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連載
585、キング、発見
しおりを挟む日を跨いで皆で魔物を倒していき、とうとう93%になった。
今は山に沿った川沿い、前にブルーテイルが巣を作ったところよりももう少し奥の方に来ている俺たち。
もうめぼしい魔物は全て屠った状態で、走り回っても見つからないところまで来た。
ウノの方から殲滅していったプレイヤー、山裾をひたすら殲滅していたプレイヤー、俺たちみたいにトレからずっと殲滅してきたプレイヤーたちが、川沿いに集結する。
その中には、雄太たちもしっかりといて。
「もうこっちはいなかったぞ」
「俺の方も」
「でも残り7%どこなんだろうな」
「まだ見てないところがある、とか……?」
情報交換をしつつ、マップを拡大する。感知もフルで使っても、残り7%が見つからない。
ユーリナさんも乙さんも海里たちも自分が持ってる索敵系のスキルをフル活用するんだけど、この7%が埋まらなかった。
「まだどっかになんかあるんだろうけど……」
「これ、7%残ってたらどうなるの?」
「7%くらいなら大丈夫なんじゃねえの?」
「でもこれ、100%にならないとクリアにならねえだろ」
プレイヤーたちもざわざわと話し始める。
皆最後の少しが見つからなくて少しイライラしてるみたいだった。
「まだ匂いは残ってる気がするんだけどよ……川の匂いが強すぎていまいちわからねえ」
ガレンさんも鼻をヒクヒクさせながらなんとか根源を探し続ける。
ふと、獣人アバターのプレイヤーがその言葉を聞いて声を上げた。
「川の中ってことは、ねえよな……」
「さっきのやつ、川の中でも生息できるのかよ」
「っつうか前に、この川のどっかに横穴なかったっけ。何もねえ横穴」
「川が干上がった時か? あったな。俺、入ってみた」
「そことかだったりして」
「まさか。今は川の底に沈んでるだろ。ってことは穴の中も当然水じゃねえ?」
「ってことは、土の中に枝が残ってるとか」
「身体切ったら枝も消えてっただろ。それはねえんじゃねえ?」
皆の憶測が飛ぶ中、もしかして、と俺は顔を顰めた。
ヴィデロさんが俺の顔を覗き込んで「何か心当たりでもあるか?」と訊いて来たので、それに、曖昧に頷く。
あの部屋は、転移の魔法陣で移動するから、水からは隔離されてるはず。
距離的にはここから近いし、もしかしてあの部屋の中に魔物が現れてるのかもしれない。それだったらいくら地上を探したって見つかるはずない。しかも帰りも転移魔法陣だから、このままだと中に入れない。
ユイたちは違うほうの研究所にしか入ったことなかったはずだから。
「心当たり、あるかもしれない」
「じゃあ行くか」
そっと俺の手を取ったヴィデロさんの手を、そっと外す。
あそこは密閉空間だから、もしかしたら漏れ出る病の元が濃いかもしれない。あそこにはプレイヤーだけで行くべき。
「師匠たちとヴィデロさんは、ここで待ってて。あそこはダメ。空気が閉じ込められてるから、ダメ。高橋たちに頼むから、待ってて」
「マック」
「多分、そこに行ったことあるの、俺だけだから。転移でしか行けないんだよ。ちょっと殲滅してくるから、待っててくれない?」
「ヒイロのシックポーションを貰うから」
「ヴィデロさん、俺は、ヴィデロさんに一時期でも病気になって欲しくない。だから、ここは異邦人たちに任せて、待ってて」
じっと見つめられて、俺もお返しとばかりに見上げる。
澄んだ深緑色の瞳が、怒ったような俺の顔を映していて、俺はハッと眉間を指で擦った。
表情を改めて、口角を上げた。
「大丈夫。魔物、そんなに強くないでしょ。俺一人だったらダメだけど、周りにはこんなに強い人が沢山いるんだよ。だから誰を連れてっても大丈夫。それに、もしかしたらそこにはいないかもしれないでしょ。そしたらまた探さないといけないし。今は体力温存。適材適所、だよ」
