君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん

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13話 10年前の真相

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 青ざめた顔でアルフレッド様はあわてて、10年前の婚約解消について言い訳をした。


「本当に婚約解消は、君を待たせたくなくてしたんだ! じっさい… オレは10年も帰国できなかったし…… 信じて欲しいマリオン!」

「…私はそれでもあなたを待つつもりでした。 でもすぐに… あなたが隣国の貴族と婚約したと聞き、その女性と結婚したくて私と婚約を解消したのだと…… だからあきらめました」
 あの時の胸の痛みは今も忘れない。 あんな苦痛に耐えたというのに… 今さらそのコトを私に思い出させようとするなんて! 

 アルフレッド様から自分を守ろうと、私は胸の前で腕組みをした。 無意識の行動だった。


「違う、違うんだ! 護衛をしていた王弟殿下に、君とオレが婚約を解消したと知られ、懇願こんがんされたんだ」 
 椅子から腰を浮かし身を乗り出して、アルフレッド様は必死になって私に弁解べんかいする。

懇願こんがん…?」
 ああ、もう! 今さらアルフレッド様の言い訳なんて聞きたくないのに… 気になってしまう。

「王弟殿下の恋人が妊娠して、その女性が未婚みこんのまま出産すれば… 大きな醜聞しゅうぶんになり貴族社会から追いだされるから、オレが殿下のかわりに結婚して欲しいと頼まれて」

「何ですって…?!」
 王弟殿下?! アルフレッド様が婚約した女性は、王弟殿下に紹介されたと聞いたけれど… 殿下の恋人?!!

 私はギョッ… とする。

「だから彼女がオレと結婚して出産したら、時期を見て離婚する約束で… オレにとって、あの結婚は仕事の一部だととらえていたし…… 表向きはオレの妻だけど、彼女が殿下の恋人には変わりなかったから」

 …確かに未婚みこんの母になるよりは、外国人のアルフレッド様と結婚して離婚した女性となった方が、まだ傷は浅くてすむ。
 産まれた子どもの将来を考えれば、王家の血をひいていると知られない方が幸せだろうし。

「つまり… 王弟殿下の恋人を守るために、偽装ぎそう結婚をしたと言うのですか?」
「そうだ。 だからオレは帰国する前に離婚してきた」 

「……あきれた」
 何よそれ… そんな理由で私はあんなに… 『裏切られた』と苦しんだの?

「すまない… オレも浅はかだった。 君と婚約を解消しなければ、ここまで王弟殿下の面倒ごとに、巻き込まれずにすんだと思う」

「私もあなたも… なんて愚かなの?」
「君は1人娘だったから… 隣国に君を呼び寄せて、オレと結婚生活をおくることはできないと思っていた。 だからあの時は婚約解消が、最良の選択だと考えたんだ」

 アルフレッド様と一緒に王弟殿下の護衛についていた、同僚の騎士たちは妻子を呼び寄せ隣国で暮らしていたらしい。

「どちらにしても… あなたは私と結婚しなかったと思うわ。 私は子爵家の財産も爵位も継ぐことができなかったから……」
 どんな理由が隠されていたとしても… 結局、私はすてられる運命だったのよ。

 10年前の真相を聞き、私の激しい怒りは消えたけど… かわりにむなしさがあふれて、ガックリと身体の力が抜ける。

「マリオン、オレはそんなことしな…」

 アルフレッド様が長い腕をのばして、私の手をつかもうとするが…

 突然、…コンッ! コンッ! コンッ! 廊下側から扉をたたく音が応接室に響く。

「…っ?!」
 放心ほうしん状態だった私は扉をたたく音で、ハッ… とわれにかえる。

 コンッ! コンッ! コンッ! …とせわしなくたたかれる扉を開けると、あせったようすで使用人が立っている。
 使用人の服が乱れているのを見て、嫌な予感がした。

「申し訳ありません、奥様…! 旦那様がお呼びです。 エリーがお食事を運んだのですが、腕をつかまれて……」

「わかったわ、今すぐ行きます!」
 旦那さまはメイドのエリーを捕まえて、暴れているのね?! 早く助けに行かないと、エリーにケガをさせてしまうわ! 旦那様は足が不自由だけど、男性だから力が強い。
 だから私も旦那様に腕をつかまれてなぐられ、何度か顔に大きなあざをつくったことがある。

 さっきもスープ皿を夫に投げられて、あたった手首が赤くれてズキズキと痛む。


「アルフレッドきょう、申し訳ありません… 今日はお帰り下さい。 …どうかお元気で」 
 もう話すことは無いわ。 今は旦那様を優先しないと、大ごとになってしまう!


 私はアルフレッド様を応接室に置きりにして、夫の寝室へ急いでむかった。



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