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第二章
マリアベル 卒業する 2
しおりを挟むパーティーも終わりに近づいていた。
ラストダンスに備えて身嗜みを整えに控え室に向かう生徒がチラホラと見受けられた。
ラストダンスは誰と踊っても良い。
女性と女性、尊敬する先生とでもよし、
以前、四年間 馬の世話になった馬番の方と踊った男生徒もいた。
ラストダンスは感謝を込めてのダンス
作法も関係ない。
学園最後のダンスなのだ。
私は婚約者が間に合わなかったのでソフィアと踊る事にした。
フロアが暗くなり静かな音楽が流れてきた。
「ソフィア様ごめんなさい。私につきあわせてしまって•••」
私より背の高いソフィアが目を細めて言った
「わたくし、貴方と出会って本当によかった。貴方は、かけがえのない わたくしの友よ!だから貴方とラストダンスを踊るのはわたくしも本望なの。」
まるでソフィアから愛の告白を受けたように感じ顔が赤くなった。
その時だった。
私達の脇に高低差のある男性カップルが近づいて来た。
一瞬の出来事だった。
私の手がソフィアから離れ男性に引き渡された。
その瞬間、観客席から大きな拍手と「キャー!!!」という黄色い声が上がった
えっ!!! 誰???
見上げる程の高い背、大きくてゴツゴツとした手。
私はこの手を知っている。
懐かしいあの人、私の婚約者様
「姫、遅くなりました。ウーラノス•ドゥラークただ今 参上いたしました 」
久々に見た婚約者様は少し痩せて、肌も褐色に色付いていた。
「来ていただけて、とても嬉しいです」
私は、彼の目を見て微笑んだ。
ウーラノス様は、、、あれ、目を逸らした?
気のせいか?
「姫は背が伸びたのですね。」
「ええ、160㎝にギリギリ届きました。」
「そうですか•••」
なんだか、会話が続かない。
ウーラノス様ともダンスの距離があるような•••
ウーラノス様のダンス、カクカクとしてロボットぽい
うーん??? なんだろ?
ソフィア様のお相手はアルフレッド様だった。
目が合った彼女は、悪戯が成功したような顔をしてウインクした。
私達は黙ったまま、ギクシャクとした中でラストダンスを終えた。
フロアが明るくなった。
拍手がおこる パーティーの終了である。
私はウーラノス様より、父に引き渡された
ちらっとウーラノス様を見るが•••
なんだかモヤモヤする。
卒業パーティーは無事何も無く終了し、私達はお互いのタウンハウスへと帰って行った
**************
卒業はしたものの、魔導車にはまだまだ多くの課題が残されていた。
パーティーの次の日、私は学園に向かった。
「マリアベル様、四輪だと馬力が不足ですよねぇ、やはり魔石を増やした方がいいんじゃないですか?」
後輩はそう言うが魔石は非常に高い。
今回、私は四輪を諦めて三輪魔導車を作ったのだった。
「取り敢えず、四輪で完成させてみましょう、コストは後から考えればよいわ
問題は回路の簡素化よね!」
そこにはロジャー殿下もいた。
「私が卒業するまで、絶対に作ってみせますよ!」
「期待してるわよ!」
激励して研究室を後にした。
なんだか邸に帰りたくない。
今夜はウーラノス様を交えての夕食会をするのだ。
昨日の事があってかなんだか気が重い。
帰り際に女生徒に囲まれた。
「マリアベル様、昨日はとても綺麗でしたわ!」
「お噂の婚約者様、初めて拝見したしましたわぁ~、[夜の王]大人の魅力ですわね」
「マリアベル様をお守りする為に選ばれたとお聞きしました。素敵ですわぁ」
なんだかんだでウーラノス様は人気がある。
男からもモテ、女からもモテる。
巷では、独身最後の砦と言われ、攻略する女性は誰か?と噂されていた程だ。
女生徒達と別れ、帰りの馬車のなかで考えた。
私の中身はおばあちゃんだけど、実際のマリアベルは、まだまだ少女。
ウーラノス様は大人の女性と浮名を流しておられるから、少女の私との婚約が負担になってしまったのかも?
きっと、以前の私は子供っぽかったから、保護者気分だったのね!
お肉も切ってくれてたし•••
そうね、婚約解消を申し出たほうがいいのかも知れないわ。
ジェイコブ様も臣下に下った事だし、王命も関係無くなるわよね。
私を守る為だけの婚約だなんて•••
そんなの、お互いが不幸になるだけだわ。
うん、それがいいわ、そうしましょう。
***************
ウーラノス様をお迎えしての夕食会。
ウーラノス様はやはり私を見てくれない。
目が合うとそらされる。
もう、ここまでくると嫌われているのかと思ってしまう。
食後にみんながお酒を飲み始めた頃に婚約解消を申し出てみよう。
きっとお父様は、味方についてくれるわね。
食後、男性陣は談話室へと場所を変えた。
私は、部屋に入るタイミングを探っていた。
「マリアベル、入って来なさい」
祖父に呼ばれて入室し、そこで爆弾が投下された。
「お前の結婚が決まった。半年先の10月がよいだろう。寒くなる前に済ましておきたいのでな!」
えっ、結婚?
思わずウーラノス様を見た、目が合った途端、彼は下を向いた。
以前はあんなに優しかったのに、
いつも話しかけて下さって、腕に乗せてくださって、、、、
何処へ行くにも一緒だったのに•••
私、嫌われちゃったんだ
でも、私を守る為に無理して結婚するんだ
これが貴族なんだ•••
「はい、わかりました」
震える声で返事をする。震える足で部屋を出る。
どうやって部屋に帰ったかも覚えていない。
その夜、私は泣きながら眠りについた
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