【完】お兄ちゃんは私を甘く戴く

Bu-cha

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5歳、5月・・・。



「理子!!!正座してろ!!!」



白いゴワゴワとした空手着という全然可愛くない格好をさせられ、白い帯を締めた理子を今日も妖怪が走って追いかけてくる。



「イ"~ヤ"~~~っっっ!!!」



理子は泣きながら、鼻水もグジャグジャにしながら、空手道場という場所で今日も逃げ回る・・・。



妖怪から、逃げ回る・・・。



でも・・・すぐに捕まり、片手で抱えられて・・・



「お"に"い"ち"ゃ~ん"・・・!!!」



お兄ちゃんに助けを求めるけど、お兄ちゃんは自分より身体の大きな男の子達と取っ組み合いの喧嘩をしている。



「光一!!!空手で喧嘩するな!!!」



妖怪がまたそう怒鳴り、理子を空手道場の隅に座らせようとしてくる。



「理子!!!正座してジッとしてるんだよ!!!」



「イ"ヤ"だ・・・!!!
足痛い・・・!!可愛くない・・・!!!」



「足が痛くても可愛くなくても、正座して整えろ!!!
そのぐちゃぐちゃになって何かよく見えなくなった精神を整えろ!!!」



妖怪が今日もそんな意味の分からないことを言ってくる。
それに理子は涙も鼻水も垂らしながら妖怪を睨み付ける。



そして、口を大きく開けた。



「あんたが死ねば良かったのに・・・!!
妖怪ハゲじじい・・・!!!」



髪の毛も眉毛もない、毛根というのもない、ツルッツルの頭をしている妖怪・・・。
お母さんのお父さんで、理子のおじいちゃんだという人に今日もそう叫ぶ。



「俺をハゲって言ったな・・・?」



“あんたが死ねば良かったのに”
ではなく、いつも“ハゲ”の方に反応する妖怪が今日も怒りまくっている顔をして・・・



理子の身体を軽々と持ち上げ・・・



「イ"~ヤ"~~~~っっっ!!!」



空手道場の隅に重ねてあるマットの上に思いっきり放り投げられた・・・。



「じいちゃん、すっげー!!!!
俺にもやって!!!!」



妹が妖怪からこんなことをされているのに、お兄ちゃんの喜ぶ声だけが今日も聞こえてきた。
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