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そして30日目
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もう涙も出てこない。国民たちは高台の上にある教会に身を寄せ合い、ぶるぶると震えながら祈りをささげていた。
自分たちは女神から見捨てられた、と国民たちは悟っていた。動く元気のある者は国境を越えてネバンテ国などに避難をしたが、多くの国民たちは移動する体力も残っていない。
ただただ、水が入ってこない教会で震えながら、女神から下された天罰に耐えるのみだった。
「パトリックめ!」
一人の男性が叫びながら立ち上がる。
「あのくそ野郎のせいで、俺たちの国は駄目になったんだ」
「そうよ。あの男さえいなければ」
誰もが口々にパトリックを罵る。しかし、罵る人の中からパトリックを倒し、女神に許してもらおうとする人は出てこない。
彼らは、ただただ女神に許してもらうのを待っていた。
「あああああ。くそくそくそ」
誰もいなくなった部屋でパトリックは頭を抱えていた。今日でクーデターを起こした日から一か月が経つ。気が付けば宰相が消え、貴族が消え、使用人までもが消えていた。
何日も服を着替えていないパトリックからは異臭がし、髪は油でべたべたになっている。とても一国の王とは思えない見た目だった。
今まで一度も料理や洗濯などをしたことがないパトリックは、身の回りのことなど何もできない。食料自体も食料庫が焼けてしまったため、王宮には残っていなかった。
「パトリック様。落ち着いてください」
ここ数日雨水しか飲んでいないマリアンネが、ふらふらとしながらパトリックに声をかけた。青色の衣は薄汚れ、華奢で美しかった手は荒れ、つやつやとしていた髪の毛はぼさぼさで見る影もない。
マリアンネは食料がなくなって早々に王宮から逃げようと試みたが、パトリックに見つかり彼の自室に閉じ込められていた。マリアンネの足にはロープがかけられ、ベッドの脚にくくりつけられている。
「お前も俺が愚かだと思っているんだろう!」
ばん!とパトリックが足元に転がっていた本を蹴り飛ばすと、きらりと何かが光った。マリアンネはちら、と飛ばされた物を確認すると、媚びるように笑顔を浮かべた。
「そんなこと思うわけがありませんわ!女神様の意思にそぐわないことをすれば、こんな結果になると教えなかった水色衣の聖女が悪いんです」
マリアンネの言葉に、パトリックがぎらぎらと目を光らせて「誰のせいだと?」と尋ねる。
「聖女ですわ!コルネリア達です!あの子たちは女神様の言葉を聞けると言っていましたし、おそらくこうなることだって分かっていましたわ」
「コルネリアめ」
ぎり、とパトリックが歯を食いしばり、コルネリアの顔を思い出した。儚げで美しい横顔、可愛がってやろうと思ったのに、とぐちゃぐちゃな自分勝手な感情があふれ出す。
パトリックはマリアンネ同様、ここ数日は雨水しか口にしていない。定まらない思考の中で、コルネリアが悪かったというマリアンネの言葉だけがしっかりと響いた。
「くそ。あいつのせいだ」
ふらり、と立ち上がり部屋からパトリックが出ていく。その様子を確認したマリアンネは、自身の足にくくりつけられているロープを近くに落ちているナイフで切った。先ほどパトリックが本を蹴飛ばしたときに、運よく近くにナイフが転がってきたのだ。
マリアンネは先ほどまで浮かべていた笑顔を消し、辺りをきょろきょろと窺いながら部屋を出て行った。
「ひっ」
ばんっと外から大きな音がし、マリアンネは悲鳴をあげる。何かさらに悪いことが起きている。そう察知したマリアンネは、人気の少ない地下の方へと向かった。
自分たちは女神から見捨てられた、と国民たちは悟っていた。動く元気のある者は国境を越えてネバンテ国などに避難をしたが、多くの国民たちは移動する体力も残っていない。
ただただ、水が入ってこない教会で震えながら、女神から下された天罰に耐えるのみだった。
「パトリックめ!」
一人の男性が叫びながら立ち上がる。
「あのくそ野郎のせいで、俺たちの国は駄目になったんだ」
「そうよ。あの男さえいなければ」
誰もが口々にパトリックを罵る。しかし、罵る人の中からパトリックを倒し、女神に許してもらおうとする人は出てこない。
彼らは、ただただ女神に許してもらうのを待っていた。
「あああああ。くそくそくそ」
誰もいなくなった部屋でパトリックは頭を抱えていた。今日でクーデターを起こした日から一か月が経つ。気が付けば宰相が消え、貴族が消え、使用人までもが消えていた。
何日も服を着替えていないパトリックからは異臭がし、髪は油でべたべたになっている。とても一国の王とは思えない見た目だった。
今まで一度も料理や洗濯などをしたことがないパトリックは、身の回りのことなど何もできない。食料自体も食料庫が焼けてしまったため、王宮には残っていなかった。
「パトリック様。落ち着いてください」
ここ数日雨水しか飲んでいないマリアンネが、ふらふらとしながらパトリックに声をかけた。青色の衣は薄汚れ、華奢で美しかった手は荒れ、つやつやとしていた髪の毛はぼさぼさで見る影もない。
マリアンネは食料がなくなって早々に王宮から逃げようと試みたが、パトリックに見つかり彼の自室に閉じ込められていた。マリアンネの足にはロープがかけられ、ベッドの脚にくくりつけられている。
「お前も俺が愚かだと思っているんだろう!」
ばん!とパトリックが足元に転がっていた本を蹴り飛ばすと、きらりと何かが光った。マリアンネはちら、と飛ばされた物を確認すると、媚びるように笑顔を浮かべた。
「そんなこと思うわけがありませんわ!女神様の意思にそぐわないことをすれば、こんな結果になると教えなかった水色衣の聖女が悪いんです」
マリアンネの言葉に、パトリックがぎらぎらと目を光らせて「誰のせいだと?」と尋ねる。
「聖女ですわ!コルネリア達です!あの子たちは女神様の言葉を聞けると言っていましたし、おそらくこうなることだって分かっていましたわ」
「コルネリアめ」
ぎり、とパトリックが歯を食いしばり、コルネリアの顔を思い出した。儚げで美しい横顔、可愛がってやろうと思ったのに、とぐちゃぐちゃな自分勝手な感情があふれ出す。
パトリックはマリアンネ同様、ここ数日は雨水しか口にしていない。定まらない思考の中で、コルネリアが悪かったというマリアンネの言葉だけがしっかりと響いた。
「くそ。あいつのせいだ」
ふらり、と立ち上がり部屋からパトリックが出ていく。その様子を確認したマリアンネは、自身の足にくくりつけられているロープを近くに落ちているナイフで切った。先ほどパトリックが本を蹴飛ばしたときに、運よく近くにナイフが転がってきたのだ。
マリアンネは先ほどまで浮かべていた笑顔を消し、辺りをきょろきょろと窺いながら部屋を出て行った。
「ひっ」
ばんっと外から大きな音がし、マリアンネは悲鳴をあげる。何かさらに悪いことが起きている。そう察知したマリアンネは、人気の少ない地下の方へと向かった。
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