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連載
471、聖短剣スキル
しおりを挟むペラペラとページをめくって中を確認しても、ほとんどが白紙で、もしかしたらこれの素材は大陸でしか手に入らないのかな、なんて思ったりした。誰の魔力で作られた本なのかは滅茶苦茶気になるけど、でも凄い物が手に入ったなあ。
「それにしても、クリア報酬の『聖短剣スキル』ってなんだろ」
ポツリと呟くと、経典を開いていたニコロさんが顔を上げた。
「そういえばマックさんも聖剣を持っていたんでしたね。後ほど教会の方に顔を出していただいてもよろしいですか? 最近ようやく建物の中を片付けることが出来まして。地下にあった隠し部屋から色々な物が出てきたのですよ。もしかしたら前の方は処分しようとして地下にまとめていたのかもしれないですが、捨てていい様な内容の物ではなくて」
「はい。ぜひうかがわせてください」
ニコロさんの言葉を聞いて、俺はすぐさま返事をした。
なんかすっごいお宝とかありそうでわくわくする。
でも、と一瞬で思い直す。あいつは金の亡者っぽかったから、きっと金目の物じゃなくて、古書とか古びた何とかとかそんなのが出てくるのかも。あ、やっぱりワクワクする。
「高橋たちはこれからどうする。俺たちはまだ騎士団の方の用事があるから残るが。クラッシュが先見の魔導士に連れていかれてしまったので、帰るとしたらギルドの転移魔法陣か?」
「ついでだからここら辺歩いてみるっていうのもいいかもな。たまにはゆるーい戦闘もありだろ」
雄太が鼻歌を歌いだしそうな勢いで言うと、勇者がニヤリと笑った。
「そのゆるーい戦闘で腕が鈍ったら、どうなるかわかってるだろうな?」
「勇者無双の始まりだろ。それはそれでおもしれえよな。でも古い鎧の時に頼むな。さすがにさっき貰った鎧がボロボロになったら俺泣くわ」
勇者の脅しにも全くビビらずににこやかに言い返す雄太に、勇者はニヤリ笑いを苦笑に変えて、雄太の頭をガシガシと手で搔き回した。
「ほんっとお前は可愛くねえ弟子だよ」
うわあ、勇者って本当に雄太たちを可愛がってるんだなあ、と俺は勇者の苦笑を凝視した。なんていうか、歳の離れたお兄さんって感じがして。
すっごくいい師弟関係が築けているんだろうなっていうのが、こういうところで見て取れるのがなんか微笑ましいというか。
「ニコロ導師、宰相のおっさんに返事を催促してくれって頼まれてたんですけど」
「こらこらユキヒラさん、おっさんじゃないでしょう。わかりましたと伝えてください。手が空き次第かかりますから」
「了解です。助かります」
「私も、ユキヒラさんに色々してもらえて、とても助かります」
うん。こっちも師弟関係がっつり築いてる。
なんか俺もヒイロさんの顔見たくなっちゃったな。ってかヨシュー師匠は元気なのかな。村が違うと全然顔を見れないよなあ。
ちょっと羨ましいなんて思いながら本をインベントリにしまっていると、ニコロさんに「行きましょうか」と促された。
「最近では私も美味しい聖水茶を淹れられるようになったのですよ。ごちそうさせてくれませんか。茶葉はモントさんが特別に栽培したものだそうです」
「師匠ありがとうございます!」
「ふふ、師匠ってマックさん、すごく懐かしい気がしますね。最近時間が経つのがとても早くて」
ニコロさんは俺にとっても師匠だった。立場が上になっても変わらず俺に優しくしてくれるニコロ師匠最高です。
「じゃあ俺は教会に行くから」
雄太たちに声を掛けると、勇者が返事をくれた。雄太たちは「またねー」と気軽に手を振っている。
「これからは支払いはエミリを通して行うことで話はまとまったぞ。あと、ギルドに品物を持って行けばギルドの方でこっちに届けてくれるそうだ」
「そうなんですか。エミリさん、ありがとうございます」
「いいのよこれくらい。感謝はケインにね。こんな風に簡単に約束できるようになったのも、ケインのおかげだから」
「はい」
皆に手を振って、騎士団の人たちに頭を下げてニコロさんの後ろについていこうとすると、後ろの方に立っていたソルブさんが「マック殿」と声を掛けて来た。
「恩に着る」
いきなりそんなことを言われて、俺は「へ?」と変な声を出してしまった。
「ソルブさん?」
