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19話
しおりを挟む「え、舞踏会ですか?」
「まあ祝賀会というか、祝勝会というか、慰労会というか...意味合いとしてはそちらが強いですね」
なんでも無事浄化が終了したことを祝しての会らしい。
元々、10日後ということで予定は入れていたらしいのだが、それが祝う会になるか悲しみの会になるかどうかは蓋を開けてみてからの判断だったそうだ。
無事、祝う会にできて何よりである。
「それで...チヨ様にもご参加して頂きたいのです」
「......私、ダンスとか出来ませんよ?」
「ダンスは...必ず1曲は陛下と踊って頂きますので...特訓ですね」
ルーカスは涼しい笑みを浮かべて恐ろしい言葉を言ってのけた。
「とっくん...」
87歳のおばあちゃんになんという無体を働くのだろうか。
これは一言申さねばならない。
「あの、私おばあちゃんなんで...そういうのは難しいかと思います...」
そう言うとルーカスはきょとんとした顔をする。
「だって...今のチヨ様、お若いじゃないですか?体力もありましたし...大丈夫ですよね」
「う...」
そんな綺麗な顔で綺麗な微笑みで言われても...ほだされたりなんか...しますけど。
「頑張ります...でも、でも!頭の!記憶力とか!」
「大丈夫です。身体で覚えましょう」
「はい...」
かくしてチヨは舞踏会のため、特訓をすることになった。
—————————
特訓は辛いもので、くたくたの毎日を過ごしていた。
教えてくれたのはルーカスで、非常に嬉しそうに楽しそうに指導してくれるのだが、涼しげな見た目とは裏腹に鬼のようなスパルタだったのである。
そもそも10日で何とかしようというのがおかしいのだ。
しかしその甲斐あってか何とか形にはなった。
そして今日が10日後。
舞踏会本番の日の朝である。
チヨの周りは朝からバタバタしていた。
「——湯あみの準備は!?」
「香油はある!?」
などなど色々な声が飛び交っている。
朝食はいつもより少なめだったが、昼食はもっと少なかった。
こちらに来てからだって、こんなに磨かれたことは無い。
それくらい念入りにピカピカになるまでだった。
お世話をしてくれる人も今日に限っては増員しており、エマとモニカと協力している。
「チヨ様、本日はこちらのドレスを着けていただきますわ」
そこにあったのは白地のドレスで全面に金の糸で刺繍が施された、それは立派で豪奢なドレスだった。
美しすぎて言葉にできない。
「う、わぁ...」
「髪飾りはこちらでございます」
ソンツァル神の花であるとされるパトソルニチニークをかたどった金のヘッドドレスだ。
...いよいよ衣装に負けそうである。
日本であったらチヨなどは絶対に、間違いなく着られない代物だ。
「大丈夫かね...」
「? 何を心配しているか分かりかねますが...きっとチヨ様にお似合いですよ。ですが、その前に...」
そう言って増員された侍女は何かをチヨの目の前に掲げてにっこりと笑った。
「それは...」
「コルセットでございます。頑張りましょう!」
その笑顔と言葉で嫌な予感しかしないチヨだった。
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