私のお金が欲しい伯爵様は離婚してくれません

みみぢあん

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12話 翌朝

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 ぐっすりと眠り、いつもと同じ時間にふと目覚めると… アデルは見なれない場所に寝ていた。
 コロリと転がり仰向あおむけになったアデルの視界に入った古風なベッドの天蓋てんがいを、ジッ… と見つめる。


「……っ?!」
 アレは何かしら?!

 バーンウッド伯爵夫人の部屋のベッドには、天蓋てんがいなんてついていない。
 自分がおかれている状況がつかめず、しばらく固まっていると… 不意ふいに前夜のことを思い出し、アデルはガバッ…! と身体をおこす。


 前夜、アデルたちは突然、4人組の男たちの襲撃をうけ、命の危険にさらされた。

『アデル… このままガーメロウ邸へ帰るのは危険だ! 早ければ、明日にでもピエールが夫の権利を主張して、妻のお前を連れ戻しにくるはずだから…』
 連れ戻されれば、間違いなくアデルは殺されるか、どこかに監禁かんきんされてしまうだろう。

『そんな… だったら別邸へ行きましょう、クロヴィス?!』

『いや、別邸ではすぐに、ピエールに見つかってしまう… だから、オレの実家へ行こう! あそこで時間かせぎをして、そのあいだにこれからの対策をるんだ』
 夫のピエールも別邸の場所を知っている。
 ガーメロウ邸にアデルがいなかれば、とうぜん別邸まで捜しにくるだろう。

『で… でも、あなたはお父様に絶縁ぜつえんされているのでしょう?』

『お前を守るためだ、頭を下げて何とかする! 少しだけ居心地いごこちが悪いかもしれないが… お前の命にはかえられない』


「……」
 クロヴィスが私のせいでお父様に責められ、追い払われるのではないかと心配したけれど… このお屋敷につくと、深夜にもかかわらずクロヴィスのご両親は、この客間を用意して私を受け入れくれた。

 アデルを自分の実家にあずけたあと… クロヴィスは捕まえた襲撃犯たちから情報を引き出そうと、王都騎士団(王都の治安維持を守る騎士団)へ出かけてしまった。
 
 
 ベッドをおりて裸足のまま窓ぎわにゆき、光をさえぎるカーテンをはしによせ、窓を開く。
 朝の陽ざしをあびながら… アデルは胸いっぱいに清浄な空気をすいこんだ。

「ボンヤリしてはいられないわ… クロヴィスは夜通し私のために、走りまわってくれている! 私もやれることをしなければ!」
 昨夜、襲撃されてよくわかったわ。
 命を狙われて危険にさらされるのは、私だけではないと! 私を守ろうとするクロヴィスやドニの方が、私よりもずっと危険なめにあう。

 アデルとピエールの問題は、けしてアデル個人の問題にとどまらず、周囲の者たちを巻き込んでおきている。
 祖父を亡くした悲しみにおぼれ、何もしないで立ちどまっていたら… 遺産だけではなく、自分の命と大切な人たちまで失うかもしれないのだ。


 使用人たちの詰所つめしょかねがなるしくみの、壁ぎわにれさがるヒモを引き… アデルは着替えを手伝ってもらう使用人を呼ぶ。






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