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第21話
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「ところで、もう一つの方はどうするつもりなんだ? 海までの山道の整備。こっちの方がよっぽど無茶だと思うけど」
こっちもグロウ兄様と約束した件だ。
塩を運ぶための安全な道の確保。
死の山脈から海までは直線距離で十五キロほど。東京駅からディズニーランドまでの距離より長い。
しかも途中は森が生い茂り、獣道しかない急斜面も多い。馬車どころか徒歩でも苦労するような地形だ。
本来なら「不可能」と断じてもおかしくないくらい、結構な無理難題であるところだが……。
「いいえ、できるわ。プランはもう思いついてるから」
「え、本当かい? いつの間に……」
「お兄様と話してるときに、ふと閃いたの。構造は単純だから設計自体はすぐ終わると思う。それができたら、あとは現地で実作業ね。むしろ大変なのはこっちね」
というわけで、当面のスケジュールは日中に山道づくりをしつつ、夜は城に戻ってギルの新兵器の考案という生活が続く。
そして隙を見て合間に書類仕事を片付ける。
「多忙だね。大丈夫そう?」
「気遣ってくれてありがとう。でも大丈夫よ。不思議とつらくないの。むしろワクワクしてるっていうか……これもお兄様たちとちゃんと話せたおかげかもね」
昔の私は、兄たちの前ではまともに声も出せなかった。
怖かったからじゃない。ただ、圧倒されていたのだと思う。
能力も責任も私よりずっと上で――それが羨ましくて、悔しくて。
でも、今はもう違う。
ようやく肩を並べて進めるようになった。
それが嬉しくて仕方ない。
「……っと、そうこう言ってるうちにできたわよ」
「え、なにが?」
「山道の設計図」
「もう!? てか、さっきまでやってた書類の方は?」
「そっちはもう片づけたわ。さ、こっちきて」
さらりと言ってのけた私に、ギルが若干唖然としたような表情を浮かべる。
前世の会社員時代から書類仕事は得意だ。得意と言うか、性に合ってるのだろう。コツコツ進められる感じが。
それでも最初は量の多さに辟易としたけど、慣れてくればこれくらいはね。
というわけで、私はギルのリアクションには構わず設計図を机の上に広げる。
そしてその中身を覗き込むと、ギルは今度こそ本気で驚きの声を上げた。
「……なあフェルト。“これ”、正気で言ってる?」
「もっちろん。これなら死の山脈を越える必要もないし、誰でも安全に海まで行けるようになるわ」
「いや、できたらそうなるけど……でも、本当にこんなものが人の手で実現できるのか? いくら錬金術でも、さすがにこれは……」
「できるわ。あ、作業はギルにも手伝ってもらうからね。グロウ兄様との鍛錬は夕方からでしょ?」
「ああ、もちろんそれは構わないけど。しかし、にわかには信じがたいな……」
ギルはまだ設計図を眺めながらブツブツと言っていた。
ま、無理もないわね。きっと誰に見せても同じ反応をするでしょう。
この国では石を削るにも何日もかけるのが普通。
“道を作る”という概念そのものが、まだ木や石を敷きつめる程度の認識でしかない。できてせいぜい川に橋をかける程度の技術力。
しかし、だからこそ錬金術の出番なのだ。
なにより異世界人からすれば想像を超えた代物でも、転生者である私には実際に実物を拝んだ記憶が残っている。
さーてと、明日からは大仕事ね。今日のところはしっかり休んで明日に備えましょう。
きっと私もギルも、これからしばらくは毎日ヘトヘトになるだろうから。
***
翌日の午前中、私は山道計画に関する相談のためリヒテル兄様の部屋を訪れた。
実際に作業をするのは私とギルだけれど、いざ実行するとなると地図の書き換えなどの様々な事務仕事も発生する。
というわけで、国の内政を統括する宰相となったお兄様にはきちんと詳細を伝えておかねばならない。
「……これ、本気かい?」
机の上に広げた設計図を見て、リヒテル兄様は眉をひそめた。
ギルとまったく同じリアクションでちょっとおもしろい。
「ええ、本気よ。だから諸々の手続きをお願いしたいの」
「やれやれ、下につくと言ったらこれか。人使いが荒いね」
「ダメかしら?」
私は両手を合わせてじっと見つめる。
するとリヒテル兄様はしばしの沈黙のあと、諦めたように溜め息を吐いた。
「……はぁ。わかった、請け負おう」
やった! ラッキー!
