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179、強制ログアウト素晴らしいよ
しおりを挟む気付くと、自分の部屋だった。
強制ログアウトされたようだ。
そこまで深い眠りの呪文を使われたんだと呆然とした。
普通戦闘中に掛かる眠りはそこまで深くないから、衝撃を与えられたら起きるんだけど、これじゃ起きれないよな。それよりユキヒラとヴィデロさんをそのままにログアウトしちゃったよ。
俺は落ち着くために一旦キッチンに行って飲み物を飲んで、生理的な色々をしてから、ダメもとでもう一回ログインした。
今度は強制ログアウトさせられることもなく、ただ動けないだけで意識自体は覚醒した。でも目の前は真っ暗。何かの中に入れられて運ばれてるのはわかるんだけど。ステータスを見てみると、まだ沈黙と睡眠のバッドステータスが付いていた。待って、俺起きてる。意識は起きてるのに何で睡眠。と思ったら、身体は全く動かなかった。身体が寝てるのか。だから目が開かなくて暗いのかな。声もまだ出ないらしいし。闇魔法怖い。
それにしても身体は寝てるのに意識だけ起きてるって、何かの仕様なのかな。それともバグ? 戦闘中に深い眠りについたことで魔物に一方的に殺られるというトラウマを植え付けないための措置とか。そういう時はしばらく待ってからログインすれば死に戻りしてるだろうからトラウマ物の体験を回避できるもんなあ。きっと仕様だな。
ステータス自体は指を使わなくても視線で意識すれば何とかなるから、一旦ユキヒラにメッセージ……と思ったけど、ダメだった。メッセージ欄自体が灰色になってる。この状態だから送れないのか。
動かない身体にイライラしながら色々と考えていると、どこかに身体の入った物が置かれたのがわかった。
時間にして捕まった時から10分くらい。さすがにその時間じゃ王宮からは出てないだろうと思うけど。
箱のようなものから出された身体が絨毯の上に置かれる。
「この者が、我らアドレラ教を貶めるような薬を作った者か」
「はい。この者が拠点としているトレの者からの情報なので、確かかと。穢れを祓う物と呪いを解く物を作ったそうにございます」
「あの男の元に向かっていたということは、すでに現物は出来上がっているのだな」
「その様にございます」
「出せ」
「は」
何やら偉そうな人の声が聞こえたと思ったら、身体中が数人の手によってまさぐられている。
カバンとかぐいぐい引っ張られてるんだけど。壊れたら新しい物って手に入るのかな、インベントリに通じるカバン。これがないとすっごく不便なんだけど。
「ありません」
「そんなはずはない。隈なく探せ!」
ローブを外されてカバンも外されて、装備を奪われてひたすら探されてる。でも残念。インベントリは他の人には開けれないし見れないんだよ。俺がプレイヤーでよかった。カバンだって空だよ。残念でした。
これは、寝ててよかったってところかな。尋問とかされないし。
「教皇聖下、こ奴には連れがおりました。もしやそちらに物を託したのかもしれません」
「連れとは。あの男の子飼いの者ではなく?」
「はい。あの男の子飼いと、近衛騎士が一人」
会話を聞いた瞬間、心臓が一つ跳ねた。
待って、今度は狙いをヴィデロさんに変えた⁈
「探し出し、連れて来い。あの男の子飼いはどうとでもしてよい」
ユキヒラ殺されちゃう⁈ うわ、どうしよう。こうなってくると身体が寝てるのがもどかしい!
起きろ、起きろ俺!
そんな思いも空しく、バッドステータスはついたまま。
っていうかたとえ起きたとしても、沈黙はついてるから、俺には尋問できないんじゃないかこいつら。
あの見えない糸みたいな物の拘束は探すのに邪魔で解かれてるみたいだから、起きたもん勝ちじゃないか!
誰かが一発殴ってくれたら起きるのに俺! 蹴ってもいいから身体に衝撃を与えてくれ!
床に転がされて放置されたまま、時間だけが過ぎていく。ヴィデロさんが教会の奴らにやられるとは思わないけれど、闇魔法とか使われたらどうなるかわからない。っていうか教会の奴ら、闇魔法とか使ってるんだ。聖魔法どうした。
この二つの属性ってなんか相反しそうなんだけど両方覚えることって出来るのかな。他の四大属性魔法は全部覚えられるらしいけど。ユイが色々使ってたから。
今日はドイリー腕に結んでない。でも結んでたら今頃こいつらに奪われてたかもしれないから、付けてなくてよかったのかな。でもあれがないと魔法系ダメダメだからな。
全然バッドステータスが解除されなくて悶々としていると、ドアが勢いよく開く音がした。
「教皇聖下! 二人とも手練れで次々手の者が切り捨てられています!」
「まだまだいるだろう。騎士の信者を前面に出せ」
「それが、騎士連中は皆堕落してしまって……! 聖下の教えを忘れてこちらに剣を……!」
「堕落、だと」
堕落って、洗脳が解けるってことかな。少なくとも王宮の騎士たちがちゃんとしてたのはほっとした。
それにしても教皇って、教会の一番偉い人ってことだよな。
こんな簡単に人を殺す命令を出せるトップが君臨する組織なんて最悪だ。
レガロさんが手を切るのもわかる。
くっそ早く目覚めろ俺、早く。
脳内で叫んだ瞬間、ピクリと手が動いた気がした。
よし、もうすぐ起きそうだ!
