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750、俺は最低な男だ
しおりを挟む倉庫のインベントリを開いて、前にエルフのクエストで作ったアイテムを取り出す。
「あったあった。『闇月の雫』。残り4本かあ。全然使う場所がなくてインベントリに入れっぱなしだったんだよね」
「マック君、それ何?」
ユイに聞かれて、『闇月の雫』の効能を説明すると、ユイは目を輝かせて「すごい」とアイテムを覗き込んだ。
あ、ここまで連れて来てくれたお礼、錬金アイテムでいいかな。
ユイによさそうなのは、と大量にあった錬金アイテムから作った物を漁って、1時間だけ魔法貫通力が上がる『魔貫通薬マジックペネトレイトドラッグ』を取り出した。辺境の壁向こうに出る『弾け熊ポップベア』が極稀に落とす錬金素材から作れるアイテムなんだけど、俺には全く必要ない物なんだよね。聖魔法で貫通するような魔法はほぼないし。
「ユイ、ここまで連れて来てくれたお礼に、これあげるよ」
「何、これ?」
「一定時間魔法の貫通力が上がるアイテム。ユイ貫通系の魔法覚えてるよね」
「うん。10種類くらいは覚えてるよ。え、いいの? すごくレアアイテムでしょ」
「いいよ。俺使わないし、いつも助かってるもん。ここまでくるのも結構魔力使うでしょ」
「そんなの、回復すればいいだけだけど……マック君のアイテムって凄いの多いから、遠慮なく貰っちゃっていいの?」
頷くと、ユイはありがとう、と可愛く笑った。
じゃあ戻ろうか、とユイの手を取ったところで、玄関が開く音がした。
ヴィデロさんが帰ってきたのかな?
そう思って錬金工房のドアを開けて顔を出すと、ヴィデロさんがテーブルにカバンをどさっと置くところが目に入った。
ふと見ると、腕とお腹辺りに傷がある。
「ヴィデロさん!」
慌てて部屋から出て、ヴィデロさんに駈け寄ると、ヴィデロさんはフッと顔をほころばせた。
「マック、工房にいたのか。クラッシュには会えたのか?」
「うん。まだ魔大陸に用事があるんだけど」
俺は急いでハイパーポーションを取り出して、ヴィデロさんに掛けた。
傷は瞬く間に消えてなくなり、切れ目の入った服だけが残った。よかった。
「どれだけ強い魔物と戦ってきたの」
ヴィデロさんが傷を負うなんて、と見上げると、ヴィデロさんはひょいと俺の身体を抱き上げた。
そして、ちらりと錬金工房の方に目を向け、少しだけ目を細めた。
「ユイもいたのか」
「あ、ごめんなさい。お邪魔してました」
丁度ドアの所から顔を出していたユイに気付いたらしいヴィデロさんは、ユイと俺を交互に見て、少しだけ溜息を吐いた。
「二人が何もないっていうのはわかってるんだけどな……俺は狭量だな」
ちゅ、とユイの前なのも気にせず、ヴィデロさんが俺の唇をかすめ取るようにキスをする。
その言葉を訊いて、俺は、今の状況を把握した。
女の子と二人っきりで家の中。
「違うんだよ! 浮気とかそういうのしてたわけじゃないからね!」
これは嫉妬されて当たり前だし、俺なに最低なことしてるんだ、という焦りによって口を開くと、ヴィデロさんが苦笑した。
「そんなこと疑ってるわけじゃないから」
「マック君、そこで焦って叫んじゃうと、逆に疑ってくれって言ってるようなものだよ」
ユイにまで突っ込まれて、俺は「違う、違うんだよ」とヴィデロさんにくっついた。
抱き上げられたままギュッとヴィデロさんにくっついて、首もとに顔を埋める。
浮気を疑われるような状況を作っちゃう俺が不甲斐ないんだよ。ごめんなさい。
「ヴィデロさん、ごめんなさい。そうだよね。私も高橋が女の子と二人っきりで家にいたら、いい気分しないもん。軽率でした」
「いや、大丈夫。いつでも来てくれていいんだ。ただ俺がマックを独占したいだけなんだ。マックを助けてくれてありがとう」
ヴィデロさんの大人な対応に、俺は一層項垂れた。
今度は雄太もちゃんと連れて来よう。
「ヴィデロさん。俺、ヴィデロさんが好き」
「ああ。知ってる」
「誤解されるようなことしてごめん。でも焼きもち妬いてくれて嬉しいって思う自分の感情が憎い」
「マックのことは信じてるから気にするなよ。俺もマックを愛してる」
「ヴィデロさん」
ユイが横にいるのも忘れてキスを交わしていると、ピロン、とチャットの通知音が響いた。
「マック君。高橋が、まだかかるのかって」
「あ、もういける。ごめん」
ユイにもチャットが届いていたらしく、雄太が痺れを切らしたらしい。そうだよね。彼女を連れ去っちゃったんだもんね。
雄太にも謝ろう。そして今度からは絶対こんな軽率なことはしないことを心に誓う。ヴィデロさんを不安にさせるなんて、俺ほんとダメ人間じゃん。
溜め息を呑み込んで、落ち込んでいると、ヴィデロさんは「ユイ」と口を開いた。
「三人で魔大陸まで跳ぶことは出来るか?」
「うん。ギリギリ大丈夫」
ヴィデロさんの質問に、ユイはにっこり笑って頷いた。
「俺も連れて行ってくれないか? 丁度時間が空いたから、マックと魔大陸デートがしたいんだ」
「もちろん。ヴィデロさんがいてくれたら100人力ですね」
ユイが手を差し出すと、俺を抱っこしたまま下ろそうとしないヴィデロさんが、その手を握った。片手で簡単に俺を抱っこできるヴィデロさん最高に素敵なんだけど。好き。
ヴィデロさんも伴って魔大陸に戻ると、雄太は気楽に「おかえりー」と手を上げた。
「待ってる間暇だから魔物素材売り上げ競争再開してたよ」
「高橋一人で大変そうだったわよ」
そんなことを言ってるけど、向こうに行ってたのほんの10分くらいだよね。
ああでも、パッと消えて、物を持って、またパッと現れるのを想像してたなら、10分は長いのか。
雄太も焼きもち妬いてたのかな。ほんと俺、考えなしにもほどがある。
「どうしたんだマックは。なんか落ち込んでないか?」
雄太の声に、俺はヴィデロさんにギュッと抱き着く。
「雄太ごめん……俺、ユイと二人っきりで家の中で」
雄太もやきもきしてたなら謝らないと、と口を開くと、海里がブフッと吹き出した。そこ吹き出すところ!?
「おいおい、本名呼びになってるってば。っていうかユイと二人っきりで何だよ。どんだけ落ち込んでるんだよ。もしかしてあれか、ユイに手を出そうとして出来なくて落ち込んでる……なんてことはマックに限ってありえねえしなあ。でもユイの可愛さは天元突破してるから、その気になるのはよくわかるしなあ」
真顔で腕を組んでうーんと唸る雄太に、俺はちょっと毒気を抜かれた。
ユイの可愛さ天元突破とか。どれだけユイにベタぼれなんだ雄太。
「あ、もしかして二人でいるところをヴィデロさんに見られて、こんな状況を作る俺最低! って落ち込んでるのかよマック」
「なんでわかるんだよ」
「だってマックだし。変なところで妙に男らしいし。お前の行動パターンなぞ、手に取るようにわかるわ!」
わはは、と高笑いした雄太に、落ち込んだ気分が浮上する。
ホッと息を吐くと、ヴィデロさんはさっきよりもさらに複雑な顔をしていた。
「正直ユイと二人きりでいるより、高橋がマックのすべてをわかってるような絆の方が嫉妬するな」
「それは重ねた年月の長さですから。でも大丈夫。俺がマックに恋することは未来永劫ありえないっす」
「それもよくわかるんだけどな」
複雑だ、と本当に困ったような顔をするヴィデロさんが愛しくて、俺はもう一度ギュッと抱き着いた。
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⭐︎⭐︎⭐︎
ご拝読頂きありがとうございます!
コメント、エール、いいねお待ちしております♡
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