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5. 王太子は満足する
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(これでようやく可愛くない女から解放される……!)
クラウディアが妹クラリスを虐めている。そんな噂を聞いたとき、王太子であるラインハルトは喜んだ。
そして、事実の確認を取らずに、虐めをしたとされているクラウディアとの婚約を破棄した。
可愛いクラリスと婚約できると信じて。
「本当にクラウディアは口うるさいだけの女だったな。何の利益ももたらしていない」
独り言を呟きながら、ラインハルトは少し前までのことを思い出していた。
ある時は、書類を先に片付けた方が良いと言われ。
ある時は、昼間にベッドに横にならない方が良いと言われ。
ある時は、欲望のままに胸をさり気なく触って激怒され。
ある時は、食事の好き嫌いを直したほうが良いと言われた。
クラウディアのこれらの言動は、一部を除いて婚約者であるラインハルトのことを思ってのものだった。
だが、言われている本人は鬱陶しくて仕方なかった。
(もう何も言われないと思うと、せいせいするな)
絶望に染まる表情は見れなかったものの、クラウディアに復讐できた気がして、ラインハルトは愉悦に頬を緩ませる。
今は断罪の翌日。昼間にも関わらず、ベッドに寝転がりながら、正式にクラリスと婚約する時を今か今かと待ち望んでいた。
そして、その時は間も無くやってきた。
「この度はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。それでいて、クラリスを選んでいただいて……なんとお礼を言ったらいいのか……」
深々と頭を下げる公爵夫妻。その隣では、クラリスが幸せそうな笑みを浮かべて座っていた。
「いえ、これは私が望んだことですので、礼には及びません。むしろ、大切な娘さんを頂けることに感謝しているくらいです」
愛おしげな視線をクラリスに注ぐラインハルトと、愛おしげにラインハルトを見つめるクラリス。
2人とも幸せそうな表情をしていた。
一方は王太子の婚約者になれることが嬉しくて。
もう一方は大人しく可愛らしい令嬢を婚約者に出来ることが嬉しくて。
互いに己の利益のために行動しているから、この2人の間に本当の意味での愛などというものは存在していなかった。
そこにあるのは愛に見える打算的な何かのみ。
しかし、それに気付く者はおらず、正式に婚約が結ばれた。
「今後ともよろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
この場にいる者は、この婚姻が恋愛によるものだと信じて疑わない。
こうして、婚約は成立することとなった。
この婚姻が悲劇を生むのか、それとも幸せを呼ぶのか。
答えを知る者はまだいない。
クラウディアが妹クラリスを虐めている。そんな噂を聞いたとき、王太子であるラインハルトは喜んだ。
そして、事実の確認を取らずに、虐めをしたとされているクラウディアとの婚約を破棄した。
可愛いクラリスと婚約できると信じて。
「本当にクラウディアは口うるさいだけの女だったな。何の利益ももたらしていない」
独り言を呟きながら、ラインハルトは少し前までのことを思い出していた。
ある時は、書類を先に片付けた方が良いと言われ。
ある時は、昼間にベッドに横にならない方が良いと言われ。
ある時は、欲望のままに胸をさり気なく触って激怒され。
ある時は、食事の好き嫌いを直したほうが良いと言われた。
クラウディアのこれらの言動は、一部を除いて婚約者であるラインハルトのことを思ってのものだった。
だが、言われている本人は鬱陶しくて仕方なかった。
(もう何も言われないと思うと、せいせいするな)
絶望に染まる表情は見れなかったものの、クラウディアに復讐できた気がして、ラインハルトは愉悦に頬を緩ませる。
今は断罪の翌日。昼間にも関わらず、ベッドに寝転がりながら、正式にクラリスと婚約する時を今か今かと待ち望んでいた。
そして、その時は間も無くやってきた。
「この度はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。それでいて、クラリスを選んでいただいて……なんとお礼を言ったらいいのか……」
深々と頭を下げる公爵夫妻。その隣では、クラリスが幸せそうな笑みを浮かべて座っていた。
「いえ、これは私が望んだことですので、礼には及びません。むしろ、大切な娘さんを頂けることに感謝しているくらいです」
愛おしげな視線をクラリスに注ぐラインハルトと、愛おしげにラインハルトを見つめるクラリス。
2人とも幸せそうな表情をしていた。
一方は王太子の婚約者になれることが嬉しくて。
もう一方は大人しく可愛らしい令嬢を婚約者に出来ることが嬉しくて。
互いに己の利益のために行動しているから、この2人の間に本当の意味での愛などというものは存在していなかった。
そこにあるのは愛に見える打算的な何かのみ。
しかし、それに気付く者はおらず、正式に婚約が結ばれた。
「今後ともよろしくお願い致します」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
この場にいる者は、この婚姻が恋愛によるものだと信じて疑わない。
こうして、婚約は成立することとなった。
この婚姻が悲劇を生むのか、それとも幸せを呼ぶのか。
答えを知る者はまだいない。
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