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第二十六章 交差する思惑
番外編 英国朝食
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イギリスの朝は今日も冷えていて、空模様は曇天だ。
窓ガラスから見える変わり映えのしない景色を一瞥し、ジョンはカーテンを閉める。
ジョンはキッチンに足を運ぶと、木製のブレッドボックスに保管していたイギリスパンを取り出しまな板に起き、包丁でざくりと切り落とす。
雑に刃を入れているように見えて、切り口は妙に真っすぐで、表面にはパン屑ひとつない。
厚さ三センチのパンが一枚用意できたところで、ジョンは冷蔵庫からハムとチーズの塊を取り出すと、正確無比に、必要分だけ削いでパンに乗せ、無造作に食べ進めるジョン。
所謂オープンサンド形式。サンドイッチとして挟んでさえいない。
そんな、栄養バランスなんてどうでもいいとばかりの手早さだが、組み合わせだけはきっちり栄養学的に理にかなっている。
ピー。
ジョンが大口でパンを咀嚼している最中、電子オーブンの終了音が鳴った。
それを聞き付けたエドワードがいそいそとキッチンに入ってきて、オーブンの蓋を開け出来上がりを確認する。
中ではゆで卵と挽肉を衣で包んだスコッチエッグが、食欲を誘う臭いを立てていた。
「ジョン先生っ! スコッチエッグができましたよ!」
我ながら完璧な仕上がり、とエドワードは満面の笑みを浮かべつつ、スコッチエッグを乗せた皿をテーブルの中央に置く。
が、その頃にはジョンはパンを食べ終えており、コートを羽織りカバンの中身を確認し、と、ちゃっちゃっと出勤の準備を始めていた。
「あれ!? ジョン先生!?」
「何だ。急用がなければ、俺はもう行くぞ」
「行くって、朝ごはんあれだけで済ませる気ですか!?」
信じられない、と驚愕するエドワードに対し、ジョンは「充分だろう」とでも言いたげな冷ややかな目を向けると、足早にキッチンを出てしまう。
「あっ! 待ってください、ジョン先生! せめて卵一個ぐらい! 完全栄養食でしょう!? ジョン先生、ジョン先生ぇえええっ!?」
結局、ジョンはエドワードのスコッチエッグを食べないまま病棟へ出勤してしまった。
(久しぶりに朝の時間が重なったから、張り切って作ったのに……)
エドワードはしょんもり肩を落としつつ、ジョンの分として作ったスコッチエッグを冷蔵庫へ保管する。
その日、夜遅く。
半ばフローレンスに追い出される形で病棟から退勤したジョンは、自宅に帰るや否や、腹に何か入れようと冷蔵庫のドアを開ける。そしてラップがかけられたスコッチエッグの存在を認識した。
するとジョンは無造作にスコッチエッグが乗った皿を手に取り、ラップをべりべりと剥がすと、冷え切ったスコッチエッグを鷲掴み、素手(手洗い済み)で食べ始める。
「あっ、ジョン先生!」
そこにジョンの帰還に気付いたエドワードが、二階から降りてきてジョンを出迎えた。
「帰ってきていたんですね! おかえりな……、っ!?」
今朝作ったスコッチエッグを、食べてくれている。
エドワードの胸は高鳴った。と同時に、心の中で悲鳴をあげた。
ジョンは冷蔵庫の真ん前に突っ立ってスコッチエッグを食べている。つまり冷え切った状態。これでは美味しさ半減どころではない。
「ジョッ、ジョン先生! 温め直しましょうっ!?」
「何故? 時間の無駄だ」
「あっ、温かい方が体にもいいですよっ!?」
「これで充分だろうが」
ぱくっ、もぐもぐ、ごくん。
そのままジョンはエドワードの手料理を残さず食べてくれたのに、エドワードは何だか複雑な心境となってしまった。
翌朝。
ジョンは紅茶を飲み終える前に食事を用意しないと手を付けてくれない、と学んだエドワードは、普段よりぐっと早起きをして、キッチンでせっせと朝食を作るのだった。
