【完】お兄ちゃんは私を甘く戴く

Bu-cha

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日曜日、午後・・・



「光一は?」



お母さんがお兄ちゃんの家の鍵を開け、入ってきて早々に聞いてきた。



「今日は仕事で来られないって前に言ってたよ?」



私は答えながら真理姉と2人でお茶の準備をしていく。



「・・・絶対に来てって言ったのに。」



お母さんが怒った様子でスマホを取り出し、耳に当ててお兄ちゃんに電話をしているようだった。



「出ない?」



「出ない!!・・・まったく!!」



「この前、お兄ちゃんから“結果だけ教えて”って言われてる!」



早く話を聞きたくて、私はお茶を急いでダイニングテーブルの上に置いていく。
そして、ダイニングテーブルの横にカメラをセットした。




「豊は?豊はいるの?」



お母さんが今度はお兄ちゃんのことを気にしだして、そう聞いてきた。



「今呼んでくる!!」



私はお兄ちゃんの部屋へと小走りで向かい、ノックもなしに部屋のドアを開けた。



「お兄ちゃん!!
お母さんとお兄ちゃんのお父さん来たよ!!」



「うん・・・。」



机の椅子に座っているお兄ちゃんの背中から、小さい返事が聞こえた。



でも、全然動かなくて・・・。



「お兄ちゃん!!早く!!」



私がそう叫ぶと、お兄ちゃんはやっと立ち上がった。
ゆっくりと・・・立ち上がった・・・。



珍しく下を向きながら、ドアの所に立っている私の元まで歩き・・・



右手を差し出してきた・・・。



右手を・・・



手の平を上にして・・・。



その手の平にある物を見て、私はビックリした。



だって、そこにあったのは鉛筆だったから・・・。



赤い、鉛筆・・・。



小さな小さな、赤い鉛筆・・・。



昔・・・



私がお兄ちゃんに託した、赤い鉛筆・・・。
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