これで事務に忙殺されずに、作業に集中できるわ。
リヒテル兄様は政治と実務の鬼であり、この分野を任せられるのは非常に助かる。
私は意気揚々と部屋を後にしようとする。
「ちなみに、この借りはいずれ“きっちり”返してもらうよ」
「うっ……」
……今のセリフは聞かなかったことにしましょう。
***
そして昼過ぎ。私はギルと共に死の山脈のふもとに立っていた。
いよいよ計画実行のとき。
目の前には切り立った山肌、岩と土の壁がどこまでも続いている。
「う~ん。やっぱり、未だに信じられないな……」
「信じるも何も、今から見せてあげるわ。さ、いくわよ」
なおも腕を組んで唸るギルをよそに、私は山の斜面に手を当てて魔力を流し込む。
錬金術の得意分野――それは物質操作。
砂や石、金属など“無機のもの”を変質・再構築するのは、まさに十八番だ。
魔力の波が地中を走り、土が押しのけられる。
深く、さらに深く。
私は掘り進めながら壁を圧縮して硬度を増し、崩落しないように内側を補強していく。
そうして生まれたのが、山を貫く大きな横穴。
ここまで来てしまえば、私のやろうとしていることはもう誰の目にも明らかだろう。
そう、山を“越える”のではなく“抜ける”――これこそが私の計画。
つまり私が今作っているのは、『トンネル』だ。
「おおお……」
背後からギルの驚嘆の声が聞こえてくる。
穴はどんどん掘り進み、私は同時に空間を広げていく。
人も馬車も並んで通れるほどの大きさに整形しながら、魔力検知器で進行方向を確認。
土を押しのけ、圧縮し、固め、再び前進。
死の山脈を馬鹿正直に切り開くのは不可能。
なら、ど真ん中を突っ切ればいい。
それなら木を伐採する必要もないし、魔物の襲撃を受けることもない。
まさに逆転の発想である。
「……うわぁ、すごいな。もはや何が何だか……」
後ろで呆れたように呟くギルの手には、私が錬成したランプが握られている。
魔力の濃い死の山脈では、魔力を吸収するだけで永続的に光を放つ。
この光を一定間隔で設置していけば、トンネルの中は常に明るく保たれる。
「言っておくけど、原理としてはそんなに驚くことじゃないのよ。私の地下工房だって、ずっと昔に師匠が同じ方法で作ったものなんだから。今回は規模がちょっと大きいってだけ」
「と、言われても……。これって上の重みで潰れたりしないのか?」
「錬金術で超圧縮した“コンクリート”で固めてあるから大丈夫よ。心配なら壁を叩いてみるといいわ」
「こんくりーと?」
「土と砂と水を変質させて作った特殊な素材よ。レンガなんか比べものにならない強度で、ちょっとやそっとじゃビクともしないわ」
「へぇ~……ほんとだ。たしかにとんでもない密度と硬さだ」
ギルが恐る恐る拳で壁をノックすると、コツン、と乾いた金属音のような響きが返ってくる。
「ま、さすがにオリハルコンほどじゃないけどね。でも、これでも耐久性は十分。岩盤崩落の危険性はまずないわ」
「そっか」
ギルは感心したように壁を撫でながら、耳を澄ます。
地鳴りひとつしない。
魔力の流れが安定している証拠だ。
「このトンネルが完成すれば、海から街まで誰もが安全に行き来できるようになる。塩づくりだけじゃなく、漁にだって行き放題よ」
そうなれば、アストリア王国の食卓は一変する。
国の周辺には川も湖もある。けれど、ここ数年の飢饉で乱獲が続き、魚の姿はめっきり減っていた。
大量の海の魚を見れば、きっと民のみんなも大喜びしてくれることだろう。
それに塩漬けや干物の保存も潤沢に可能となる。
結果、多くの命が冬を越せる。
今年は餓死者なんて出させない。
「ああ、その日が来るのが楽しみだな。それにしてもフェルト、魔力の方は大丈夫かい? これだけの規模だと消費量もとんでもないだろう」
