37 / 163
第二章
マリアベル 親戚の家にお呼ばれする。
しおりを挟む夏休み初日
ソフィア様と一緒に、キングスバリー家のタウンハウスに向かった。
お土産無しで伺うのは憚られるので、
ソフィア様に氷の魔法を掛けてもらい、アーモンドのキャラメルがけを持参した。
ソフィア様の 氷魔法は、水を風魔法で気圧を下げ氷を生成する。
アルビス家では、水を圧縮して水温を極限まで下げ振動を与えて氷を作るらしい。
氷魔法は複合魔法なので、得意な魔法で発生方法が変わる、とおっしゃった。
どちらにしても、生活魔法しか使えない私にはどだい無理な話である。
そうこうしているうちに、馬車が門前に止まった。
領地の本邸と違い、タウンハウスは門と玄関の距離が近い。
馬車から降りて、少し進んだ時、玄関の戸が開き 1組の男女が迎えに出た。
ソフィア様と同じ白い髪、同じ面差しを持った男性と、
金の髪を高く結い上げ 意思の強そうな綺麗な形のおでこ、そして優しい口元、澱みのない澄んだ瞳、吸い寄せられるような美貌を持つ女性、
ソフィアの両親である、キングスバリー公アンドリューと、キングスバリー公爵夫人エリザベスである。
「この度はお招きに預かり、、、」
「まぁ、そんな堅苦しい挨拶勘弁してちょうだい!
わたくしは、姪に会える事がとても楽しみだったのよ。
ずっと 貴女に会える日をずっと楽しみにしていたの。
さぁ、お顔を見せてちょうだいな。」
エリザベス様はそう言って 私の顔を両手で包み込んだ。
「コーネリア様によく似ていらっしらるわ」
「母にですか?」
「そうよ、コーネリア様。
でも、コーネリア様は、流れ星のように儚く、掴むと消えて無くなりそうな印象でしたが、
貴方は同じ顔立ちでも、そうね、北極星のような、しっかりとした そこに絶対に存在するような星のようだわ。」
「まあ、私 存在感があるのですね!」
「そうよ、生きてるって感じだわ、」
「確かに、マリアベル様はいつも元気でいらっしゃるわね、」
ソフィアがそう言った。
三人で、ウフフ、オホホ、と笑った。
アーモンドのキャラメルがけは 大変好評であった。
こちらの世界にはキャラメルが存在しておらず、支流は飴がけだったので非常に珍しいがられた。
喜んで貰えて良かったわ
取り敢えず、ホッとした。
晩餐が終わり ソフィアの部屋でおしゃべりしていたところに エリザベス様が訪ねてこられた。
「ねえ、マリアベル、貴女のおまじない大層効果があるそうね。
お願いがあるの、わたくしにもかけてもらえないかしら、、、
最近 腰が痛くて、体が熱っぽいの」
「お安い御用です!腰ですかぁー
おさわりいたしますが よろしいでしょか?」
「ええ、お願いね!」
エリザベスはナイトガウン姿でコルセットを絞めていなかった。
背中を前にして、椅子に腰掛けてもらった。
どの辺かしら?
腰痛だ、腰痛だ、と言ってたお友達が膵臓癌で亡くなった事を思い出した。
ただの腰痛だけだといいのだが••••
注意深く心の中で呟く
「痛いの、痛いの、痛いの、、、」
あれ?指先に トックン トックン 何か感じる
トックン トックン トックン、、、
音がシンクロしてる。二つの音が重なっているの???
一つは上、一つは、下の辺り、
««あっ!»»
