私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス

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招かれざる客

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 キァラの件から1ヶ月経った。コルネリアは満月の宴から目が覚めてすぐにヴァルターへ、リューイについて伝えた。

 ヴァルターはリューイを国へ入れることに了承し、帝国だけではなく法国の動きにも気をつけるとコルネリアに約束してくれた。

 また、キァラの件があったため、ヴァルターは屋敷内や領土内の人間を調べ直し、国境の検問も強化するようにした。

 そのため、調査などでヴァルターは慌ただしく動き、コルネリアとゆっくり夕食を取ることも少なくなっていた。しかし、コルネリアが眠るまでには帰るようにして、寝る前の時間を共にしているため、二人の仲は良好だった。

「コルネリア様。もうすぐ庭師が参ります。お花が咲けばぐっと屋敷も華やかになりますわ」

 屋敷や庭を整えるのも、妻であるコルネリアの役目の一つだ。カリンが日傘をさしながらコルネリアに尋ねた。

【そうね。楽しみだわ】

 ヴァルターの屋敷内は、花が全く咲いていない花壇もあり、コルネリアが庭師と話をしながら整えているところだった。

 屋敷の顔でもある正面玄関の前でカリンとコルネリアが話をしながら庭師を待っていると、たくさんの花を両手に抱えた庭師が走ってやってくる。

「お、奥様!お待たせして申し訳ございません!」

 息を切らして肩で息をする庭師。約束よりも早く来てしまった自分が悪い、とコルネリアは首を振って意思表示をした。
 
 と、コルネリアの後ろにある玄関ドアが乱暴に開く。ばんっと大きな音が鳴り、コルネリアが驚いて後ろを振り向く。

「後悔しますぞ!」

「後悔はしないだろう。さあ、早く帰るがいい」

 怒鳴りながら出てきたのは、神父服を着た男性だった。その男性と向かい合わせに立つのはヴァルターだ。

 手をひらひらと動かし、出ていけとジェスチャーでも示している。

「野蛮な国の恩知らずが!……おや、コルネリア様」

 怒鳴った神父はコルネリアを見ると、ころりと表情を変えた。ニヤニヤ笑顔を浮かべると彼女に近づき、そっと耳元でささやく。

「嫌になればいつでも法国に帰りなさい」

「離れてください!」

「離れろ!」

 カリンがコルネリアと神父の間に身体を入れてかばい、ヴァルターが鋭く叫ぶ。

 ふん、と神父は鼻を鳴らすと、その場から去った。

(――あの神父。確かパトリック派のやつだわ)

「コルネリア。すまない。びっくりしただろう?」

【何があったんですか?】

「少し中で話そうか」

 ヴァルターがコルネリアの肩を抱き、屋敷の中を指差す。コルネリアは約束をしていた庭師に謝罪をすると、執務室へヴァルターと向かった。







「さっきの神父はブーテェ法国の使者だ。第一王子がクーデターを起こす予定で、それを支持して兵を出すように言われた」

【なぜネバンテ国に?見返りに何を提示してきたんですか?】

 メヨ帝国と交友のある法国であれば、頼るのはネバンテ国ではなく帝国だろう。コルネリアが不思議そうに首を傾げた。

「法国の聖女と結婚をしたのなら、法国を支援するのは当然のこと、らしい。見返りはないが、協力しない場合はコルネリアを連れて帰ると言っていた」

【私、帰りませんわ!】

 怒りからコルネリアがぎゅっと眉を顰める。

「大丈夫だから。泣きそうな顔をするな」

 怒っているコルネリアだが、不安になっていると勘違いしたヴァルターが優しく抱きしめる。

「不安にさせると思って言ってはいなかったが、帝国の方で出兵をした動きがあった。戦争をするには少ない人数だから、訓練かと思ったが。兵士たちは法国に入っていったんだ」

(――帝国にクーデターを手伝ってもらうつもりなんだわ!もしかすると、これの対価としてリューイを渡すつもりなのかもしれない)

「ネバンテ国としては、動きに注意しながらも傍観するつもりだ。使者には聞かなかったことにする、と言ったら怒ってしまったがな」

 ネバンテ国は大きな国ではない。ここで法国のクーデターに反対をするよりも、傍観者として見守る方が得策だろう。そう考えたコルネリアは頷く。

(――リューイも心配だけれど、国内に残してきた見習いの子も心配だわ。それに、第三王子は無事に逃げられるかしら。何かあったら、法国の民はどうなってしまうんだろう)

 コルネリアはそっとヴァルターから身体を離すと、両手を組んで跪く。

(――女神様。どうか、みんなが無事でいられますように、ご加護をお願いいたします)

 部屋の中心で目を閉じ、ただひたすらコルネリアは女神に祈りを捧げた。


 その日から4日後。ブーテェ法国で、第一王子のパトリックがクーデターを起こした。
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