「そうね、えげつないわ。だから一気には無理。毎日少しずつ、コツコツ進めるしかないわ。書類と同じくね」
いずれ港を建てることも考えれば、トンネルの幅は最低でも二頭立ての馬車が余裕ですれ違えるくらいの広さにしたい。
それに安全性と耐久性を考慮すると、壁や床も丁寧に固めなければ。
単純作業とはいえ、魔力の制御をミスすれば崩落の危険もある。
ちなみに魔力は簡単に回復しない。
たとえ錬金術をもってしても、だ。
錬金術自体が魔力を行使する魔術であるだけに、当然と言えば当然だけど。
だから食べて寝て、きちんと休まないと。
「ただ、一から山を切り開くのに比べたら、こっちの方がやっぱりだいぶマシよ。魔力の消耗も、作業のスピードも。このペースなら当初の目標である三ヶ月、冬が来る前には完成させられるはず。いえ、してみせる」
「俺にできることはあるか?」
「ギルは掘り出した土や石を地上に運び出してちょうだい。スコップと荷車を用意してあるから」
「ああ、あれか」
ギルが壁際に視線を送る。
来る前に予め錬金術で作っていたもの。
掘った土はコンクリートに変換して壁の材料にしている。ただし、一部はどうしても余ってしまう。
その処理にまで錬金術を使っていては、それこそ魔力が足りなくなる。
だからこの計画には、土砂の運搬係という名のサポート要員が必須だった。
「任せてくれ。力仕事は俺の得意分野だ」
「これが終わったらグロウ兄様との訓練もあるでしょ。ここで疲れて訓練に身が入らないのもあれだし、適度に自分のペースでいいわよ。先は長いんだから」
「了解。全力で行く」
「…………」
……ま、やる気があるのはいいことだし、いっか。
それに最悪、体力だけなら錬金術で強化したポーションもあるしね……味は保証しないけど。
こっちもグロウ兄様と約束した件だ。
塩を運ぶための安全な道の確保。
死の山脈から海までは直線距離で十五キロほど。東京駅からディズニーランドまでの距離より長い。
しかも途中は森が生い茂り、獣道しかない急斜面も多い。馬車どころか徒歩でも苦労するような地形だ。
本来なら「不可能」と断じてもおかしくないくらい、結構な無理難題であるところだが……。
「いいえ、できるわ。プランはもう思いついてるから」
「え、本当かい? いつの間に……」
「お兄様と話してるときに、ふと閃いたの。構造は単純だから設計自体はすぐ終わると思う。それができたら、あとは現地で実作業ね。むしろ大変なのはこっちね」
というわけで、当面のスケジュールは日中に山道づくりをしつつ、夜は城に戻ってギルの新兵器の考案という生活が続く。
そして隙を見て合間に書類仕事を片付ける。
「多忙だね。大丈夫そう?」
「気遣ってくれてありがとう。でも大丈夫よ。不思議とつらくないの。むしろワクワクしてるっていうか……これもお兄様たちとちゃんと話せたおかげかもね」
昔の私は、兄たちの前ではまともに声も出せなかった。
怖かったからじゃない。ただ、圧倒されていたのだと思う。
能力も責任も私よりずっと上で――それが羨ましくて、悔しくて。
でも、今はもう違う。
ようやく肩を並べて進めるようになった。
それが嬉しくて仕方ない。
「……っと、そうこう言ってるうちにできたわよ」
「え、なにが?」
「山道の設計図」
「もう!? てか、さっきまでやってた書類の方は?」
「そっちはもう片づけたわ。さ、こっちきて」
さらりと言ってのけた私に、ギルが若干唖然としたような表情を浮かべる。
前世の会社員時代から書類仕事は得意だ。得意と言うか、性に合ってるのだろう。コツコツ進められる感じが。
それでも最初は量の多さに辟易としたけど、慣れてくればこれくらいはね。
というわけで、私はギルのリアクションには構わず設計図を机の上に広げる。
そしてその中身を覗き込むと、ギルは今度こそ本気で驚きの声を上げた。
