37 / 45
第三章
7
しおりを挟む
「本当か? でもお前ら……プライベート過ぎることを聞いて申し訳ないが、三年も付き合ってて、一度もヤッてないんだろ?」
「あー……」
琉太の言わんとすることを察した一翔は、どう伝えたものかとしばし思案してから「高校のとき、琉太さんの協力で、一度彰太の家に泊まったことがあったのを覚えてますか?」と訊ねた。
「もちろん。帰ったあと、ものすげー惚気聞かされたからな」
「……鼻血のことは?」
「鼻血?」
キョトンとする琉太に、やっぱりあのことは言ってなかったんだなと察した。
「名前を呼び合おうとしたとき、少し顔を近付けたんです。そしたら、彰太が鼻血を出してしまって」
全くの初耳だった琉太は「……は?」と固まった。
「お風呂から上がって、ちゃんと上下にスウェット着てたときも『エロいっ』って言って顔を赤くしていたし」
「…………えー」
確かそのとき、彰太は高二だった。それでその純情っぷりとは。そっち方面はうといとは思ってはいたが、想像以上だった。
「俺が考えるよりも、今まであったどの人よりも、彰太は純粋なんだろうなって思って。そのときに決めたんです。焦らず、ゆっくり時間をかけようと。大学生になってからも、何度かそういう雰囲気にはなったんですが──赤くなったまま固まってしまったり、鼻血が止まらなくなってしまったりして」
一翔の真剣な表情に、琉太は「何か……ごめんな」と頭を抱えた。イケメンくんは思うよりずっと、めちゃくちゃ真面目で、優しい奴だった。
「いえ、とんでもない。そんな彰太だから、俺は好きになったんです。というか、彰太は本当に何でも琉太さんに話していたんですね」
「……まあ、オレしか話せる奴がいなかったからな。でも、あれだな。一方の話しだけを聞くのはよくないって実感したわ。名前呼びで顔近付けただけで鼻血出したり、スウェット着てる相手を見ただけで顔赤くする奴、おいそれと手は出せないよなあ。──めんどくさい弟で、ほんとすまん」
琉太が深々と頭を下げる。一翔が「頭を上げて下さい」と焦る。それでも琉太は頭を上げず。
「──弟を、どうかよろしく」
真剣な声音に、一翔は口元を緩め「はい。こちらこそ」と返答した。そして。
「家事も任せて下さい。小さいころからやってきたのでわりと得意なんです。食事も……さすがにコンビニ食とお菓子ばかりだと身体に悪いと思うので、俺が」
琉太はがばっと勢いよく面を上げ「──これからも末長く弟をよろしくお願いします」と、がしっと一翔の手を握った。はい。一翔が答えたところで、息をきらせた彰太が帰ってきた。両手に複数のレジ袋を下げて。
「食べ物買ってきたよ! 一翔はちゃんといる?!」
一直線に一翔の元へと向かい、彰太が飛び付く。一翔はそんな彰太を受け止め「走ってきてくれたの?」と、汗で額に張り付いた前髪に触れた。
「何か途中で不安になってきて。帰って一翔がいなくなってたらどうしようって」
一翔と琉太は、同時に目を見張った。
『彰太がよくても、彰太の家族が俺をどうしても認めてくれないのなら、傍にはいられない。その覚悟はしてきたつもりです』
二人の脳裏に同時に過ったのは、つい先ほど一翔が告げた科白だった。
「──黙っていなくなったりしないよ。それだけは、絶対だから」
一翔は目を細め、彰太を強く抱き締めた。ほっと息をつく彰太。それを何とも言えない気分で見詰めていた琉太は「ちょっといいか」と、控えめに口を挟んだ。
「あー……」
琉太の言わんとすることを察した一翔は、どう伝えたものかとしばし思案してから「高校のとき、琉太さんの協力で、一度彰太の家に泊まったことがあったのを覚えてますか?」と訊ねた。
「もちろん。帰ったあと、ものすげー惚気聞かされたからな」
「……鼻血のことは?」
「鼻血?」
キョトンとする琉太に、やっぱりあのことは言ってなかったんだなと察した。
「名前を呼び合おうとしたとき、少し顔を近付けたんです。そしたら、彰太が鼻血を出してしまって」
全くの初耳だった琉太は「……は?」と固まった。
「お風呂から上がって、ちゃんと上下にスウェット着てたときも『エロいっ』って言って顔を赤くしていたし」
「…………えー」
確かそのとき、彰太は高二だった。それでその純情っぷりとは。そっち方面はうといとは思ってはいたが、想像以上だった。
「俺が考えるよりも、今まであったどの人よりも、彰太は純粋なんだろうなって思って。そのときに決めたんです。焦らず、ゆっくり時間をかけようと。大学生になってからも、何度かそういう雰囲気にはなったんですが──赤くなったまま固まってしまったり、鼻血が止まらなくなってしまったりして」
