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11話 再会
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私に会いに来た、アドフォートン男爵と名乗る人物が待つ応接室へ行くと… そこには懐かしくて憎らしい人物がいた。
アドフォートン男爵は私の顔を見るとサッ… と椅子から立ち上がり、胸に手をあてて軽くお辞儀をする。 騎士流の挨拶をした。
「お久しぶりです、マリオン嬢。 お元気でしたか?」
「……ア… アルフレッド様? なぜ、ここにいるの?!」
アドフォートン男爵と名乗った私の客は、私の人生を大きく変えるきっかけとなった人物。 最初の婚約者アルフレッド様だった。
「王弟殿下の護衛任務からはずされて、先日帰国したんだ。 …それで、ノエルから君が結婚したと聞き会いに来た」
「ノエル卿に……?」
なるほど。 ノエル卿とアルフレッド様は、はとこ(親が従兄弟同士)同士で年が近いから、親戚の中でも親しかったと聞いたことがある。 …でも、今さらなぜ会いに来たの?
「こちらに帰って来てすぐに出席した夜会で、偶然ノエルに会って… 世間話をしているうちに、君の話がでたんだ」
アルフレッド様とノエル様は、2人とも私の婚約者だった経験がある。 だから共通の話題となったのだろう。
「ノエル卿はお元気ですか? 私は何年もお会いしていないので……」
「うん。 元気そうだった… 2人目の子を奥方が身籠ったといっていた」
「そうですか… お幸せそうで何よりです」
2人目の子…… ノエル様と結婚していたら、私にも子供が2人できていたのかしら? 今の私は初夜どころか夫に名前さえ、まともに覚えてもらえないのに。
「うん…」
「……」
チラリと視線をむけると、アルフレッド様はうつむいて、気まずそうにモジモジと指を動かしながら黙りこんでしまう。 この話題にうっかり触れたことを後悔しているようだ。
私の結婚相手が老人だと、アルフレッド様は知っているのだろう。
私から視線をそらしたアルフレッド様を、じっくりと観察すると… 婚約していた頃よりも、ずっと逞しくなったように見える。
―――王弟殿下の護衛任務で隣国へ旅立った10年前。
私と最後に会ったアルフレッド様は、赤地に金の刺繍が入った近衛騎士団のきらびやかな騎士服を着ていて… その凛々しい姿に私は無邪気に見惚れていた。
今はプライベートだから、アルフレッド様は茶色の生地に黒の縁取りがついた、地味な騎士服を着ている。
その地味な装いが、アルフレッド様の年を重ねて成熟した、大人の艶気をひきたてていて… 私はこっそりと魅力が増した元婚約者の姿にため息をつく。
「……」
何年たっても、アルフレッド様は素敵だわ。 憎らしいほど魅力的で… 惨めな私とは大違い。 悔しいわ。 …私がどうあがいても、大きく開いたこの格差はうめられない。
私は唇をかんで劣等感にたえた。
2人は向かい合って椅子に腰をおろす。
「アドフォートン男爵様と使用人からお名前をお聞きして、どなたかと思いましたが… まさかアルフレッド様…… いえ、アルフレッド卿だとは思いませんでした」
いけない! 今は何の関係もない他人だから、昔のように気安く呼んではいけなかったわ。
私が呼び方を変えると、アルフレッド様の男らしい眉がピクリッ… と動く。
「去年、隣国を訪問した王太子夫妻が刺客に襲われて… 偶然、王弟殿下と居合わせたオレが救ったから、その褒賞で男爵位と領地をいただいたんだ」
「まぁ… 手柄をたてられたのですか」
「うん」
「それで… 今日はどのような用件で、いらっしゃったのですか?」
正直、この時間が苦痛に感じる。
婚約を解消した後、立派に出世されたアルフレッド様と… そんなアルフレッド様にすてられて落ちぶれた私と… どうしても比べてしまうから。
アルフレッド様と結婚された奥様は幸せでしょうね。
田舎にあるベントレー伯爵領の本邸に引きこもっていれば… 2度と会うことの無い人だと思っていた。
自分を憐れんで酔うような、情けないことはしないと決めていたのに。
こうして自分とかけ離れた存在になった、元婚約者の姿を見ると… どうしても僻んでしまう。
「……っ」
苦痛だわ。 本当に憎らしい人!