「……なあフェルト。“これ”、正気で言ってる?」
「もっちろん。これなら死の山脈を越える必要もないし、誰でも安全に海まで行けるようになるわ」
「いや、できたらそうなるけど……でも、本当にこんなものが人の手で実現できるのか? いくら錬金術でも、さすがにこれは……」
「できるわ。あ、作業はギルにも手伝ってもらうからね。グロウ兄様との鍛錬は夕方からでしょ?」
「ああ、もちろんそれは構わないけど。しかし、にわかには信じがたいな……」
ギルはまだ設計図を眺めながらブツブツと言っていた。
ま、無理もないわね。きっと誰に見せても同じ反応をするでしょう。
この国では石を削るにも何日もかけるのが普通。
“道を作る”という概念そのものが、まだ木や石を敷きつめる程度の認識でしかない。できてせいぜい川に橋をかける程度の技術力。
しかし、だからこそ錬金術の出番なのだ。
なにより異世界人からすれば想像を超えた代物でも、転生者である私には実際に実物を拝んだ記憶が残っている。
さーてと、明日からは大仕事ね。今日のところはしっかり休んで明日に備えましょう。
きっと私もギルも、これからしばらくは毎日ヘトヘトになるだろうから。
***
翌日の午前中、私は山道計画に関する相談のためリヒテル兄様の部屋を訪れた。
実際に作業をするのは私とギルだけれど、いざ実行するとなると地図の書き換えなどの様々な事務仕事も発生する。
というわけで、国の内政を統括する宰相となったお兄様にはきちんと詳細を伝えておかねばならない。
「……これ、本気かい?」
机の上に広げた設計図を見て、リヒテル兄様は眉をひそめた。
ギルとまったく同じリアクションでちょっとおもしろい。
「ええ、本気よ。だから諸々の手続きをお願いしたいの」
「やれやれ、下につくと言ったらこれか。人使いが荒いね」
「ダメかしら?」
私は両手を合わせてじっと見つめる。
するとリヒテル兄様はしばしの沈黙のあと、諦めたように溜め息を吐いた。
「……はぁ。わかった、請け負おう」
やった! ラッキー!
これで事務に忙殺されずに、作業に集中できるわ。
リヒテル兄様は政治と実務の鬼であり、この分野を任せられるのは非常に助かる。
私は意気揚々と部屋を後にしようとする。
「ちなみに、この借りはいずれ“きっちり”返してもらうよ」
「うっ……」
……今のセリフは聞かなかったことにしましょう。
***
そして昼過ぎ。私はギルと共に死の山脈のふもとに立っていた。
いよいよ計画実行のとき。
目の前には切り立った山肌、岩と土の壁がどこまでも続いている。
「う~ん。やっぱり、未だに信じられないな……」
「信じるも何も、今から見せてあげるわ。さ、いくわよ」
なおも腕を組んで唸るギルをよそに、私は山の斜面に手を当てて魔力を流し込む。
錬金術の得意分野――それは物質操作。
砂や石、金属など“無機のもの”を変質・再構築するのは、まさに十八番だ。
魔力の波が地中を走り、土が押しのけられる。
深く、さらに深く。
私は掘り進めながら壁を圧縮して硬度を増し、崩落しないように内側を補強していく。
そうして生まれたのが、山を貫く大きな横穴。
ここまで来てしまえば、私のやろうとしていることはもう誰の目にも明らかだろう。
そう、山を“越える”のではなく“抜ける”――これこそが私の計画。
つまり私が今作っているのは、『トンネル』だ。
「おおお……」
背後からギルの驚嘆の声が聞こえてくる。
穴はどんどん掘り進み、私は同時に空間を広げていく。
人も馬車も並んで通れるほどの大きさに整形しながら、魔力検知器で進行方向を確認。
土を押しのけ、圧縮し、固め、再び前進。
死の山脈を馬鹿正直に切り開くのは不可能。
なら、ど真ん中を突っ切ればいい。
それなら木を伐採する必要もないし、魔物の襲撃を受けることもない。
