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明日はバレンタインデー
しおりを挟む一緒に初日の出を見に行った日、……紆余曲折あり二人が晴れて恋人同士となった日。
その翌日の午後からまた隼音は仕事に追われる日々を過ごしていた。
花楓も五日から店を開け、穏やかながら忙しない日々を過ごしている。
毎日でも会いたいけれど、あれから二週に一度しか会えていない。
明日はバレンタインデー。
店頭に並べるチョコレートは、店長でありパティシエでもあり、花楓にとって兄代わりでもある鷹尾が担当する。
だが、今年は花楓も隼音へのチョコレートを作る。初めて渡すチョコレート。せっかくなら誰にも負けないものを作りたい。きっと隼音はたくさん貰うのだろうから。
「花楓。セレブのパーティーにでも出すつもりか?」
「え?」
顔を上げれば、鷹尾が呆れた顔をしていた。
「……あっ」
つい、気合いが入り過ぎてしまった。
ツヤツヤのチョコレートケーキを作ったのだが、その上にルビーチョコで作った薔薇を咲かせ、ホワイトチョコで作った羽を広げた鳥を、アラザンを散らした大地に止まらせてしまった。
ベリーやフルーツ、霧雨を模した糸飴まで追加した所為でキラキラと輝いて見える。
「……バランス悪いですね」
「いや、気にするところはそこじゃない」
「……トリュフにします」
「そうしとけ」
これを渡せば隼音は驚きながらも泣いて喜ぶだろうが、このお返しとなるとホワイトデーは大変な事になる。
この喜びを伝える為に、と湖畔の別荘か高層マンションでも買いそうだ、と鷹尾はこっそりと溜め息を吐いた。
交際は許したが、まだ一緒に住まわせる気はない。
「しかしまた、凄い物を作ったな」
久しぶりに見た花楓の本気に、鷹尾は感嘆しつつも苦笑した。さすが天才パティシエと呼ばれただけの事はある。
花楓も困ったように笑った。
「兄さん、あの、隣で見てて貰えませんか? また張り切ってしまいそうなので……」
「ああ、そうするよ」
また無意識に豪華な物を作りそうな花楓の頭を、ポンと撫でた。
このケーキは分割して自分たちで食べる他、試作品と称して隼音とパートさんに振る舞う事にした。
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