4 / 39
恋人“候補”なので
しおりを挟む「……今はこれで我慢してください」
駄目だと思いつつ、直柾の手を取ってしまった。
「優くん……。ありがとう」
直柾はふわりと笑い、もう片手で包み込むように優斗の手を握る。
我が儘を言って我慢させているのに、お礼を言われると心苦しい。優しく包み込む直柾の手の中でもぞもぞと指を動かし、するりと指を絡めて繋ぎ直した。
優くん、と呟く驚いた顔が可愛いなと思ってしまう。
……もう、この際認めよう。いつも完璧な直柾が可愛くなるところに、弱い。
「優斗。手」
「あ、はい」
隆晴だけ接触禁止令を続けるのも、と、差し出された手をギュッと握る。
「……俺に対してあっさりし過ぎじゃね?」
「え? そうです?」
「そのくせ、近付くと怒るんだよな」
「それは、まあ、先輩の顔がいいせいですね」
「褒められてんのに貶されてる気分」
「ちゃんと褒めてますよ?」
小さく笑うと、隆晴は肩を竦めて笑った。
隆晴に対してドキドキする時と、普通に接する事が出来る時の差が激しい自覚はある。
元々が先輩後輩で、その空気感が常にあるからかもしれない。隆晴が意図的に迫って来なければ普通でいられる。
「接触禁止令は解けたんだよな?」
「そう、ですね。適切な距離感は保っていただきたいですけど」
優斗の言葉に、隆晴は頬に伸ばしかけた手をピタリと止めた。次に会ったら恋人として甘やかすと決めていたが、やり過ぎて拒絶されては元も子もない。
仕方なくその手は優斗の頭に。ナデナデと優しく撫でる事にした。
「優くん」
「わっ……」
「あっ、こら!」
そんな隆晴を横目に、直柾が優斗にギュッと抱きついた。
「優くん不足で死ぬかと思ったよ。優くん、大好きだよ」
スリ、と頬を擦り寄せられ、擽ったさに首を竦める。包み込むように抱き締められ、暖かな体温に無意識にホッとしている自分がいた。
「直柾さんにこうされるの、やっぱり落ち着きます」
いつもこの部屋ではぬいぐるみのように抱き締められていたから、目の前にいるのに触れられない事が少し寂しかったのかもしれない。
「すみません。触るの禁止って、俺から言っておきながら……」
自分勝手にも程がある。罪悪感に襲われ、しゅん、と肩を落とす優斗に、直柾は柔らかく微笑みそっと頬を撫でた。
「あの時は、驚かせちゃったから。俺の方こそごめんね?」
眉を下げる直柾に、優斗はふるふると首を横に振った。
彼はいつでも優しくて、いつもその優しさに甘えてしまう。甘えてばかりでは駄目だと思いつつも、居心地が良くて……。
……ただ、少し、近いなと思う時はある。
吐息が髪に触れ、耳元へと……。
「優くん」
「っ……」
「あー、いい雰囲気のとこすみませんが、そろそろ優斗を離してくれませんかね」
「……空気読んでくれないかな」
「読んでますけど?」
しれっとして言う隆晴と、眉を顰める直柾。バチッと火花が散った。
「あっ、あの、……お茶淹れてきますね?」
睨み合う二人へと笑顔を向け、身を屈めて二人の間から抜け出した。出来れば喧嘩はやめて欲しい。
当然のように優斗についてキッチンまでついて来る二人を、座っててください、とソファへと追いやった。少し心臓を休める時間が欲しい。
こうして夏でも構わず抱き締めるものだから、無香料の制汗剤やらシートやらを吟味して大量買いと常用をするようになってしまった。
元々体臭はない方で、直柾に“優くんの甘い匂いが消えてる……”としょんぼりされるくらいなので対策は出来ていると思いたい。
いらないと言われても、さすがに気になるものは気になるのだ。
直柾はいつも上品な花の香りがするし、隆晴は柑橘系か、太陽の匂いがする。
そんな二人と接するなら、自分もせめて……と思わずにはいられない一般人の心を分かって欲しかった。
121
あなたにおすすめの小説
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
息の合うゲーム友達とリア凸した結果プロポーズされました。
ふわりんしず。
BL
“じゃあ会ってみる?今度の日曜日”
ゲーム内で1番気の合う相棒に突然誘われた。リアルで会ったことはなく、
ただゲーム中にボイスを付けて遊ぶ仲だった
一瞬の葛藤とほんの少しのワクワク。
結局俺が選んだのは、
“いいね!あそぼーよ”
もし人生の分岐点があるのなら、きっとこと時だったのかもしれないと
後から思うのだった。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
ある日、人気俳優の弟になりました。
雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。
「俺の命は、君のものだよ」
初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……?
平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる