君のためだと言われても、少しも嬉しくありません

みみぢあん

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17話 求婚

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 泣きだしてしまった私の涙がようやくかわいた頃… アルフレッド様に肩を抱かれたまま、私は夫の部屋と隣り合わせになっている、自分の部屋へとはいる。

「マリオン、座って」
「はい」

 言われるがまま私はボンヤリと椅子に座ると、アルフレッド様は私の隣に椅子を引きよせ腰をおろし… 夫に皿を投げられてれてしまった私の手首に手当てあてをする。

 慣れたようすで布に軟膏なんこうをぬりつけ湿布しっぷをつくり、アルフレッド様は私の手首にペタリッ… とる。 その上からクルクルと手ぎわよく包帯ほうたいをまいてゆく。

包帯ほうたいはきつくないか?」

「…はい、ありがとうございます。 とても上手に巻かれるのですね」
 いつもエリーに手伝ってもらうけど、こんなに手早く綺麗にはできないわ。

 包帯のはしをキュッ… としばりながら、アルフレッド様はおだやかに笑う。

「まぁ… 仕事でよくやっているからな」

「ああ、…ふふふっ…」
 そうだった、アルフレッド様は騎士だった。 バカなことを聞いてしまったわ。

 疲れ果てて気がぬけていた私は、思わず笑ってしまう。
 そんな私にアルフレッド様は笑みを引っ込め、鋭い視線をむけてくる。

「なぁマリオン… オレに名誉挽回めいよばんかいの機会をくれないか?」
「…名誉挽回めいよばんかい? 何をする気ですか?」
「君をここからつれ出したい」

「それは……」
 どういう意味?

 アルフレッド様は私の傷ついた手が痛まないよう、そっと… 自分の大きな手にのせて包む。

「もちろん、法的に何の問題も出ないようにしてからだから… 少し時間がかかる」
「法的に? 離婚…… ですか?」

「うん。 また君の名誉めいよに傷をつけてしまうのは苦しいが… でも、ここに君がとどまれば、あの老人に暴力をふるわれ続けて心と身体に深刻しんこくな傷をってしまうだろう。 それだけは絶対に見ごせない」

 まるで… 強い痛みを感じているかのように、アルフレッド様の眉間みけんに苦し気なしわができる。

「確かに… さっき旦那様に首をしめられた時は、命の危険を感じました。 アルフレッド様が止めてくださらなければ… どうなっていたか…」
 アルフレッド様のいうように、離婚できるならしたい。 ……でもその後は?

「マリオン… この話を進めて良いか?」

「いいえ、離婚はできません。 私は実家のスリンドン子爵家にもどれないから」
 私の家族だった人たちは、私をベントレー伯爵家に押しつけてすてた。 実家は私を受けいれないわ。 

「いや、マリオン。 君をスリンドン子爵家に行かせる気はない」
「でも、この屋敷を出れば、路頭ろとうに迷ってしまうわ」

「そ… そのことだが…… オレに考えがある」
 私から視線をそらして、アルフレッド様は急にモジモジとしはじめる。

「アルフレッド様?」
「君が許してくれるなら…… いや、許さなくて良いから。 オレの妻になってほしい」

「……っ?!」
 本気なの?
 
「マリオン… オ… オレの求婚も含めて… オレに名誉回復めいよばんかいの機会が欲しい。 オレは君の夫となって、一… 一生をかけてでも、君の信頼を取り戻したい」

 真っ直ぐ私にむいていたアルフレッド様のするどい視線が、自信なさげにゆらゆらとらいでいる。

「アルフレッド様が私と結婚……?」
「今すぐ… 返事をしなくても良い。 重要な決断になるから… よく考えて欲しい」 

「……」
 まぁ! 普段は怖いと恐れられていた、男らしく角ばった顔が真っ赤だわ。 あっ! 耳まで赤くなっている… それに私の手を包んでいるアルフレッド様の手が、じっとりと汗ばんできた。

「オレの求婚を君が断ったとしても… オレは君を路頭ろとうに迷わせたりしない。 安心して暮らせるように支援するつもりだから……」

 アルフレッド様は私の手をはなして立ち上がる。

「マリオン、今日はここで失礼する! 君がどんな選択をするとしても、準備が必要だから。 オレは王都へ帰るよ」
「えっ…! アルフレッド様……?!」

 今すぐ私に求婚を断られるのをけるためだろう。 アルフレッド様は私から逃げるように、廊下へつづく扉へむかう。

 だが扉のノブをつかむが、扉は開かず… なぜか、ドカッ… ドカッ… と荒々しい足音を立てて私の前に戻って来た。

「…ん…? アルフレッド様?」

 アルフレッド様はひざまずき、私の痛めていない方の手を取りキスをする。

「マリオン…… 君はオレの初恋の女性だから… オレは君以外の女性と結婚する気はない。 口下手くちべた無骨ぶこつなオレのそばで、嬉しそうに笑っていた君がずっと好きだった。 10年過ぎても、オレの気持ちは変わらなかったから、これからも君以外の女性を愛すことはないよ。 …それだけは知っていて欲しい」

「あ、私…っ…」
 アルフレッド様が私を?! 本当に?!

 顔がカッ… と熱くなる。 私の顔もアルフレッド様に負けないぐらい赤くなっているはずだ。


 真っ赤にそまった額からタラタラと緊張の汗を流しながら、熱烈な告白をしたアルフレッド様は… もう一度、私の手にキスを落としてから去って行った。
 






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