ジョンのルーティンに組み込めさえすれば、彼は無言ながらも手を付け、エドワードに空の皿を見せてくれるのだから。
(エドワード学生時代の思い出)
窓ガラスから見える変わり映えのしない景色を一瞥し、ジョンはカーテンを閉める。
ジョンはキッチンに足を運ぶと、木製のブレッドボックスに保管していたイギリスパンを取り出しまな板に起き、包丁でざくりと切り落とす。
雑に刃を入れているように見えて、切り口は妙に真っすぐで、表面にはパン屑ひとつない。
厚さ三センチのパンが一枚用意できたところで、ジョンは冷蔵庫からハムとチーズの塊を取り出すと、正確無比に、必要分だけ削いでパンに乗せ、無造作に食べ進めるジョン。
所謂オープンサンド形式。サンドイッチとして挟んでさえいない。
そんな、栄養バランスなんてどうでもいいとばかりの手早さだが、組み合わせだけはきっちり栄養学的に理にかなっている。
ピー。
ジョンが大口でパンを咀嚼している最中、電子オーブンの終了音が鳴った。
それを聞き付けたエドワードがいそいそとキッチンに入ってきて、オーブンの蓋を開け出来上がりを確認する。
中ではゆで卵と挽肉を衣で包んだスコッチエッグが、食欲を誘う臭いを立てていた。
「ジョン先生っ! スコッチエッグができましたよ!」
我ながら完璧な仕上がり、とエドワードは満面の笑みを浮かべつつ、スコッチエッグを乗せた皿をテーブルの中央に置く。
が、その頃にはジョンはパンを食べ終えており、コートを羽織りカバンの中身を確認し、と、ちゃっちゃっと出勤の準備を始めていた。
「あれ!? ジョン先生!?」
「何だ。急用がなければ、俺はもう行くぞ」
「行くって、朝ごはんあれだけで済ませる気ですか!?」
信じられない、と驚愕するエドワードに対し、ジョンは「充分だろう」とでも言いたげな冷ややかな目を向けると、足早にキッチンを出てしまう。
「あっ! 待ってください、ジョン先生! せめて卵一個ぐらい! 完全栄養食でしょう!? ジョン先生、ジョン先生ぇえええっ!?」
結局、ジョンはエドワードのスコッチエッグを食べないまま病棟へ出勤してしまった。
(久しぶりに朝の時間が重なったから、張り切って作ったのに……)
エドワードはしょんもり肩を落としつつ、ジョンの分として作ったスコッチエッグを冷蔵庫へ保管する。
その日、夜遅く。
半ばフローレンスに追い出される形で病棟から退勤したジョンは、自宅に帰るや否や、腹に何か入れようと冷蔵庫のドアを開ける。そしてラップがかけられたスコッチエッグの存在を認識した。
するとジョンは無造作にスコッチエッグが乗った皿を手に取り、ラップをべりべりと剥がすと、冷え切ったスコッチエッグを鷲掴み、素手(手洗い済み)で食べ始める。
「あっ、ジョン先生!」
そこにジョンの帰還に気付いたエドワードが、二階から降りてきてジョンを出迎えた。
「帰ってきていたんですね! おかえりな……、っ!?」
今朝作ったスコッチエッグを、食べてくれている。
エドワードの胸は高鳴った。と同時に、心の中で悲鳴をあげた。
ジョンは冷蔵庫の真ん前に突っ立ってスコッチエッグを食べている。つまり冷え切った状態。これでは美味しさ半減どころではない。
「ジョッ、ジョン先生! 温め直しましょうっ!?」
「何故? 時間の無駄だ」
「あっ、温かい方が体にもいいですよっ!?」
「これで充分だろうが」
ぱくっ、もぐもぐ、ごくん。
そのままジョンはエドワードの手料理を残さず食べてくれたのに、エドワードは何だか複雑な心境となってしまった。
翌朝。
ジョンは紅茶を飲み終える前に食事を用意しないと手を付けてくれない、と学んだエドワードは、普段よりぐっと早起きをして、キッチンでせっせと朝食を作るのだった。
ジョンのルーティンに組み込めさえすれば、彼は無言ながらも手を付け、エドワードに空の皿を見せてくれるのだから。
(エドワード学生時代の思い出)
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