一翔の真剣な表情に、琉太は「何か……ごめんな」と頭を抱えた。イケメンくんは思うよりずっと、めちゃくちゃ真面目で、優しい奴だった。
「いえ、とんでもない。そんな彰太だから、俺は好きになったんです。というか、彰太は本当に何でも琉太さんに話していたんですね」
「……まあ、オレしか話せる奴がいなかったからな。でも、あれだな。一方の話しだけを聞くのはよくないって実感したわ。名前呼びで顔近付けただけで鼻血出したり、スウェット着てる相手を見ただけで顔赤くする奴、おいそれと手は出せないよなあ。──めんどくさい弟で、ほんとすまん」
琉太が深々と頭を下げる。一翔が「頭を上げて下さい」と焦る。それでも琉太は頭を上げず。
「──弟を、どうかよろしく」
真剣な声音に、一翔は口元を緩め「はい。こちらこそ」と返答した。そして。
「家事も任せて下さい。小さいころからやってきたのでわりと得意なんです。食事も……さすがにコンビニ食とお菓子ばかりだと身体に悪いと思うので、俺が」
琉太はがばっと勢いよく面を上げ「──これからも末長く弟をよろしくお願いします」と、がしっと一翔の手を握った。はい。一翔が答えたところで、息をきらせた彰太が帰ってきた。両手に複数のレジ袋を下げて。
「食べ物買ってきたよ! 一翔はちゃんといる?!」
一直線に一翔の元へと向かい、彰太が飛び付く。一翔はそんな彰太を受け止め「走ってきてくれたの?」と、汗で額に張り付いた前髪に触れた。
「何か途中で不安になってきて。帰って一翔がいなくなってたらどうしようって」
一翔と琉太は、同時に目を見張った。
『彰太がよくても、彰太の家族が俺をどうしても認めてくれないのなら、傍にはいられない。その覚悟はしてきたつもりです』
二人の脳裏に同時に過ったのは、つい先ほど一翔が告げた科白だった。
「──黙っていなくなったりしないよ。それだけは、絶対だから」
一翔は目を細め、彰太を強く抱き締めた。ほっと息をつく彰太。それを何とも言えない気分で見詰めていた琉太は「ちょっといいか」と、控えめに口を挟んだ。
28
あなたにおすすめの小説
ジャスミン茶は、君のかおり
霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。
大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。
裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。
困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。
その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
三ヶ月だけの恋人
perari
BL
仁野(にの)は人違いで殴ってしまった。
殴った相手は――学年の先輩で、学内で知らぬ者はいない医学部の天才。
しかも、ずっと密かに想いを寄せていた松田(まつだ)先輩だった。
罪悪感にかられた仁野は、謝罪の気持ちとして松田の提案を受け入れた。
それは「三ヶ月だけ恋人として付き合う」という、まさかの提案だった――。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
刺されて始まる恋もある
神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
君に二度、恋をした。
春夜夢
BL
十年前、初恋の幼なじみ・堂本遥は、何も告げずに春翔の前から突然姿を消した。
あれ以来、恋をすることもなく、淡々と生きてきた春翔。
――もう二度と会うこともないと思っていたのに。
大手広告代理店で働く春翔の前に、遥は今度は“役員”として現れる。
変わらぬ笑顔。けれど、彼の瞳は、かつてよりずっと強く、熱を帯びていた。
「逃がさないよ、春翔。今度こそ、お前の全部を手に入れるまで」
初恋、すれ違い、再会、そして執着。
“好き”だけでは乗り越えられなかった過去を乗り越えて、ふたりは本当の恋に辿り着けるのか――
すれ違い×再会×俺様攻め
十年越しに交錯する、切なくも甘い溺愛ラブストーリー、開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる