私のお金が欲しい伯爵様は離婚してくれません

みみぢあん

文字の大きさ
12 / 30

11話 後悔 クロヴィスside

しおりを挟む
 喪服もふく姿でブルブルと震えるアデルの華奢きゃしゃな身体を抱きしめて、クロヴィスは深く後悔する。


「こんなことになるなら、あの時…」
 旦那様の提案を、オレが受け入れれば良かった!

 クロヴィスは眉間みけんに深いしわをよせ… アデルの祖父バスティアン・ガーメロウが、数年前に初めて心臓の病でたおれたときのことを思い出していた。



『なぁ、クロヴィス… あのを妻にしてはどうだ?』
 寝室のベッドに横たわり、医師に処方しょほうされた薬を飲むとアデルの祖父バスティアンはクロヴィスに提案した。

『妻… アデルお嬢様をですか? オレの妻に?!』

『そうだ… アデルもお前をいているようだし… お前になら安心してあのをたくせる』
 心臓が弱っていることがわかり、あと数年の命だとバスティアンは医師に告知こくちされたばかりだった。
 
『待って下さい、旦那様… いくらなんでも、オレが相手ではアデルお嬢様がかわいそうですよ!』
 オレはアデルよりも8歳も年上だし、そのうえ爵位もなければ財産もない。オレでは不つりあいだ!
 いちおうオレは上位貴族の出身だが… 同僚とケンカをして近衛このえ騎士団をクビになったときに、家の恥だと父上に絶縁ぜつえんされている。
 家族や友人にまで見すてられたオレを、旦那様はひろってくれたおんがある。  
 そしてオレの能力を正しく評価し、大切な孫娘の護衛までまかせてくれた。
 できれば旦那様の望みをかなえてやりたいが……

『あのを何度も守りきったお前なら、アデルをたくすのにじゅうぶん信頼できる…』

『旦那様の評価はありがたい… だが、アデルお嬢様はオレにとって妹のようなだし… オレはこれからも、お嬢様を守るつもりです… 将来、彼女が誰かと結婚しても、アデルお嬢様に望まれれば守り続ける』 
 わざわざオレのような男を選ばなくても… きちんと社交デビューさせれば、アデルならきっと良い結婚相手を見つけられるはずだ。
 

 クロヴィスが結婚の話を断ってから、しばらくすると… バスティアンは結婚相手の候補者の中から1番条件が良い、バーンウッド伯爵家の後継者ピエールと、アデルの見合いをすすめた。

 バスティアンは自分の寿命がみじかいことを知り、孫娘アデルの将来を心配し、あせっていたのだ。



「……っ」
 家族に絶縁ぜつえんされたオレにとって、アデルと旦那様は家族同然だった! アデルは必ず、オレが守ってみせる!




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

【完結】好きでもない私とは婚約解消してください

里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。 そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。 婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。 無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。 彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。 ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。 居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。 こんな旦那様、いりません! 誰か、私の旦那様を貰って下さい……。

婚約者が私のことをゴリラと言っていたので、距離を置くことにしました

相馬香子
恋愛
ある日、クローネは婚約者であるレアルと彼の友人たちの会話を盗み聞きしてしまう。 ――男らしい? ゴリラ? クローネに対するレアルの言葉にショックを受けた彼女は、レアルに絶交を突きつけるのだった。 デリカシーゼロ男と男装女子の織り成す、勘違い系ラブコメディです。

心配するな、俺の本命は別にいる——冷酷王太子と籠の花嫁

柴田はつみ
恋愛
王国の公爵令嬢セレーネは、家を守るために王太子レオニスとの政略結婚を命じられる。 婚約の儀の日、彼が告げた冷酷な一言——「心配するな。俺の好きな人は別にいる」。 その言葉はセレーネの心を深く傷つけ、王宮での新たな生活は噂と誤解に満ちていく。 好きな人が別にいるはずの彼が、なぜか自分にだけ独占欲を見せる。 嫉妬、疑念、陰謀が渦巻くなかで明らかになる「真実」。 契約から始まった婚約は、やがて運命を変える愛の物語へと変わっていく——。

本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~

なか
恋愛
 私は本日、貴方と離婚します。  愛するのは、終わりだ。    ◇◇◇  アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。  初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。  しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。  それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。  この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。   レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。    全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。  彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……  この物語は、彼女の決意から三年が経ち。  離婚する日から始まっていく  戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。  ◇◇◇  設定は甘めです。  読んでくださると嬉しいです。

処理中です...