643 / 984
641 ※
しおりを挟む
「雪也さんッ! 無事ですか!?」
周を抱き呆然としていれば、庵の扉が乱雑に開かれた。その声は常からは考えられないほどに焦っていて、足早に近づくと僅かも動かない雪也の肩を揺さぶった。
「雪也さん! 何があったんですッ」
何が……。そんなこと、雪也が聞きたい。突然、本当に突然、弥生を敵視している者達が襲い掛かってきた。前々から過激な手段で未来を変えようとする者達はいたけれど、それでも雪也たちを害そうとする動きはわずかも無かったというのに。それとも、無かったと思うのは雪也の慢心だったのか。
「雪也さん! しっかり!」
あまりに必死な声がボンヤリと聞こえて、ようやく雪也がゆっくりと視線を上げる。その先の存在を見て、小さく息をつくと瞼を閉じた。
「由弦……」
そう、庵を訪ねてきた兵衛の腕の中には、煤と赤黒いものに汚れた由弦の姿があった。どうやら今日は兵衛だけではなく、店の若衆も連れて来たのだろう、そちらの腕には同じように煤と赤黒いものに汚れた蒼の姿がある。やはり、由弦は蒼と一緒にいたのか。
「雪也さん、ここは危険なようですから、うちの店に行きましょう。由弦さんたちのことも、ちゃんと……我々が」
弔います、と言葉にすることはできなかった。だが兵衛が吞み込んだ言葉を、この状態で雪也が理解できないはずもない。
周を抱き呆然としていれば、庵の扉が乱雑に開かれた。その声は常からは考えられないほどに焦っていて、足早に近づくと僅かも動かない雪也の肩を揺さぶった。
「雪也さん! 何があったんですッ」
何が……。そんなこと、雪也が聞きたい。突然、本当に突然、弥生を敵視している者達が襲い掛かってきた。前々から過激な手段で未来を変えようとする者達はいたけれど、それでも雪也たちを害そうとする動きはわずかも無かったというのに。それとも、無かったと思うのは雪也の慢心だったのか。
「雪也さん! しっかり!」
あまりに必死な声がボンヤリと聞こえて、ようやく雪也がゆっくりと視線を上げる。その先の存在を見て、小さく息をつくと瞼を閉じた。
「由弦……」
そう、庵を訪ねてきた兵衛の腕の中には、煤と赤黒いものに汚れた由弦の姿があった。どうやら今日は兵衛だけではなく、店の若衆も連れて来たのだろう、そちらの腕には同じように煤と赤黒いものに汚れた蒼の姿がある。やはり、由弦は蒼と一緒にいたのか。
「雪也さん、ここは危険なようですから、うちの店に行きましょう。由弦さんたちのことも、ちゃんと……我々が」
弔います、と言葉にすることはできなかった。だが兵衛が吞み込んだ言葉を、この状態で雪也が理解できないはずもない。
2
あなたにおすすめの小説
君に不幸あれ。
ぽぽ
BL
「全部、君のせいだから」
学校でも居場所がなく、家族に見捨てられた男子高校生の静。
生きる意味を失いかけた時に屋上で出会ったのは、太陽に眩しい青年、天輝玲だった。
静より一つ年上の玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。
静は玲のことを好きになり、静の告白をきっかけに二人は結ばれる。
しかしある日、玲の口から聞いた言葉が静の世界を一瞬で反転させる。
玲に対する感情は信頼から憎悪へと変わった。
それから十年。
かつて自分を救った玲に再会した静は玲に対して同じ苦しみを味合わせようとする。
かつらぽーん
うりぼう
BL
かつらがぽーんと吹き飛ぶ。
王道学園物と見せかけた普通の学園もの。
一人の生徒を生徒会の連中その他が気に入り、親衛隊連中が色々と嫌がらせをしている。
そんな騒動の最中の話。
※王道とみせかけた普通学園
※親衛隊あり
【8話完結】いじめられっ子だった僕が、覚醒したら騎士団長に求愛されました
キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。
けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。
そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。
なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」
それが、すべての始まりだった。
あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。
僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。
だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。
過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。
これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。
全8話。
運命よりも先に、愛してしまった
AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。
しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、
2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。
その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる