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第五章 どうしようもなく、好きな人。
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しおりを挟む舌が首筋を滑り、啄ばむ。零れそうな吐息を手の平で抑えて、搔き乱されていく理性を必死で繋ぎ止める。お願いだから、私の女を引き出さないで。
「こっち、向いて」
掠れた甘い声でさえいやらしくて、熱い舌は肩を這って行く。首元に回されている手が私の頬を掴み、見つめ合えるように優しく催促する指先に首を回されていく。至近距離で目が合って、その瞳の熱さに消えかけている理性で下唇を噛みしめた。はしたなく口を開けてしまいそうで。今、私はどんな顔を・・・。
「ふ、あぁ・・・っ」
必死に抵抗したって、匠くんの手にかかればいともたやすく打ち砕かれてしまう心。齧り付く様なキスに、こっそりとお湯の中で太ももに爪を立てながら耐える。歯茎をなぞるように動く舌に、肩が歓喜に震えて止まらない。多く交わしたわけではないはずの深いキスなのに、匠くんは私の弱い所を全て知り尽くしているかのように動く。
「だっ、め」
「___はあ、っ、黙って」
顎を抑えられてしまったらもう逃げられなくて、快感に震える身体は自然と匠くんに縋りついていた。唇の隙間から漏れるはっはと荒い息遣いが、更に興奮を促してくる。ちゃぷんと水音が聞こえ、次の瞬間には全身を抱き締められていた。そのまま湯船に浸かった匠くんの濡れた服に当たる素肌が熱くて、いやらしく跨る体勢で匠くんのキスを求めている。肩甲骨と腰を撫でる匠くんの手の平が気持ち良い。こんなことだめってわかっているのに、止められなかった。
冷たくなった背中も全て抱き寄せられて、長いキスが終わった。濡れた口元はまだ荒い息を吐いていて、恥ずかしくて匠くんの肩口に顔を埋める。更に強く抱き締められて、自惚れてしまいそう。このキスは私に向けたもの。沙也加さんじゃなくて、私と交わしたものだ。熱く野獣みたいなキスに、「何か意味がありますか?」なんて聞けないけれど。
「入っちゃったね。一緒にお風呂」
「___これはノーカウント」
「無かったことにするの?」
「馬鹿」
くすくすと耳元で柔らかく笑う声が聞こえて、もうそれですら私の心拍を跳ね上げる。無邪気に笑うな。もっと・・・好きになってしまうじゃない。
「柔らかいね」
「やわ・・・っ?! はなっ、離れて!」
柔らかいの意味が胸だと気付いて、慌てて匠くんの胸板を押し返す。それはもちろんビクともしなくて。
「ははは。離れていいの? 全部見えちゃうけど」
「___はな、れないで」
「良い子」
悔しい。翻弄されっぱなしなの。ドキドキさせられっぱなし。匠くんの心は、今、どんなリズムを刻んでいますか?
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