うまく笑えない君へと捧ぐ

西友

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第三章

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「えーっと。良ければ何か作ろうか?」

「でも、疲れてるんじゃ」

「疲れてるどころか、こんなに頭がすっきりしてるの、はじめてかも」

 立ち上がって伸びをする。こんなに晴れ晴れとした気持ちはいつ以来だろう。

「あ、じゃあ。お風呂に入る? その間に買い物してくるから」

「大丈夫だよ。昔から、冷蔵庫にあるもので作るのは得意だったから」

 彰太は「いや、でも」と、じりじりと冷蔵庫に近付いていき、彰太より少し低い高さのそれを背後に隠した。一翔はぴんときて、彰太に近付き、両腕を広げた。

「おいで、彰太」

 ぱあ。
 昔と変わらないわかりやすさで、彰太が腕の中におさまる。それを嬉しく思いながらも一翔は左腕はそのままで、右手で冷蔵庫のドアを開けた。あ、という彰太の声が聞こえた。

 冷蔵庫の中はがらんとしていて、あるのは牛乳と食パン。バターのみ。下の冷凍庫に入っているのは、ほぼアイス。

「……彰太」

 一翔に何とも言えない双眸を向けられ、彰太がさっと目を逸らす。両親や兄、果ては瑠花にまで同じ目を向けられ続けている彰太。数ヶ月に一度、連絡もなしに訪れる家族たち。その度に部屋は片付けられ、冷蔵庫は作り置きの山になるのだが、すぐに元に戻るの繰り返し。

「し、仕事が忙しくて」

 しどろもどろの言い訳に、一翔は堪えきれずに笑ってしまった。泣きたくなるぐらい、彰太は彰太のままだったから。

「──これからは、俺が作るよ。部屋も片付けてあげる。家事は得意なんだ」

 もう何年も、忘れていたけれど。
 一度ぎゅっと抱き締めてから、一翔は彰太と真正面から向かい合った。

「貯金は全部、元妻と親にあげてきたから、一文無しなんだ。住むところもない無職の俺だけど、それでもいいかな」

 彰太の頬が、にまっと緩む。

「頼れるのは、おれだけってこと?」

「そうだね」

「それって、おれなしじゃ生きれないってことだよね?」

「うん」

 ふふ。
 彰太は笑って、一翔に抱き付いた。

「仕方ないなあ。おれが一翔を一生養ってあげるよ。だから一翔は主夫だね」

「……落ち着いたら、仕事は探すよ?」

 彰太は「探さなくていい。おれが養うから」と、抱き付く力を強くする。

「……それはさすがに男として」

「いいの!」

 一翔はどこか嬉しそうに息を吐くと「彰太。キスしようか」と呟いた。一翔の胸に額を擦り付けていた彰太は耳をぴくんと動かし、顔を上げた。

 そのとき。

 チャイム音が、部屋に響いた。
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