うまく笑えない君へと捧ぐ

西友

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第三章

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 琉太は目を見張り──それから、小さく笑った。

「そんな辛そうに顔を歪めても、イケメンは絵になるんだな」

「俺は真剣に話してます。彰太がよくても、彰太の家族が俺をどうしても認めてくれないのなら、傍にはいられない。その覚悟はしてきたつもりです。彰太には」

 一翔は双眸を僅かに潤ませ、震える声音で告げた。

「絶対に、家族をなくしてほしくないから」

 琉太は「……そうか」と、口元を緩ませながら呟いた。

「お前の人となりは、彰太を通して、オレなりに見てきたつもりだったが」

「……はい」

「実際にこうして会話してみて、安心したよ。弟の見る目は確かだったってな。これで黙されたんなら、もう仕方ねーな」

 一翔が眉を寄せる。

「……そんな簡単な話しでは」

「お前の親は関係ない。まして血なんて見えない曖昧なものなんてどうでもいいんだよ。大事なのは、お前がどういう奴かだ」

 それに。と、琉太は続けた。

「オレが認めないと言って、お前を追い出したりしてみろ。彰太は一生オレを許さないだろうし、二度と口をきいてくれなくなるに決まってる。そんなのはごめんだ」

 一翔は否定出来ず「本当に、兄弟仲がいいんですね」と何やらほっこりした。琉太は気まずそうに「いや、まあ」と頭を掻いた。それから少しして、言い辛そうに顔を背けた。

「……お前にフラれたとき、あいつ、こう言ったんだ。恋愛をするのはこれで最後だから、もう泣かないって」

 一翔が声を詰まらすのがわかったが、琉太は続けた。彰太にとっての恋愛の重さを、知っておいてほしいと思ったから。例えそれが、余計なお世話だとわかっていても。

「何かそれ聞いて……堪らなくなって。こっちが泣きそうになったよ。それからのあいつは、全力で笑うことも、全身で幸せを表すこともしなくなってさ。だからお前ともう一度付き合うことになって、素直に嬉しいんだ。──けどなあ。まあ、ここで話しは戻るんだが」

 ショックを受けているのが傍目にもわかる一翔が「……はい」と答える。

「あのな。責めたいわけじゃないんだ。お前が親のせいで大変な目に合ったことは聞いてる。彰太と別れたのも、巻き込みたくなかったからなんだろ?」

「でも……」

「誰がどう聞いても、まともな奴ならわかるよ。悪いのはお前の親だってな。泣かせたのは事実だし、せめて事情ぐらい話してやってほしかった気持ちはあるが……あいつはお前を好き過ぎて、何をするか想像出来ないからな。それも怖かったんじゃないのか? ま、これはオレの想像だけどな。とにかくだ。オレが聞きたいのは過去のことじゃなくて、未来のことだよ」

 一翔が頭に疑問符を浮かべる。琉太は「あー」と一呼吸置いてから腕を組んだ。

「彰太の話しでは、あいつとは違って、お前はゲイではなかったんだろ? 正直、オレはゲイではないから本当の意味であいつのことは理解してやれない。でもだからこそ不安になる。お前は男であるあいつのこと、本当に恋愛対象として見れんのか?」

 一翔は「それは、もちろん」と頷いた。それは、彰太に告白する前にさんざん悩んだことだったから。正直、今さらだとも思い、何が引っ掛かっているのかわからなかったのだが。

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