【完】お兄ちゃんは私を甘く戴く

Bu-cha

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そう言われ、それには自分でも驚いた。
こんなに喋れている自分に驚いた。



「私の話しもちゃんと聞けるし、普段は何で喋れないんだろう?」



「普段は・・・面接官の言葉も・・・よく聞こえないことが多くて・・・。
聞こえたとしても・・・上手く、喋れません・・・。」



「私の言葉は聞こえてるんだ!!
結構声大きいからかな!?」



そんなことを言いながら、白いクマのボールペンを僕の方に向けてきた。



そして・・・



「ガンガンいけばいいだけだよ!!
ガンガン聞いて、ガンガン喋ればいいだけだよ!!」



そんなアドバイスには笑うしかない・・・。



「それで面接に通らなくても、私がまたガンガン他の会社に紹介するから!!
就職した後に退職することになっても、私がまたガンガン紹介するから!!
こんな良い子を選ばない会社に未来なんてないから!!
そんな良い子に退職される会社に未来なんてないから!!」



僕は白いクマのボールペンを見た後に、柳川さんの方をまた見る・・・。



そんな僕に柳川さんは笑った・・・。



「この世界は厳しいよね、私も知ってる!!
私はずっとこの世界で生きてこなかったから、私も知ってる!!
でも、村人の声がアドバイスになるのはこの世界でも一緒!!」



「村人の、声・・・?」



「そう!!村人って冒険には欠かせない存在だからね!?
村人の声をガンガン聞かないと勿体ないから!!
歩き回って、沢山歩き回って、レベルアップして、レベルアップしまくって、村人の声をガンガン集めて冒険していくの!!」



「冒険ですか・・・。
それは・・・少し、楽しそうですね・・・。」



僕は今まで“楽しい”と思ったことはそんなになくて。
りーちゃんや鮫島君と話している時以外で、そんなことを思ったことはそんなになくて・・・。



“村人の声”・・・。



それの声が冒険には欠かせないことは僕は知っていた・・・。



“お母さんのノート”を作る時に、僕はそれを知っていた・・・。



僕のお母さんの時も、りーちゃんのお母さんの時も、僕は“村人”にガンガン声を掛けていた・・・。



ガンガン声を聞いていた・・・。



聞けていた・・・。



僕はちゃんと、声を聞けていた・・・。



追い求めていれば、聞けていた・・・。



喋れていた・・・。



白いクマのボールペンを僕の方に向け続けていた柳川さんが、いつの間にか立ち上がっている・・・。



「行くよ、冒険に!!
ガンガンレベルアップしていくよ!!」



この翌日から、柳川さんによる僕の喋りのレベルアップ指導が始まった・・・。
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