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第二章
冬のひと時
しおりを挟む最近、フランシス様が私の部屋に入り浸りである。
「マリアベル様といると 気持ちが安らぐんだ。なんだろう?この感じ。」
暖炉の前でゴロゴロしてお菓子食べて勉強して本を読んで、ミサンガ編んで••••
ウフフ、ウチの孫とおんなじね。
子供って本当に可愛い。
あら、私、今、子供だったのだわ。
イケナイ イケナイ
ガブリエルが提案した。
「フランシス様、運動したらどうかな?結構 筋は良いと思うぞ」
「以前は武道と剣を習っていたのですよ。
そう言えば、なんで辞めちゃったんだろう•••」
「ほら、私が履いているこのズボン。
これはマリアベル様が考案された物でな、可動域がここまであるのだ!」
ガブリエルが回し蹴りをする。
「スカートの下にズボン!スカートにスリットかぁ~、よく考えられたなぁ。」
「それに、暖かい。ノーザンコートではみなはいているぞ。寝る時は必ずズボンだ。
ねえ、お嬢様!」
ガブリエルが私のパジャマ兼ヨガのカンフーパンツを披露した。
「寝る時にズボンかぁ、私も欲しいなぁ。
冷えるとお腹痛くなるんですよ。
注文はどのお店でされているのですか?」
やったー$$$$ お金の匂いがして来たぞ!
「これは、私が型紙を引いたもの。よかったら作ってもらうわ。」
フランシス様、オーダーありがとうございます♪
ホクホク顔である。
「最近、殿下達大人しくですね。」
不気味な程突っかかって来ない。
「殿下達は生徒会所属だからそろそろ卒業パーティーの企画と専門選択で忙しいんじゃないのかなぁ~」
「専門選択とはなんですの?」
「一般教養が3年生まででもう一年は何か専門の事を学ぶカリキュラムなんです。
アルフレッド様は専門が魔術だから今、卒論で大変なようだよ。
そうだ、マリアベル様もウチのサークルに来るといい。攻撃魔法だけが魔法ではない。
現に、アルフレッド様は加護と魔術の関連について研究されているし、、、」
そうね、私のキラキラも解明されるかもしれないわね。
しかし、専門かぁ~、私 特技無いしなぁ
どうしょうかしら?
「無理して四年に進む事もないですよ。
三年で終わりにしてクラレンスにお帰りになればよろしいかと、、、
皆様お喜びになられますよ!」
ガブリエルが慰めてくれた。
まあ、先の話だから後から考えましょう。
気分転換にお菓子でも作りましょか。
何が食べたい?
「揚げパン!」
ガブリエルの一声で決まりね。
じゃあ、油鍋用意してね!
冷凍箱から揚げパン用の小さな丸パンを取り出す。
ガブリエルのために多量にストックしてあるのだ。
今日は3人なのでちょっと多めに作った。
揚げたてに砂糖を塗してサクサクのところを食べればみんな笑顔になる。
ふふふ、フランシス様お口の回りが砂糖だらけだわ。
「ああ、こういうのって凄く楽しい!
生前祖母が 領地でお菓子を作ってくれた時以来だ。
この楽しさが一生続くとよいなぁ•••
マリアベル様、長生きしてくださいね!」
フランシスはしみじみと思いを噛み締めていた。
寮母さんから呼び出しがきた。
「マリアベル嬢、お客様がいらしています。
ランディエール侯爵様ご本人ですよ。」
珍しいお客様だわ。
ガブリエル、一緒に行ってくれるかしら?
「お嬢様、お支度しましょうね。」
エプロンを外しワンピースを着替える。
そうだわ、折角だもの。揚げパンお裾分けしましょう。
袋に三つ程分けた。
フランシス様お留守お願いね!
私達は面会室へと向かった。
「マリアベル様、急にお呼びたてしてすまなかった。」
侯爵は頭を下げた。
ランディエールの小父様お一人とは お珍しいですわね。
どうなさいましたの?
「マリアベル様のお力を少し分けて欲しいのです。」
私の力ですか?
「実は、身内に具合が悪い者がおりまして、どんな薬も効かないのです。
お力をお貸し願えればと思いお願いにあがりました。」
本人がいないのに どうやっておまじない掛ければいいのかしら?
病気も、分からないし••••
侯爵はガラス瓶を取り出した。
「これは聖水が入っています。これに魔力を注いでもらえれば•••」
魔力を注ぐ?水に?
うーん、どうすればいいのかしら、
差し支えなければ、どんな御病気なのか教えてもらえませんか?
お相手のお年と性別も教えていただければイメージしやすいかも、、、
「16才の青年なのですが、お恥ずかしいながら•••
恋煩いでして、失恋したのですが 立ち直れず毎日を過ごしおります。
馬鹿馬鹿しいお願いでしょう。笑ってやって下さい。」
まぁ、それはお困りですわね。
私は微笑ましくなった。
そういえば、孫が失恋して部屋から出てこなくて•••、
ご飯も食べないし 毎日泣いて泣いて、
あの時はとても困ったわ!
私は瓶を抱えて子供をあやす様に呟いた。
「心が痛いのね、そうね、痛いわよね、
痛いの、痛いの、、、、、、
無理ね、失恋だから。時間が解決してくれますように。」
そう言いながら瓶をナデナデした。
ふぁっ と煌めきが瓶を包み込んだ。
そして、聖水の中には銀の粒子がキラキラと浮き沈みしていた。
「おお••• 素晴らしい!
マリアベル様、ありがとうございます。」
侯爵は目に涙を浮かべいた。
「初めてでしたので、上手く出来ているかは 分かりませんよ!
そうだわ、よろしかったらこれ、少しですがお土産にどうぞ。」
私は、揚げパンを渡した。
「先ほど私が作ったばかりです。暖かいうちにお召し上がり下さいね。
食べる時はお砂糖が溢れないように注意ですわよ!」
侯爵は 何度も何度もお礼を言ってくれた。
*************
ランディエール侯爵は馬車に戻ると、中には紫の髪の青年が腰をかけていた。
「ほら、辛かったらこれを飲め」
青年にキラキラとした聖水を渡した。
「これを食べていけ、
マリアベル様が、手ずから こしらえられたものだ。」
侯爵と青年は揚げパンを頬張った。
「ほお、ドーナツではなく、パンを揚げたものか?
サクサクとして食べやすいなぁ。
魔力水を作っていただけるかどうか、緊張してたから 甘い物が美味しく感じる!」侯爵は独り言のように話している。
青年は揚げパンを食べながら 涙をボロボロとこぼした。
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