うまく笑えない君へと捧ぐ

西友

文字の大きさ
13 / 45
第一章

13

しおりを挟む
 残念ながら、夕方から用事があるという白沢に、駅まで送ると言い張る彰太。「ありがとう」と白沢はお礼を言い、二人はもときた道を歩いていた。

 白沢の右手をチラチラ見る彰太に、白沢は笑いながら「繋ぐ?」と、手を差し出してくれたけど。彰太は誘惑に負け、手を伸ばしたかけたけど。何とか理性で止めた。

「人の目があるから、我慢する」

 白沢は嬉しそうに「可愛いなあ」と言ってくれた。面倒だな。そう思われないことに、ほっとした。きっと、白沢にフラれるまで、こういった不安は付きまとうのだろう。

(でも、いいや。今が幸せなら)

 くふふ。
 嬉しさをおさえられない彰太。そこに、駅から瑠花と連れだって現れた琉太が声をかけてきた。

「彰太? お前、こんなところで何を」
 
 琉太は、はっとした。隣にいる瑠花も目を丸くした。彰太の隣に並ぶイケメンは誰だ。そんじゃそこらにいるレベルではない。オーラが違う。

 ──か、顔がいい。顔が小さい。足、なっが。

(彰太も顔は整ってるけど、どう考えてもカワイイ系だからな)

 何だかんだ言いつつ、ブラコンな琉太。

「琉兄、瑠花さん」

「しょ、彰太。こちらの方は」

 彰太は何故か誇らしげに「クラスメイトの、白沢!」と胸を張った。琉太は衝撃を受けた。白沢って、あの白沢かと。

 白沢はモデルなので、何度も雑誌にはのっている。けれど彰太は、一度も白沢がのっている雑誌を買ったことはない。部屋にあるのを、母に、父に。友達に見付かったら。どうしてこれを買ったのか理由を求められたら。それが怖くて、買えないのだと言っていた。

 やっと白沢の写真をゲットした。そう彰太が自慢してきたときも「見たい? 見たい?」とのやり取りのすえ、「おれだけの白沢だから、見せるのやーめた」という理由から、結局、琉太は白沢の顔を知らなかった。

 ──引くほどのイケメンだな。

 ちらっと隣を見れば、瑠花がうっとりとしていた。無理もない。無理もないが、琉太はむっとした。だが。

「白沢。これ、おれの兄の琉太。そんで、隣にいるのが琉兄の彼女の、瑠花さん」

 彰太が、彼女、というところを強調したのは気のせいだろうか。琉太が改めて前を向くと、白沢は「そうなんだ」と応えていた。

「はじめまして、白沢です。いつも弟さんにはお世話になっています」

 綺麗すぎる微笑みに、琉太でさえ顔が赤くなる。瑠花など、眩しすぎて直視出来ないのか、視線をキョロキョロとさ迷わせている。

「すみません。この後用事があるので、失礼します。それじゃ、多比良。またね」

 手をふり、去っていく様さえ絵になる。彰太は手を振り返しながら、琉太に視線を向け、ふふんとドヤ顔をした。

(……何だ? 言ってた通りのイケメンだろ、のドヤ顔か?)

 琉太がその理由を知るのは、数時間後のこと。



 すっかりと日も暮れ、あたりが暗い紫へと染まる時刻。両親と、新年の挨拶にきた瑠花。そして兄と共に食卓を囲む彰太。その表情は、異常なぐらいニコニコしている。

「しょうちゃん、何か良いことあった?」

 母が尋ねる。彰太は「んー?」と言うだけで、笑って答えない。父が「ま、まさか彼女が出来たんじゃないだろうな?!」と顔を青ざめる。

 とたんに彰太は、すみませんと瞬時に顔を曇らせた。何事かと慌てる母と瑠花。琉太は「父さん。ちょっと黙ってて」と目を尖らせた。父はしゅんと落ち込んだ。


 瑠花を駅まで送り、家に帰宅した琉太。予感はしていたが、琉太が自室のドアを開けるなり「琉兄、聴いて!」と目を輝かせた彰太が中から飛び出してきた。

 正直。マジか、と琉太は思った。祝福したい気持ちはもちろんあったが、実際に白沢の顔面偏差値の高さを目の当たりにしてすぐだったこともあり、騙されているのではないかという不安の方が大きく、心配にもなった。高いツボでも買わされやしないだろうかと。

「良かったな。これからも、ちゃんと話しは聴くから。何でも隠さずに、兄ちゃんには話せよ」

「ありがとう、琉兄」

 あまりに幸せそうな弟の笑顔に、琉太は言いたいことをぐっと呑み込んだ。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

消えない思い

樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。 高校3年生 矢野浩二 α 高校3年生 佐々木裕也 α 高校1年生 赤城要 Ω 赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。 自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。 そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。 でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。 彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。 そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。

三ヶ月だけの恋人

perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。 殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。 しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。 罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。 それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

君に二度、恋をした。

春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。 あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。 ――もう二度と会うこともないと思っていたのに。 大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。 変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。 「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」 初恋、すれ違い、再会、そして執着。 “好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか―― すれ違い×再会×俺様攻め 十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。

処理中です...