【完】お兄ちゃんは私を甘く戴く

Bu-cha

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桃子さんはそう言って、真剣な顔で僕を見詰める。



「私の言葉もよく聞こえるようになったんだね、良かった。」



「うん・・・。」



「何度か豊にこの話してるけどね。」



「え・・・。」



驚く僕に桃子さんは大きく笑った。



「最近私も全然家に帰れてなかったからね。
豊がこんなに急成長してたなんて知らなかった!!
理子ともあんまり喋れてなかったしね。」



桃子さんが安心したように笑ってから、お茶を一口飲んだ。



お茶を、飲み込んだ・・・。



その姿を見詰めがら次の言葉を待った。



「“かぞく”が1番なのは私も分かる。」



お茶を飲み込んだ後に言葉を出した桃子さん。



「“彼氏”なんていう不安定な存在より、“かぞく”が1番強く繋がっていられると思うのは私も分かる。」



そう言われ、僕は頷く。



「理子は“お兄ちゃん”と“妹”で結婚がしたいの。
“かぞく”は理子にとって特別だから。
彼氏なんかよりもずっと特別だから。」



「それは、桃子さんにとっても・・・?」



今は僕しか聞ける人がいないので、ガンガン聞く。
リビングにセットしてあるりーちゃんのカメラを少し確認した後に、また桃子さんの方を見た。



僕からそんなことを聞かれると思わなかったのか、桃子さんは驚いた顔をしている。



そんな桃子さんを見詰めながらガンガン聞いた。



「“他の男”よりも、“かぞく”が1番?
特別に好き?」



「豊・・・?」



お姉ちゃんが僕の名前を呼ぶ。
それでも、僕は続ける。



「桃子さんに“本当の家族”はいない。
1人もいない。
いるのは、血も繋がっていない、戸籍上も無関係のない“かぞく”だけ。」



「・・・そうだね。」



「桃子さんは逃げてるの?
りーちゃんが言う通り、恋愛するのを逃げてるの?」



僕が聞くと、桃子さんは困ったように笑った。



そして、言った・・・。



「逃げるもなにも、私には“お母さん”の顔しかないからね。
この世界で生き延びるに、“お母さん”の顔しかないから。
“お母さん”の顔を理子と光一が与えてくれたの。
“お母さん”の顔がなければ、私はどんな顔をして生きていけばいいのか分からない。」



いつか聞いたその言葉を、桃子さんがまた言う。
それに頷きながらまた聞く。



「それは、“お母さん”以外の顔を貰えれば恋愛出来る可能性があるってことだよね?」



そう聞いた僕に、桃子さんは困った顔で首を横に振った。



「私は恋愛なんてしないよ。
光一と桃子が幸せになるのを見守るのが“お母さん”の役目だから。」



「でも、桃子さんが恋愛をしないと得られない幸せもあるから。」



そう言ってから、僕はリビングにセットしてあるカメラを手に持った。
そして・・・そのカメラをお父さんの方に向ける。



「お父さん、お母さん以外の人を好きにならないんだよね?」



そう聞いた僕に、お父さんは物凄く驚いた顔をし続けたまま何度も頷いていた。
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