開きかける。が、桐山会長はそれを素早く目だけで制した。
 こんなの、この二人でなければ成り立たない芸当だろう。現に、先生たちは気づいていないようだった。

「そのような重要なことならなぜ直接全校に周知せず、わざわざここへ来られたのです?」

 桐山会長が、空恐ろしいくらいに穏やかに問う。
 すると、教頭先生は少しだけ目を細めて言ったのだ。

「そりゃあ、今年の合唱祭は君たち生徒が企画したものですからね。教師が一方的に中止を伝えたのでは理屈に合わないでしょう」

「どうして……今、なんですか?」

 複数人分の視線を感じたことで、私はそれが自分の発した言葉だと気づいた。
 こんな直前になってから、それこそ切り札のように中止を迫るなんて、あまりにも──卑怯だ。

「どうしても何も……各教科の授業の進行具合を確認していて『これはいかん』と気づいたのがつい、昨日のことですからねえ。教師というのはとにかく多忙な職なんですよ。君たちが思っている以上にね」

 さあこれで話は終わったとばかりに、二人の教師は生徒会室を出て行った。

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