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第二章

大人達の思惑 

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[呪いの会議]と称した定例集会。
今日は、トラビス王、ランディエール侯サミュエル、アルビス公テオドール、ノーザンコート伯チャールズ
の4人で開催された。

「なあ、マリアベルの選択だか正しい方向に向かっていると思わんか?」

「ランディエール子息とアルビス子息はもう、敵に回る事は無いでしょう。
あとはジェイコブ殿下ですが•••」

「それなのだか••••」
王は頭を悩ませた。

何を言っても全く聞く耳を持たない。

ジェイコブは、「マリアベルと結婚させる気だろう!」と言って聞かない。

ジェイコブとマリアベルは4等親、おまけにマリアベル自身は三等身の間の子供だ。
血が近すぎる。
結婚など出来るはずはなかろう。
王家では4等身までの結婚は禁止している。
(コーネリアとアーサーは例外中の例外だが)

何度も言って聞かせているが、何故かその考えに戻ってしまう。

[呪い]についても教えているが、魔族の仕業だとか、呪いは歴代王子の自業自得だとか、、、

話し合いにならない。
どうして、そんな考え方になってしまうのか?理解に苦しむ。

「卒業の断罪は殿下1人で行うのでしょうか?」

「スティーブンは絶対に加担しないと申しておりました。」アルビス公は断言した。

「うちの馬鹿は、絶対に大丈夫でしょう。
マリアベル様がNo!と言えばNoですから。」ランディエール侯も断言した。

「後は殿下 只お一人ですな。」

ジェイコブ1人でも••••
あれの魔力は膨大だ、
あれが雷魔法を発動させたら宮殿に穴が開く。
もし、そんな事になったら••••
卒業パーティーで、とち狂って魔法をぶっ放したら 死者が沢山出る。
大惨事だ、、、、

「マリアベルに、マリアになってもらって諌めてもらうのはどうだ?」
王は、苦肉の策で提案してみた。

「何をおっしゃっている!」
「ご自分の息子ではありませんか!」
「全くもって却下ですな!」

卒業まで後一年ある。
でも、あと一年しかない。

もしもの時に備えて、警護に土と木のバリアを張れる物を選別して配置するか•••

————
学園の卒業パーティーは、学園の大講堂で行われる四年生を送る会なのである。
生徒会三年生がメインで企画して四年生にチェックしてもらう、生徒会の引き継ぎイベントなのだ。
パーティーと言っても それ程大々的なものではない。
来賓も、卒業生の親族と教職員位である。

その後、全ての学園、学校の卒業生と合わせて王家主催のパーティーが宮殿で開かれる。
————-

「卒業式の日は、王が早くから会場入りして目を光らせておけばよろしいのでは•••」
ノーザンコート伯の提案に

「そうしたら、生徒が萎縮してしまうだろう。折角のパーティーなのに、」
王が答える

「でも、断罪が行われ 被害が出るよりましでしょう!
マリアベル様の生死に関わるのですよ!彼女を失ってはなりません。」
ランディエール侯は机を叩いて力説した。

「マリアベルを失いたくないのは私とて同じだ、、、」
王は項垂れて頭を抱えた。

__________

「しかし、マリアベル様に神託があるとして広めてもよかったのでしょうか?」

「あの輝き、もう マリアベルの気質を隠しおおせないであろう。
マリアベルを守る為にも何か理由付けしなければ、王家総出で守っているという大義名分が欲しかったのだ。」

「それで、神託を利用ですかぁ。」

「やはり、銀と金はコーネリア様とアーサー様、父と母の 加護でしたのでしょう。」

「しかし、マリアベルが見た女神とは?」

「コーネリアという[銀の器]に女神が降りられと考えられませんか?」

「そして、本当に アーサー様は太陽王の眷属だとしたら?」

「だとしたら、、、マリアベルは月の女神と太陽王の娘という事になる。」

「そこまで壮大な話になると、ちょっと荒唐無稽な感じがしますが••• 確かに、時々輝きはしますが、、、
マリアベルは、する事は 存外俗っぽくて 人間味溢れてますよ。金儲けは大好きですし。」
ノーザンコート伯爵はクスッと笑ってしまった。

「そうだよなぁ、コーネリア様の方が浮世離れしておいでだったよな。
マリアベル様は現実味がある。100歳まで生きそうな感じがする。」

「確かになぁ•••
ちょっとボケておられるが、基本しっかり者だ!」
テオドールはふと、亡くなられたかの姫を思い出し 懐かしく思った。

「あっ、そうそう、新作のクッキー、カカオ味と塩味 ご賞味あれ!」
ノーザンコート伯が包みを広げた。

「カカオ味?と塩味?」

「カカオとはあの、苦い、不味い、薬の?」

「この、焦げているような物がカカオクッキー?」

「取り敢えず、塩味からどうぞ。」

うんッ、クッキーに塩味がある。
甘いのに、塩? 塩の粒かぁ!
不思議な感じだが••• 甘く無いのに甘味が引き立つ、、、
合う、すごく合う、

では、カカオ味もお試し下さい。
さあさあ、そう怖がらずに、、、

うんッ *****
甘さの中にほろ苦いカカオの味が、、
なんだ、この味は、、、
高級感が漂う、素晴らしい!

カカオは来年よりウッドフィールド領にて大々的に生産を開始する手筈を話あっております。

「しかし、チャールズ殿、儲け過ぎではありませんかな!」

「マリアベルが考案した物は、マリアベルの資産としております。
マリアベルは結婚しないと申しておりますので•••」

ええーー、何故???

「マリアベル様には御結婚のご意志が無いのか?それは幼少期のご苦労からか?」

「いや、そうではなく
  “結婚に夢見る年ではない” とか、なんとか、、、」

「いやいや、まだ14歳であろう、、
これから花の盛りを迎える娘がなんと寂しい事を仰るのか。」

「最近は領民の事を思いやり、介護が必要な老人を集め 面倒を見る施設を作ると申しております。

“仕事に出たいが 介護老人がいる為に家から出る事が出来ない女性が沢山います。
だったらその間だけでも 老人を預かる施設を作れば良いと思いませんか?”

そう、言っておりました。」

「実に素晴らしい考えだ。思いもつかなかったよ。
朝預けて夜迎えに来てもらえば、農繁期の農民には大助かりだな。」

「 マリアベル曰く

“これは、採算度外しです。領主がすべき事だと思います。”

あの娘は、そう 言い切った!!!
そして、この制度を広げていきたいので、登録の権利は放棄すると言っておりました。」

「では、我が領がモデルケースになろう。
ぶどうの収穫、ワインの仕込み、とにかく人手が欲しい、その話 一緒に進めさせてくれぬか?」

ランディエール侯が手を取ってくれた。


















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