「マック殿が先見の魔術師を連れてきてくれなかったら、何も変わらなかった。勇者の言葉にすら王は渋い顔をしていたからな。ここに立っている騎士団は皆、マック殿に感謝している」
「でも、たまたまあの人を知っていただけで、もとはと言えばあの人を紹介してくれたのはヴィデロさんですよ。ヴィデロさんも、トレの門番になったばっかりの時に誰かに気晴らしにって連れて行ってもらって知り合ったって言ってたし。なので、特別感謝されるようなことって俺は何もしてないですよ」
「……そうか。では、ヴィデロにも感謝するとしよう」
ソルブさんは少しだけ考えたあと、そんなことを言った。
その言葉に嬉しくなって「ぜひ!」と盛大に頷くと、ソルブさんが小さく笑いを零した。
鼻歌を歌いだしそうな軽い足取りで教会に向かう。
隣を歩いていたユキヒラが鬱陶しそうな顔でこっちを見ているけど、気にしない。
ヴィデロさんが認められるとほんとに嬉しいよね。顔も緩むよ。
「鬱陶しい」
「ありがとう」
とうとうユキヒラが口に出してたけど、それすら誉め言葉に感じるよね。
王様はアレだけレガロさんに言われて、どうなるのかな。夢ってほんとに見るのかな。どんな夢を見るんだろう。
それとも先見をしちゃったから夢は相殺されたのかな。肝心なところを何も説明しないでレガロさんは帰っちゃったな。あとどうしてクラッシュの手にクリアオーブみたいなものが握られてたのかとか。
わけわかんないから、あとで直接訊きに行ってみよう。
バラの迷宮を抜けて教会の建物に入る。
この道をユキヒラはひたすら往復したのか。結構謁見の間から距離があるよな。
内部を歩いている信者に頭を下げつつ伸びをしながら歩いているユキヒラをチラ見する。
そういえば最近ユキヒラの口からロミーナちゃんのこと全然聞かないけど、どうしたんだろう。諦めたのかな。
流石にこれは聞けないよな。
ニコロさんは教皇の間ではなく、隣の私室に俺たちを招いてくれた。
お茶も自ら淹れてくれて、自ら祈って。教皇の手ずからのお茶って実はすごい物なんじゃないかな、なんて祈るニコロさんを見ながらちょっと思ったりした。
「どうぞ、マックさんのお茶のおいしさには到底敵いませんが、悪くはないと思いますよ」
ニコロさんは俺たちにお茶を勧めると、自分は開きっぱなしの隠し扉の方へ歩いて行ってしまった。
まあ、何もなくてだだっ広い部屋だったから、自室と繋がりの部屋として使うなら使い勝手もいいのかもしれない。
茶器に口を付けながら隠れてない扉の方を見ていると、ニコロさんが数冊の古書を手に戻ってきた。
「あろうことか、聖典を捨てようとしていたようなのですよ。『廃棄』と書かれた一画に無造作に置かれていて、埃をかぶっていました。青くなって全てこの部屋に移したのですが、その中に聖剣にまつわる物が一冊ありまして。でも読んでみると、ユキヒラさんの剣ではありえないような表現をされていたりするんです」
ほら、と一冊を開いて見てみると、そこには刃の長さが20センチほどの短剣を構えた人の絵が描かれていた。
この大陸の文字で「刀身に魔力を集めて熱が発せられたら詠唱をする」と書かれている。
「これ、聖短剣スキルの本……?」
ちょっといいですか、と他のページを捲ると、同じように短剣を構えた人の絵が描かれていて、やっぱり横に説明が載っている。詠唱がすべて聖魔法の言葉っぽい。
これ、聖短剣用スキルの本だ。でもちゃんと戦闘できる聖短剣用だから、俺のルミエールダガーに使えるかはわからないけど。
「これを、マックさんに差し上げます。ぜひ活用してください」
「え、そんな、いいんですか? だって俺」
「何も返せていないのが、ずっと心苦しかったのです。またこういった物が出てきましたらお譲りしますので、たまにはここにも顔を出してくださいね」
ニコニコと、でもちょっとだけ強引に、ニコロさんが俺の手にその聖典を乗せた。
でもこれ、と口を開くと、ニコロさんは笑みを深くして、「役立ててもらえると、私が喜びます」と話を締めくくってしまった。
「ありがとうございます」
返品は受け付けてくれなそうだったので、俺はお礼を言ってその本をインベントリにしまった。あとでじっくり読んで使えるスキルがないか調べよう。
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