これは報われない恋だ。

朝陽天満

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392、聖剣の秘密

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 持ってみると、想像してたよりもずっと軽かった。

 あれ、日本刀って見た目の割には結構重いって前に何かで読んだことがあるんだけど。



「驚いたか? 驚いたよな。それな、こっちの鉱物で作るとそこまで重量を抑えられるんだよ! 調子に乗りすぎて軽くしすぎちまったんだけどな。軽すぎて使いにくいとまで言われちまった俺の自信作なんだけど、まだ柄巻の色柄とか頭かしらの装飾とか全く決めてないから商品にならねえんだ。でもしなやかで強靭、細身で切れ味抜群、耐久力は他の大剣にも負けねえよ。脇差しの長さのもあるんだが、どっちがいい?」

「ええと、長さは……ティソナドスカラスと同じくらいだから、これで大丈夫です。でも商品にしてない物なんですよね。俺、売ってもらっていいんですか?」

「ああ。誰も使いたがらねえんだよ。西洋鎧に日本刀持ったらかっこ悪いとか言ってて。皆こだわり過ぎだっての。な!」



 一番こだわりすぎてる人が朗らかにそんなことを言う。

 でも手に持った刀は本当に軽くて、耐久値が高いと言われてもピンとこなかった。すぐにパキっといったりしないかな。

 むき出しの柄部分を持って、マジマジと刀を見ると、刀身は何がなくても光を発しそうなほどに磨き込まれて、波打ってる模様? こういうのなんていうんだろう、刃の所はとても均等で、美しかった。



「この刃文はもんもな、均等で綺麗だろ。最高だよな。今まで打った中で一番の出来だ」



 刃文っていうのか。本当に綺麗。日本刀は芸術品に分類されてるけど、こうしてみると、確かに芸術としか言いようがなかった。



「気に入ったんならすぐに仕上げるぜ。その代わり」



 ハイパーポーションをくれ、でしょ。

 ニヤリと笑った長光さんに、俺は「買いましょう」とハイパーポーションをお披露目した。



「安心しな。周りにゃ言いふらさねえから。ってこれかあ、噂のハイポーションを超えるハイポーション。金はいい。これを何個出せる? 俺の刀の価値をマック君が決めてくれ」

「え、そういうのどうしよう……鑑定してもいいですか?」

「もちろん。気のすむまで鑑定してくれ」

「ありがとうございます。『鑑定眼』」



 鑑定眼を発動すると、驚いたことに、ティソナドスカラスの攻撃力より三倍近い攻撃力だった。そして耐久、軽量、スタミナ消費減少効果までついてた。すごすぎる。これ、値段的にそれこそ雄太の鎧くらいするんじゃなかろうか。

 それを俺の価値で決めるとか、どうしよう。



 必死で考える俺を、長光さんがじっと無言で見ていた。

 値段的には何百万ガルの世界の刀の価値。俺の薬の価値。これ、釣り合わなかったら売ってもらえなかったりするのかな。バーンと値段を出された方が簡単だった。

 俺はハイパーポーションを10、マジックハイパーポーションを10、ディスペルハイポーションランクSを10、そして耐久値上昇薬ディフェンサーポーションを10、ホーリーハイポーションを10、リペアハイポーションランクSを10、ガランとした台の上に並べた。ちなみにユイにバシバシ渡していた例のブツは、超レア素材的アレが残り数個となったので作ってない。

 今取り出した物はほぼすべて世に出回ってない物だし、全部調薬で出来たものだから、とりあえず刀くらいの価値はあるしここに出すくらいなら大丈夫なはず。

 後ろではクラッシュが呆れたような顔をして「こんなに隠し玉を持ってたのか……」なんて呟いていた。



 長光さんは一つ一つ手に取って、鑑定をしているようだった。いちいち眉を顰めたり目を見開いたりしている。



「……どれもこれも虎の子じゃねえか……やべえ、俺の方が対価出さねえと釣り合わねえよ……」

「素材と作り方自体はそこまで難しい物でもないんですけど」

「作り方とか素材じゃねえんだよ。それを言うなら俺だってその刀、中央の山裾で採れるようなどこにでもある鉱石使ってるんだからよ。こういうのは技術料及び情報料の問題なんだよ。俺だって独自の作り方がある。そしてここに並んでる奴もそうだろ。それだよ。それが一番値段が付けられねえ難物だ。何せ上限がねえからな。やべえな。想像以上にやべえ。おもしれえ。改めてフレになってくれてサンキュ、マック君! これだよ! 想像を掻き立てられるような生産フレが欲しかったんだよ俺は!」



 うはは! なんて笑い出した長光さんは、瓶を丁寧に台の上に置くと、俺の両手を取ってぶんぶん振った。

 生産とひとくくりにしても薬師と鍛冶師はちょっと畑が違う気がしないでもないけど、でも確かに生産仲間が出来るのは嬉しい。

 長光さんは、早速奥から何やらひとセットの工具と材料を持ってきた。数種類の色、模様の柄巻を見せてもらって、俺は躊躇いなく深い緑に薄っすらゴールドの縁取りがされている物を選んだ。