アドフォートン男爵は私の顔を見るとサッ… と椅子から立ち上がり、胸に手をあてて軽くお辞儀をする。 騎士流の挨拶をした。
「お久しぶりです、マリオン嬢。 お元気でしたか?」
「……ア… アルフレッド様? なぜ、ここにいるの?!」
アドフォートン男爵と名乗った私の客は、私の人生を大きく変えるきっかけとなった人物。 最初の婚約者アルフレッド様だった。
「王弟殿下の護衛任務からはずされて、先日帰国したんだ。 …それで、ノエルから君が結婚したと聞き会いに来た」
「ノエル卿に……?」
なるほど。 ノエル卿とアルフレッド様は、はとこ(親が従兄弟同士)同士で年が近いから、親戚の中でも親しかったと聞いたことがある。 …でも、今さらなぜ会いに来たの?
「こちらに帰って来てすぐに出席した夜会で、偶然ノエルに会って… 世間話をしているうちに、君の話がでたんだ」
アルフレッド様とノエル様は、2人とも私の婚約者だった経験がある。 だから共通の話題となったのだろう。
「ノエル卿はお元気ですか? 私は何年もお会いしていないので……」
「うん。 元気そうだった… 2人目の子を奥方が身籠ったといっていた」
「そうですか… お幸せそうで何よりです」
2人目の子…… ノエル様と結婚していたら、私にも子供が2人できていたのかしら? 今の私は初夜どころか夫に名前さえ、まともに覚えてもらえないのに。
「うん…」
「……」
チラリと視線をむけると、アルフレッド様はうつむいて、気まずそうにモジモジと指を動かしながら黙りこんでしまう。 この話題にうっかり触れたことを後悔しているようだ。
私の結婚相手が老人だと、アルフレッド様は知っているのだろう。
私から視線をそらしたアルフレッド様を、じっくりと観察すると… 婚約していた頃よりも、ずっと逞しくなったように見える。
―――王弟殿下の護衛任務で隣国へ旅立った10年前。
私と最後に会ったアルフレッド様は、赤地に金の刺繍が入った近衛騎士団のきらびやかな騎士服を着ていて… その凛々しい姿に私は無邪気に見惚れていた。
今はプライベートだから、アルフレッド様は茶色の生地に黒の縁取りがついた、地味な騎士服を着ている。
その地味な装いが、アルフレッド様の年を重ねて成熟した、大人の艶気をひきたてていて… 私はこっそりと魅力が増した元婚約者の姿にため息をつく。
「……」
何年たっても、アルフレッド様は素敵だわ。 憎らしいほど魅力的で… 惨めな私とは大違い。 悔しいわ。 …私がどうあがいても、大きく開いたこの格差はうめられない。
私は唇をかんで劣等感にたえた。
2人は向かい合って椅子に腰をおろす。
「アドフォートン男爵様と使用人からお名前をお聞きして、どなたかと思いましたが… まさかアルフレッド様…… いえ、アルフレッド卿だとは思いませんでした」
いけない! 今は何の関係もない他人だから、昔のように気安く呼んではいけなかったわ。
私が呼び方を変えると、アルフレッド様の男らしい眉がピクリッ… と動く。
「去年、隣国を訪問した王太子夫妻が刺客に襲われて… 偶然、王弟殿下と居合わせたオレが救ったから、その褒賞で男爵位と領地をいただいたんだ」
「まぁ… 手柄をたてられたのですか」
「うん」
「それで… 今日はどのような用件で、いらっしゃったのですか?」
正直、この時間が苦痛に感じる。
婚約を解消した後、立派に出世されたアルフレッド様と… そんなアルフレッド様にすてられて落ちぶれた私と… どうしても比べてしまうから。
アルフレッド様と結婚された奥様は幸せでしょうね。
田舎にあるベントレー伯爵領の本邸に引きこもっていれば… 2度と会うことの無い人だと思っていた。
自分を憐れんで酔うような、情けないことはしないと決めていたのに。
こうして自分とかけ離れた存在になった、元婚約者の姿を見ると… どうしても僻んでしまう。
「……っ」
苦痛だわ。 本当に憎らしい人!
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