まさに逆転の発想である。
「……うわぁ、すごいな。もはや何が何だか……」
後ろで呆れたように呟くギルの手には、私が錬成したランプが握られている。
魔力の濃い死の山脈では、魔力を吸収するだけで永続的に光を放つ。
この光を一定間隔で設置していけば、トンネルの中は常に明るく保たれる。
「言っておくけど、原理としてはそんなに驚くことじゃないのよ。私の地下工房だって、ずっと昔に師匠が同じ方法で作ったものなんだから。今回は規模がちょっと大きいってだけ」
「と、言われても……。これって上の重みで潰れたりしないのか?」
「錬金術で超圧縮した“コンクリート”で固めてあるから大丈夫よ。心配なら壁を叩いてみるといいわ」
「こんくりーと?」
「土と砂と水を変質させて作った特殊な素材よ。レンガなんか比べものにならない強度で、ちょっとやそっとじゃビクともしないわ」
「へぇ~……ほんとだ。たしかにとんでもない密度と硬さだ」
ギルが恐る恐る拳で壁をノックすると、コツン、と乾いた金属音のような響きが返ってくる。
「ま、さすがにオリハルコンほどじゃないけどね。でも、これでも耐久性は十分。岩盤崩落の危険性はまずないわ」
「そっか」
ギルは感心したように壁を撫でながら、耳を澄ます。
地鳴りひとつしない。
魔力の流れが安定している証拠だ。
「このトンネルが完成すれば、海から街まで誰もが安全に行き来できるようになる。塩づくりだけじゃなく、漁にだって行き放題よ」
そうなれば、アストリア王国の食卓は一変する。
国の周辺には川も湖もある。けれど、ここ数年の飢饉で乱獲が続き、魚の姿はめっきり減っていた。
大量の海の魚を見れば、きっと民のみんなも大喜びしてくれることだろう。
それに塩漬けや干物の保存も潤沢に可能となる。
結果、多くの命が冬を越せる。
今年は餓死者なんて出させない。
「ああ、その日が来るのが楽しみだな。それにしてもフェルト、魔力の方は大丈夫かい? これだけの規模だと消費量もとんでもないだろう」
「そうね、えげつないわ。だから一気には無理。毎日少しずつ、コツコツ進めるしかないわ。書類と同じくね」
いずれ港を建てることも考えれば、トンネルの幅は最低でも二頭立ての馬車が余裕ですれ違えるくらいの広さにしたい。
それに安全性と耐久性を考慮すると、壁や床も丁寧に固めなければ。
単純作業とはいえ、魔力の制御をミスすれば崩落の危険もある。
ちなみに魔力は簡単に回復しない。
たとえ錬金術をもってしても、だ。
錬金術自体が魔力を行使する魔術であるだけに、当然と言えば当然だけど。
だから食べて寝て、きちんと休まないと。
「ただ、一から山を切り開くのに比べたら、こっちの方がやっぱりだいぶマシよ。魔力の消耗も、作業のスピードも。このペースなら当初の目標である三ヶ月、冬が来る前には完成させられるはず。いえ、してみせる」
「俺にできることはあるか?」
「ギルは掘り出した土や石を地上に運び出してちょうだい。スコップと荷車を用意してあるから」
「ああ、あれか」
ギルが壁際に視線を送る。
来る前に予め錬金術で作っていたもの。
掘った土はコンクリートに変換して壁の材料にしている。ただし、一部はどうしても余ってしまう。
その処理にまで錬金術を使っていては、それこそ魔力が足りなくなる。
だからこの計画には、土砂の運搬係という名のサポート要員が必須だった。
「任せてくれ。力仕事は俺の得意分野だ」
「これが終わったらグロウ兄様との訓練もあるでしょ。ここで疲れて訓練に身が入らないのもあれだし、適度に自分のペースでいいわよ。先は長いんだから」
「了解。全力で行く」
「…………」
……ま、やる気があるのはいいことだし、いっか。
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