「これは門番色だな。さっすが幸運を呼ぶカップル。ちょっと待ってな、すぐに仕上げるからよ。特別に目の前で披露してやるよ。ほとんどないんだぜ、俺が人前で作業するなんて。ユキヒラにも見せたことねえよ。ってか、ユキヒラの聖剣、実はアレ打ったの俺なんだ。黙ってろとは言われなかったんだけどよ、あいつがすっげえありがたがってる風だからなかなか言えなくてニヤニヤ見てたんだよ」

「作業見たいです。ってかあの聖剣、そっか、長光さんが作ったんですね。実は俺も言えなかったんだけど、聖剣の真ん中に付いてた宝石作ったのは俺なんです。ありがたみが薄れそうで言えなかったんですけど」

「ぶは、俺たちの共同作業をユキヒラはあんなにありがたがってたのかよ。やべえ、次顔見たらまともに対峙できそうもねえ……」



 楽しそうに声を出して笑った長光さんは、ふう、と深呼吸すると、「さ、やるか」と腕を捲る動作をした。





 そこから先の作業は、神業というほかなかった。

 長光さんの腕がグルグルとすごいスピードで動いたと思ったら、一瞬後には柄にさっきの柄巻が綺麗に巻かれていた。

 最後にスッと端っこに頭と呼ばれる飾りをつけて、満足そうに頷いた長光さんは、ゴソゴソしたと思ったら、その刀の鞘を懐から出した。おかしい。長さ的におかしいから。何でそんなところから出てくるんだよ! という俺の突っ込みは、インベントリから取り出すときにそうやって遊んでるんだという長光さんの答えで解決した。



「鞘はいたってシンプルに。マック君に似合うのは白か……そのローブに合わせるか。クリーム系だな」



 ぶつぶつ言いながらまた懐からお椀のような物を取り出して、色を塗り始める。

 鞘はすぐに俺のローブとおそろいの色の物に仕上がった。速乾性かぁ。あの塗料も自分で作ったんだろうな。

 その手際の良さに感心していると、クラッシュがひょいと長光さんの手を覗き込んで「これに」と鞘を指さした。



「こういう感じのやつ入れれる?」



 指で台をなぞりながら、クラッシュが魔法陣を描く。

 多分刀の耐久値を回復させるみたいなちょっと複雑な魔法陣だった。



「待て待て、そこに書かれてもわからねえ。これに書いてくれ」



 そう言って懐から紙と筆を取り出した長光さんがクラッシュに渡すと、クラッシュはさっきと同じような魔法陣をさらさらと描いた。



「なんだこれ。紋様?」

「魔法陣。これに剣を刺しておくと耐久値が戻るっていう効果のやつ」

「鞘に彫り入れることは出来るが……彫っただけで効果は表れるのか? 今紙に描いた奴は効果なさそうだろ」

「どうかな。でもヴィデロの剣にはちょっと違うけど魔法陣が入ってたから、大丈夫じゃないかな」



 え、ちょっと待って。クラッシュが提案したのって、ヴィデロさんの剣を見たから?



「クラッシュ、それは彫ったんじゃなくて、魔法陣を飛ばしたらあんな風になっちゃったんだよ」

「そうなの? 俺はてっきりマックが彫らせたのかと思ってた」

「違うよ。こんな風に」



 長光さんが興味津々な顔で俺たちのやり取りを聞いてるのを忘れて、俺は前にヴィデロさんの剣に飛ばしたように、クラッシュが今目の前で描いた魔法陣を宙に描いて鞘に弾いた。

 すると、綺麗な塗りの上に、シュン、と魔法陣が焼き付いたように現れた。



「やったらああなったんだよ」

「すっげえ! なあマック君、もっとやって見せてくれねえ?! ってか魔法陣、2人とも使えるってことか! 思わぬレアスキルの存在を知ってしまった!」



 あ、ワクワクキラキラした目の長光さんが興奮した声を上げたことで我に返った俺は、慌てて鞘を覗き込んだ。



「わああ、ごめんなさい! せっかく綺麗に塗れてたのに魔法陣焼き付いちゃった……!」

「いや、さらに御家紋みたいでいい味出たよ。はは、気にするのそこなのか。魔法陣のことは気にしないのか?」

「そっちもですけど、でもせっかくすっごく綺麗に出来上がってるのに」

「ちなみにマックに魔法陣を教えたのは俺。無理やり教えたんだ」



 クラッシュがニッと笑って自分を指さした。



「それは俺も教えて欲しいな。講義チケットはまだ使ってないんだが、個人でそのチケットは使えるか? それとも現金、素材」

「チケットか……あれ、持って行くとギルドで換金してもらえるシステムになってるんだよね。だから特別使っても教えてあげるよ。売れっ子鍛冶師さんに時間があるならね」

「やった! これでまたワンランク上の装備品を作れる。ありがたい」



 長光さんはしっかりと手を動かしつつクラッシュと商談を成立させていた。

 魔法陣魔法、習う気満々なんだ。便利だもんね。



 最後、鞘の端にもグルグルと紐を巻き、長光さんは満足したように頷いた。

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