「マック……わかった。無理はするな」
「もちろん。ヤバそうなら一回逃げてきて、更に大人数で挑めばいいしね!」
本当はあの研究所はそこまで広くなかったから、10人も入ると大分狭いんだけど、そんなことは知らなくてもいいことだよね。
そんなタイミングで、雄太が近付いてきた。
「どうするマック。山を登ってみるか?」
「でもあの山は魔物が住めないらしいよ。それよりも一つ気になる場所があってさ。一緒についてきてくれないかな」
雄太にそう言った瞬間、周りにいたプレイヤーが一斉に「俺行く!」「俺も!」「何、戦力が必要か!?」と名乗りを上げてくれた。
「残念だったな、マックご指名は俺だ!」
周りのプレイヤーに雄太が高らかに宣言すると、スッとユイとブレイブと海里が雄太に寄り添った。
「じゃあ、薬師マックしか行ったことのない特別な場所に行ってくる!」
すぐに皆が俺に掴まり、雄太が周りに手を振る。
そんなに挑発してどうするんだよ、と思いながら、魔法陣を描いていく。
視界が変わる瞬間、ヴィデロさんが小さく手を振ってるのが目に入って、心の中であああああと声を上げた。
着いた先は、単なる岩の広間だった。
そういえば前に来た時、ここにあった研究物はセイジさんが燃やしたんだった。広々とした空間には……。
「うわ、ほんとにいたよ」
「でもこれ、上にいた魔物より見た目が酷くない?」
「なんか怖いね」
「……なんかを抱えてるみたいに見えるな……」
広い空間の中、床から天井までまるで柱の様に立っていた樹の魔物は、地上で次々倒してきた魔物よりも、二回りも三回りも太かった。
そして、ブレイブが呟いたように、幹の中心部分は、まるで何かが入っているかのように膨らんでいた。
「なんか、やべえ匂いでゾクゾクする」
雄太がポツリと呟く。
もしかして、病の根源って……ここに集約されてたのかも。
海里も腕をさすっている。
雄太は大剣を構えながら、「おいマック」と声を出した。
「あと二、三パーティーひっ連れて来いよ。これ、なんかヤバそうな匂いがプンプンしやがる」
「そうね。ちょっと私達だけでは削り切るのに時間がかかりそうね」
勇者の弟子たちにここまで言わせる魔物に顔を顰めて、俺は目の前のモノに鑑定眼を使った。
『134887/4495 グリムリーパーキングツリー 幹の中に澱を溜めて放出の時を待っている 43% 溜まった澱を攻撃すると状態異常のガスを噴出する 状態:怒り』
「うわ、この魔物怒ってる。死神の樹って名前だって。っていうかHP高! あの幹のなんか入ってる部分を攻撃すると状態異常のガスが出て来るって!」
「なんだよそのえげつねえの。なんか入ってる部分って、ほぼ幹の全体じゃねえか! どこ攻撃するってんだよ」
雄太の言う通り、俺たちの目に見えている幹部分は、ほぼ全体が丸みを帯びていた。あれに傷をつけるとヤバいってことか。ちょっと怖い。攻撃する場所ないじゃん。
と思っていたら、「うわ」というブレイブの声と共に、横壁から枝が突き出して来た。ブレイブが間一髪躱すと、その枝はすぐに引っ込んでいく。
どこから攻撃が来るかわからないってやつか。
「マック! 早く助っ人連れて来い! モグラたたきが上手いやつ!」
「ちまちま枝を攻撃するしかないってことね……厄介ね」
第一撃を機に次々攻撃を開始した枝を避けつつ斬りつけると、魔物の頭上、というか幹の途中に現れたHPの青い色がちょっとだけ減った。
確かにこれは、4人だけだと時間がかかるかも。
俺はすぐさま地上に行く魔法陣を描いた。
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