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13話
しおりを挟むそして翌日——とうとう浄化の前日となっていた。
昨日見た夢のせいなのか、あまり眠れず頭がどんよりと重い。
そんなチヨの心を表すかのような曇り空だった。
「チヨ様、おはようございます」
エマとモニカが入室する。
朝の支度を無駄なくしてくれた。
最初のうちは恥ずかしかったチヨだが、この頃は用意をしてもらうと気持ちがしゃっきりとするのだ。
朝食を取っているときに神官が、今日1日の流れを説明するためにやってきた。
このあと、特別な守護がかかっている部屋に移動し1日を過ごすのだそうだ。
ここでは昨日のように何かをするということはないが、穢れから徹底的に遠ざかるため5回ほど沐浴をしなければならないらしい。
何故そこまで遠ざけるのかというチヨの問いに神官は「穢れが溜まっている人こそ魔に取り入られやすい、聖女は明日一日対峙し続けなければならないので」と説明した。
「それではご移動をお願いします」
「分かりました」
そして私は1日籠る部屋の扉をくぐったのだった。
———————————
何をするでもなく時間が過ぎ、4回目の沐浴を終えたところである。
日本にいたころは何もしない日というのは多かったが、人がいることに慣れてしまうと物足りない気がしてしまう。
そして意外にも疲れがきている。
昨日からのもあるだろうが、1日にこんなに湯に浸かることは無かったのでそれもあるのかもしれない。
湯を拭き取り、ドレスのようなワンピースを着る。
と同時に扉の外が俄かに慌ただしくなった。
(どうしたんだろう…)
部屋の壁はそんなに薄くない。
だというのにここまで聞こえてくるというのは…
まさか容態が急変したのだろうか。
しかし、現段階でチヨに出来ることはなく、ここで静かに待っているしかない…そう思ってデイベットに寝そべる。
その瞬間だった。
ものすごい勢いで扉が開く。
飛び起きて見てみれば入口にはなんと——
王がいた。
「…え?」
「ああ、こんなところにいたのか…殺しにきてやったぞお!さあ死ね!死ね!!」
昨日の夢が蘇る。
やはり涙を流しているので辛いのだろう。
しかし、浄化は明日のはず…
ここに来るまでにも人がいたはず…みんなどこへ?
そんなことを考えているうちにも王はチヨの方へゆらゆらと歩き出している。
「お前が死ねばみーんな死ぬんだろ?俺を助けてくれなかったよな?そんな奴は死ねばいいんだよ。そしてみんないなくなるんだ」
気味の悪い笑みを浮かべながら話している。
ふと、その手元を見ると剣を持っていて切っ先は血に濡れているようだった。
「…」
そこまで負けてしまったのか。
自身の臣下を害すほどに。
謁見したときの姿を思い浮かべて悲しい気持ちになるが感傷に浸っている場合ではない。
明日などと言っていられない。
今すぐにでも浄化しなくては。
しかし、チヨには身を守る術がない。
どうしようかと考え、1つの考えに思い至り、部屋を飛び出した。
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