これは報われない恋だ。

朝陽天満

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番外編3

最強パーティー肉を食む 6

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 ヴィデロさんが空へ舞い上がり、雄太が『飛翔』で空に飛び立つと、高い木の向こう側から特大の咆哮が聞こえて来た。

 さすがのたいやきくんも空を飛ぶ手段は持っていなかったらしく地に足をつけていたけれど、その咆哮を聞いて目を輝かせていた。でもその感覚おかしいから。

 肌にビリビリ来る咆哮の威圧が、かなりの大物であることをうかがわせる。きっと空に上がった人たちには姿が見えているはず。でも、俺には見えていない。



「うっわ、ドラゴン系来たああああ!」



 口笛でも吹きそうなハイテンションで、たいやきくんが叫ぶ。たいやきくんはどんな魔物か把握していたらしい。

 ドラゴンか。魔大陸のドラゴンってどれだけ強いんだろう。きっと俺が剣で攻撃してもHP1も減らないような耐久性を誇る鱗とか持ってるんだろうなあ。

 そこでハッとする。

 ドラゴンの鱗。なんか錬金に使えそうだ。欲しい。

 キッと顔を上げると、木々の間から黒い翼が目に入った。



「黒、ってことは、闇属性かも!」



 だったら聖魔法効くんじゃないかな、と素早く『起爆剤』の数を数え、短剣を構える。短剣を構える度に大喜びするティーロイは、今もまた、俺の頭の上で『マック! セイマホウマック! オイシイマック!』と大興奮している。小さな聖獣は食欲旺盛だよね。可愛いけど。

ゴォォォォォォという何かを焼き払う音と、剣が硬い物に当たるような重い金属音が開戦の合図となり、俺とたいやきくんも走って大物の元に急いだ。

 バッサバッサと翼が羽ばたく音が聞こえる。今日は空中戦だ。

 俺は空を見上げて、木々の間からまるで空を覆うように飛んでいる黒いドラゴンに狙いを定めた。『起爆剤』を使えば、上下に長く柱になるから、たとえ空中でも魔法は当たる。上手くピンポイントでドラゴンの場所に投げられれば。

 よし、と剣を構えて詠唱に入る。



「『聖火炎獄セイントフレイムプリズン』!」



 魔法を飛ばすとともに『起爆剤』が空に向かって聖魔法の柱を作る。それはドラゴンの羽からほんの数十センチ横に立ち上がり、見事に攻撃は外れた。



「ま、いいや。沢山柱立てればいいだけだよね」

『タクサンマホウ! タクサンマホウ!』



 大興奮のティーロイに背中を押されて、俺はMP消費の少ない『聖球ホーリーボム』に切り替えつつ、空に聖魔法の柱を乱立させた。あの魔法がプレイヤーにはフレンドリーファイヤーをしないのは知ってるし、二人がそれにぶち当たるなんてないのも知ってるから、俺も遠慮はしない。

 たいやきくんは乱立する聖なる柱を見上げて、「ほぇー……」なんて間抜けな声を上げている。

 沢山出来た柱の数本がドラゴンを貫通し、ドラゴンの頭上に微かに見えるHPバーは少し俺の魔法で減った。よし、俺も貢献できそうだ。



「やべえ俺も負けてられねえ」



 今まで見ているだけだったたいやきくんは、カバンから何かを取り出した。

 どこからどう見ても魔道具だった。よくわからない黒くて四角っぽいその魔道具を構えて、たいやきくんが狙い定める。



「ふたりとも、巻き込まれるなよー」



 何をするんだろうと見守っていると、たいやきくんは魔道具にMPを込めて、横にあるボタンを押した。

 途端にズボーン! と音がして、空に網が広がった。よく見るとその網は実態がないっぽくて、ビリビリと電気のようなもので編まれている。



「流石に落ちて来ねえか残念。これな、俺が空飛ぶ鳥魔物をやる時用の秘蔵の魔道具だ。めっちゃ高かった」



 空で網に捕獲されたドラゴンは、少しの間網に巻かれてじたばたしていたけれど、そのすきに雄太とヴィデロさんが全力攻撃をしたために、かなり一気にHPが削られていた。俺も我に返ると、ドラゴンが悶えている場所目掛けて聖魔法を唱える。『起爆剤』でドラゴンを柱に閉じ込めると、ちらっと見えるHPはググっと減った。直撃すると結構削れるのがなんだか楽しい。直撃すればだけど。普通に空を飛んでる時は直撃なんて出来そうもないけど。



「その魔道具すごいね」

「おう。ただし、一撃打ったら次出せるMP貯まるのにタイムラグがあるし、かなりMP消費する。それが大変っちゃ大変。でも俺一人の時は一匹落ちてくればそれを倒してる間に溜まる時間は十分あるから問題ないんだけど」

「なるほど。全部自分のMPじゃないんだ」

「半分は自分で、残りは時間を置けば貯まる。耐久性の点で連発は出来ないからそういう作りにしているらしい。タイムラグはだいたい一分。ほんとはMP入れなくてもいい魔道具なんだけど、威力上げるために魔改造してもらったら自分のMPゴリゴリ削ってくるんだ」

「なるほど。でもすごい便利っぽい」

「もちろん。今まで指を咥えてた空の魔物がこれで倒せるようになったからな」



 って説明しているうちに規定魔力溜まったわ、とたいやきくんはにやりと笑いながら呟くと、ゴソゴソと瓶を取り出した。それは魔大陸で売られている俺作マジックハイパーポーションだった。一気にそれを煽る。



「うめえ!」



 飲み終わった直後そう叫ぶと、たいやきくんはもう一度空に声をかけた。



「もう一撃網いくぞ!」

「待ってた!」

「頼む!」



 上から声がしたのを合図に、たいやきくんがMPを注ぐ。

 俺も『起爆剤』を用意して、聖魔法の強い方の詠唱を始めた。







 何度かそれを繰り返し、一度雄太がドラゴンの爪で地面に叩き落されたけれど、そこまで危なげなく倒すことが出来た。経験値の量から、かなりの強さだったことがうかがえるけれど、俺はただ聖魔法を唱えていただけなので、そこまで実感できなかった。



「鎧が、鎧が傷ついた……」



 腕の金属が抉れたのを見て、雄太は半泣きになりながらそう愚痴った。高かったんだろうなと思わせる精巧な造りの鎧は、きっと最近出来上がった新しい物だろう。今日初めて見た鎧だから。



「鱗硬かったあ。大剣の耐久値だいぶ減った。ヴィデロさんは大丈夫でした?」

「俺も、剣を研ぎに出さないといけなそうだ」



 白い鎧も胸元に傷がついていたけれど、それもまた勲章のようでかっこよかった。

 ニコニコと戻って来た二人にお疲れ様の合図を送っていると、ヴィデロさんが大きな羽根を広げて俺の前に降り立ち「二人とも怪我がなくてよかった」と微笑んだ。好き。



「ティーロイ……マックの魔法沢山浴びたんだな」



 ヴィデロさんの視線が俺の頭の上に行き、頭の上が軽くなる。

 ティーロイはおとなしくヴィデロさんに抱えあげられて、ご満悦そうな顔をしていた。

 そして、その身体が一回り位大きくなっているのに俺は初めて気付いた。



『マックのまほうおいしかったの。たくさんまほうつかったから、ティーロイげんきになったのよ』

「そうなのか。成長出来てよかったな」

『うん!』



 にこやかに話す二人に、俺の視線は釘付け。あああ、とても眼福な光景を見せてもらいました。頑張った俺へのご褒美だね。可愛い。二人とも可愛い。



 
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