御手洗くんの紛うことなき現代社会での滑稽な非日常について。

されど電波おやぢは妄想を騙る

文字の大きさ
1 / 24

Act.01 電話から始まる非日常について。①

しおりを挟む
 ある日の早朝、オレのスマホに掛かって来た一本の電話――。

「こんな朝早くから誰だよ……煩いって」

 昨日の夜、明日は公休だからということで、夜遅くまで……夜とは言わないな。
 早朝まで、大好きなゲームで遊んでいたので、寝たのはついさっきだった。


 気持ち良く寝掛かっていたところに、この仕打ち。
 無視してやろうとスマホを留守電に切り替えて、再び布団に深く潜り込むオレ。


 だがしかし。
 バイブレーションにしていたのが悪かった。


「――しつこいな……一体、誰だよ……」

 ひたすら振動するオレのスマホに、完全に叩き起こされてしまった。

「――何方どちら様? 今、何時か解ってての嫌がらせですか? 間違い電話だったら大概にして下さいよ?」

 完全に目が覚めたオレは、不機嫌そうに脇のスマホを手に取って電話に出た。

「そーぢ。今、何時か時計を見てからモノを言うと良いわよ……また夜更かししてたんでしょう」

 電話に出たオレが耳にしたのは、若干、呆れたモノ言いだけど、とても聴き覚えのある優しい声。

「――? 今、何時かって……げっ⁉︎ 昼過ぎちゃってるじゃんっ⁉︎」

 壁掛け時計を横目で見やり驚くオレ。


 時差ボケはオレの方だった。


 さっき寝たばっかりだったと思っていたが、軽く六時間は寝てたみたいだった。

「そーぢ……私が電話で起こさなかったら、夜中に起き出してたんじゃないの? ――全く、社会人なんだから、もっとシャッキとしなさい」

 母親みたいなモノ言いで、オレを叱咤する電話口の女性。

 オレの唯一の肉親である、姉の御手洗みたらい 華奈子かなこからの電話だった。

 ちなみに、そーぢとは今年で二十歳ハタチを迎えるオレ――御手洗みたらい そーぢのことだね。

 現在は姉と二人暮らし。
 両親は、オレが幼い頃に既に他界している。

 そして姉さんは現在――、


 とあるに勤めている。


 詳しいことは守秘義務らしく教えてはくれないので、とある派遣会社としか解らないけど。

 連日、戻ってこないことも日常茶飯事だったけど、出向先から毎日欠かさず電話、できない時はメールを必ず送ってくるほどに、異常に過保護な姉さんだね。


 一応、オレも高校を卒業した社会人なんですけど。


 働き手になって既に一年以上経ったんだから、そんなに心配しなくても良いのに……。

 そんな風に構ってくれる優しい姉さんを、オレはうとましく思ったことは一度ももない。

 何方かと言うと、オレの知らない何処かに出向させられている姉さんの安否確認もついでにできて、逆に安心しているオレだったから。

 ヒトからシスター・コンプレックスと言われても否定はできないくらい、オレはそんな姉さんが大好きだからね――。

「あ~、うん。昨日から配信されたゲームがめちゃくちゃ面白くてさ……つい」

 スマホをビデオ通話に切り替えると、相変わらず美人な姉さんが困った顔をしているのが映しだされた――。

 何処かの出向先の制服なのか、由緒正しきメイド服に身を包んだ姉さんは今年で二十三歳。

 パッと見は日本人とは思えない超絶美人で、若くも艶々した美肌に、切れ長でできる秘書的な鋭い目は茶色。

 染めているわけではない地毛の栗色の髪は、束ねた髪を後頭部でポニーテールにし、ふんわりと丸く纏めたシニヨンスタイルで、大人の雰囲気を醸し出し、清楚かつ綺麗に纏めていた。

 そんな姉さんだから、オレと三つしか離れていないのに、若干、歳上に見られる傾向があったりする。

「あらら~。ボッサボサの髪に相変わらずの寝惚け顔って……普段通り過ぎて私はホッとするけど。良い加減、社会人としての自覚を持たないと駄目よ、そーぢ」

 オレがビデオ通話で見ている以上、当然、姉さんもオレが見えてる。
 若干、嬉しそうな笑顔で優しく叱咤してくるのだった。

「し、仕方ねーだろ、正にたった今、起きたと言うか……起こされたばっかりなんだから!」

 布団の上にドカリと座り、電話口の姉さんに向かって頭をポリポリと掻きながら言い訳するオレ。

「――あ、あのさ、姉さん。話は変わるけどさ、今度はいつ頃に帰って来る? ――寂しいってわけではないけど……一ヶ月も出ずっ張りで大丈夫なのかなって思ってさ?」

 やや照れ臭く、最愛の姉さんに尋ねてみると――。


「そーぢ、正直に寂しいと言ってくれて良いのに……私はそーぢと離れて寂しいよ? でもね、あの妖女――クシュン。お嬢様がナニかと手を焼かせるし……無理難題を押し付けてばかり……金払い――クシュン。御給金が良いからってヒトを奴隷――クシュン。コキ使わなくっても良いじゃない? そうそう! 聴いてよ、そーぢ! この間なんて前線基――クシュン。研究施設に必要な軍――クシュン。設備の管理作業なんてさせられて地獄を見せられたし――」


 よっぽど不満が溜まっているのか、久々のマシンガン愚痴りトークが始まった。


 姉さんのコレは異様に長いんだよなぁ……。
 なんかこー良く解らない不穏当な単語が、時折、混じり気味になるのが気になるんだけど……。

 とはいえ、姉さんの出向させられてる派遣会社って、ホント、大丈夫?


 そして、軽く三〇分位は延々と愚痴り続けていた――。



 ―――――――――― つづく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...