「聖下、近衛騎士がこちらに向かって来ております。そこの小僧をどこぞに隠したほうがいいかと」
「隠せ。見つからない場所に」
「は」
近衛騎士が向かっているって、まさかヴィデロさん単独じゃないよな。
来ちゃダメだ! 人を人とも思っていない奴らなんだから!
抱き上げられ、運ばれるのをただ感じながら、必死に心の中で叫ぶ。
すると、俺を運ぼうとした人が絨毯に躓いたのか、俺の身体は床に投げ出された。
その衝撃で。
よし、起きた!
ゴロゴロ転がりながらすぐさまインベントリから目潰しを取り出して部屋の真ん中に投げ込んだ。カバンがなくても物を取り出せる仕様にしてくれてありがとうヴィデロさんのお母さん!
そして強制ログアウトの後は意識だけはある状態にしてくれてありがとう! おかげで冷静に対処できそうだよ!
誰一人俺の動きを意識していなかったのか、部屋の奴らはしっかりと目潰しを受けてくれた。部屋の中が一瞬にして阿鼻叫喚の地獄絵図と化した。
叫び声や悲鳴や呻きが聞こえる中、俺はさっさと手を動かして、魔法陣を描いた。場所はすぐ横の廊下。王宮の中はわからないから、とりあえず部屋から出れば逃げられると踏んだんだ。
魔法陣が発動して黒い煙に満ちた部屋から脱出した俺は、部屋の中の様子に慌てている廊下のローブの奴にも目潰しを投げつけて、全速力でそこを離れた。
部屋も廊下も大変なことになっていたから逃げるのは楽だったけれど、今いるところがマッピングが一切されていない場所だった俺は、早々に迷子になった。
とりあえず近くの部屋のドアをガンと開けて、そっと中を見て誰もいないのを確認し、中に潜り込む。
メッセージ欄を開くと、この状態に関わっているユキヒラにだけメッセージが送れるようになっていた。今来た道と今いる所しか映っていないマップを見ながら、ユキヒラ宛にメッセージを送る。
『教皇っていう偉そうな人の所からは逃げた。でも、迷子になった』
『わかった』
即レスだった。
ほんとに一瞬しか間が開かなかった。ユキヒラすげえ。
マップには、部屋の外にうろうろしているNPCの表記が表されている。
人が集まってきたみたいだ。これは、俺を探してるってことかな。ここもすぐに見つかりそうだ。
インベントリからキュアポーションを出して飲み干し、とりあえず沈黙を消す。
さっき乱暴にまさぐられた服もしっかりと着直し、ふと気付く。ローブ、あの部屋に置いてきた。ブルーテイルの羽根が付いたまま。
ダメだ逃げれない。
どうやって部屋に戻ろう。
そろそろ部屋の混乱も収まっているだろうから、転移で跳んだらすぐまた掴まるし、何よりここの外にまで人が集まってきている。
信者が思ったより多いのが難しい。
一応部屋の鍵は掛けてきたけど、いつここにいるのがバレるかわかったもんじゃない。
かといってここから離れたら二度とここに来れなそうだから、今ここから離れるのは問題外だ。
『マック、今そっちに向かう。そこは王宮の横に立つ塔なんだ。教皇が陣取ってる場所だ。敵の本拠地って感じだ』
『それよりも、ヴィデロさんが狙われてるからそっちを注意してくれよ。こっちはここを離れられないから』
『また捕まったのか?!』
『違う、ローブを置いてきちゃって』
『放っておけ!』
ダメなんだよ、ローブ自体は置いてってもいいんだけど、ブルーテイルの羽根は、置いてけない。
『無理』
一言返した瞬間、ドアノブがガチャガチャと回される音がした。そして廊下から「ここに鍵がかかっている! 鍵を持ってこい!」とか聞こえてくる。鍵が開く前に移動しないと。
一応声が戻ってから『隠密ステルス』は使ったけれど、俺よりレベル高い索敵持ってる人がいたら一発でバレるからあんまり意味ないんだよな。隠密自体レベルそれほど上げてないのが悔やまれる。
『幸運がまた新しいのをプレゼントするから羽根は諦めろって喚いてる』
メッセージが届く。ヴィデロさん、俺が何で戻ろうとしてるのか気付いたんだ。でも諦めるなんて無理。だってあれは、ずっと愛情を貯めていた羽根だから。たとえまた同じものをプレゼントされたとしてもあの羽根の代わりになんてならないんだ。
返事がないことに焦れたらしいユキヒラからメッセージが矢継ぎ早に届く。『待ってろ』『合流する』『そこを動くな』そんな感じで。
それを横目で見ながら、廊下にいる人の人数をマップから確認する。
数人がドアの前に集まっている。鍵待ちだろうな。
俺は物影から出て、ドアの前に陣取った。
手には目潰し。今日も絶好調で目潰し大活躍。
部屋の前に人が集まってきていることにほくそ笑みながら、ドアが開くのを待った。
ガチャッと鍵が開けられ、人がなだれ込んで来た瞬間、俺はその集団に目潰しを躊躇うことなく投げつけていた。
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