赤ちゃんだ!子供がいるんだ。
マリアベルは前世で二人産んでいる。
直感で気が付いた。
取り敢えず、腰痛だけとっちゃいましょうか
「痛いの、飛んでけー、」
周りに金のキラキラが舞った。
「終わりました。ちょっと立ってみて下さい。」
「あら、真っ直ぐ立てるわ、体が重くなくなったわ!!凄いわね。ありがとう。」
そして、小さな声で聞いてみた
「あの、差し出がましいとは思いますが、
月の物は、、、、」
「あっ、まさか? そうなの?」
私は自分の下腹部をさわって答えた。
「そのように、感じました。」
エリザベス様は私を抱きしめて
「わたくし、貴女が大好きよ。」
そう言って 部屋を出ていかれた。
ソフィアが小声で呟いた
(わたくしだって 大好きだわ、、、)
そして2日間キングスバリー家で楽しく過ごし、お別れの時が来た。
出発の朝、キングスバリー公が
「直接クラレンス領に送っても良いのだが、是非に会いたいと言う者がおってな。
申し訳ないが、半刻ほど時間を作って貰えぬか?」
「クラレンス領にはその者が責任者をもって送り届けるゆえ、」
お世話になったキングスバリー公のお願いなので二つ返事で承諾した。
「喜んでお伺いします。
でも、どなたでしょう?」
「それは、会ってのお楽しみだよ!」
お茶目な公爵様である。
個人的には 白い馬に乗って浜辺を爆速してもらいたいところだ。
滞在のお礼と別れの挨拶をして、
馬車に乗り込む直前に、私は言った。
「エリザベス様、お手をお借りしてもよろしいですか?」
多分 高齢出産になるであろうエリザベス様の
母子共に健康に無事出産できますように、
願って•••••
健康に、健やかに、元気な赤ちゃん、
無事に、、、、私のいとこ、、、
たくさん たくさん お祈りした。
エリザベス様から手を離し、私は 車内に乗り込んだ。
馬車が走り出した。
みんな手を振ってくれた。
キングスバリー夫妻が寄り添っている。
(良い夫婦の日)のポスターみたいだなぁ、と思った。
———————————-
エリザベスは銀の粉に包まれて
一雫の涙を零した。
これが、慈愛の雨なのね、、、
わたくし達キングスバリー家は、何があっても貴女の味方よ、マリアベル
————————
44
あなたにおすすめの小説
悪徳領主の息子に転生しました
アルト
ファンタジー
悪徳領主。その息子として現代っ子であった一人の青年が転生を果たす。
領民からは嫌われ、私腹を肥やす為にと過分過ぎる税を搾り取った結果、家の外に出た瞬間にその息子である『ナガレ』が領民にデカイ石を投げつけられ、意識不明の重体に。
そんな折に転生を果たすという不遇っぷり。
「ちょ、ま、死亡フラグ立ち過ぎだろおおおおお?!」
こんな状態ではいつ死ぬか分かったもんじゃない。
一刻も早い改善を……!と四苦八苦するも、転生前の人格からは末期過ぎる口調だけは受け継いでる始末。
これなんて無理ゲー??
私の薬華異堂薬局は異世界につくるのだ
柚木 潤
ファンタジー
薬剤師の舞は、亡くなった祖父から託された鍵で秘密の扉を開けると、不思議な薬が書いてある古びた書物を見つけた。
そしてその扉の中に届いた異世界からの手紙に導かれその世界に転移すると、そこは人間だけでなく魔人、精霊、翼人などが存在する世界であった。
舞はその世界の魔人の王に見合う女性になる為に、異世界で勉強する事を決断する。
舞は薬師大学校に聴講生として入るのだが、のんびりと学生をしている状況にはならなかった。
以前も現れた黒い影の集合体や、舞を監視する存在が見え隠れし始めたのだ・・・
「薬華異堂薬局のお仕事は異世界にもあったのだ」の続編になります。
主人公「舞」は異世界に拠点を移し、薬師大学校での学生生活が始まります。
前作で起きた話の説明も間に挟みながら書いていく予定なので、前作を読んでいなくてもわかるようにしていこうと思います。
また、意外なその異世界の秘密や、新たな敵というべき存在も現れる予定なので、前作と合わせて読んでいただけると嬉しいです。
以前の登場人物についてもプロローグのに軽く記載しましたので、よかったら参考にしてください。
[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します
mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。
中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。
私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。
そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。
自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。
目の前に女神が現れて言う。
「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」
そう言われて私は首を傾げる。
「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」
そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。
神は書類を提示させてきて言う。
「これに書いてくれ」と言われて私は書く。
「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。
「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」
私は頷くと神は笑顔で言う。
「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。
ーーーーーーーーー
毎話1500文字程度目安に書きます。
たまに2000文字が出るかもです。
魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで
ひーにゃん
ファンタジー
誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。
運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……
与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。
だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。
これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。
冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。
よろしくお願いします。
この作品は小説家になろう様にも掲載しています。
【第2章完結】王位を捨てた元王子、冒険者として新たな人生を歩む
凪木桜
ファンタジー
かつて王国の次期国王候補と期待されながらも、自ら王位を捨てた元王子レオン。彼は自由を求め、名もなき冒険者として歩み始める。しかし、貴族社会で培った知識と騎士団で鍛えた剣技は、新たな世界で否応なく彼を際立たせる。ギルドでの成長、仲間との出会い、そして迫り来る王国の影——。過去と向き合いながらも、自らの道を切り開くレオンの冒険譚が今、幕を開ける!
公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~
松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。
なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。
生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。
しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。
二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。
婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。
カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。
【本編完結】転生隠者の転生記録———怠惰?冒険?魔法?全ては、その心の赴くままに……
ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。
そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。
※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。
※残酷描写は保険です。
※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる