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18話
しおりを挟む「……ん?」
だいぶ眠っていたようで、身体がぎしぎしする。
「お目覚めですか?」
エマが優しく微笑んでいる。
チヨも自然と微笑んでしまう。
「ええ、おはよう」
「おはようございます。3日間眠っていらしたのですよ、お身体の不調などはないですか?」
3日!!
それは違和感を覚えるはずである。
勿論、不調は無い。無いのだが…
「お腹が空いたわ…」
「丁度昼食に良い時間です。すぐに食事の準備を致しましょう」
そう言うとエマは退室する。
入れ替わりで入室したのはモニカだ。
「おはようございます、チヨ様!心配致しました…」
「3日も寝てれば…そうね、ごめんなさい」
「いえ!そういう意味では!」
「分かってるわ!ありがとうね」
モニカの焦った様子が可笑しくて、思わず笑ってしまう。
照れているのか、顔が少々赤いのがまた可愛い。
「ああ、そうでした!落ち着かれたらルーカス様がお会いしたいとのことです」
「分かったわ。またこちらから連絡しますと伝えてくれる?」
かしこまりました、と言うと廊下に言伝に行く。
「では、食事の準備までもう少しかかりそうですのでその間にお召替えをしましょう!」
テキパキと整えてくれるうちに食事の準備が出来たようだ。
チヨの体調を慮って部屋に持ってきてくれている。
歳を取ってから食も細くなり、中々食べられないこともあったのだが、そんなこと嘘かのようにたくさん食べてしまった。
食後のお茶を貰い、一息着いたのでルーカスへの連絡を取り付けてもらう。
30分後にこちらに来てくれるようだった。
—————————
「チヨ様!体調はいかがでしょうか?どこかおかしなところはございませんか!?」
相変わらずの勢いである。
思わずチヨは苦笑いをして「大丈夫です」と答えた。
ルーカスの用件は浄化の記録を残したいので出来るだけでいいので様子を教えて欲しいとのことだった。
「まだ本調子ではないのに恐縮ですが…」
「私も記憶がはっきりしているうちに話したいですから!」
「…チヨ様、なんだか明るくなられましたね」
ルーカスが眩しそうに目を細める。
「そうですか?」
「ええ。…あぁ、すみません。宜しくお願いします」
やはり、浄化は自分にとって負担だったのかもしれない。
やる気や責任を取る覚悟などはあったけど、それはまた別問題なのだ。
チヨは浄化の最中、あったことを事細かにに話した。
最初は、祈り続けて時間経ったかも分からずぼーっとしていたこと、それでも王は呪詛を流し続けていたこと、でもそれが初代の王だと気づいて話しかけてみたこと、そして最期にはこの国を見守ると言って消えたこと…
ルーカスは驚いて書く手を止めている。
「あの…ルーカスさん?」
「…あ、いえ…初代の王…が憑いていた、ということです、か?」
「ええ、そうでしたねぇ…でも、今回だけでずっとではないって言ってましたよ」
「……何故、初代の王だとお分かりになったのですか?」
「実は、夢で…」
そして夢の話もすると、ルーカスは目を見開いて言った。
「こ、こんなことは…今まで一度もありませんでした。少なくともアジーン家の記録にはないのです。そして我が家の記録が聖女さまの記録の全てと言っても過言ではありません…」
「そうなんですか…不思議なこともあるもんですね…」
「…そう、ですね」
ルーカスはまだ何かを考えているようだったが、こちらが別の話をすれば頭を切り替えたのか、普通に返事が返ってきた。
だからその話は有耶無耶になってしまったのだった。
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