ある日、人気俳優の弟になりました。2

雪 いつき

文字の大きさ
3 / 39

恋人“候補”

しおりを挟む

 立花 優斗たちばな ゆうとは、母の再婚を期に橘 優斗たちばな ゆうととなり、兄が出来た。
 兄である橘 直柾たちばな なおまさは、顔良し性格良し穏やかで真面目で、完璧な王子様のような人だった。


「優くん、ただいま。会いたかったよ」

 誰もが認める“王子様”は、リビングへと入るなり甘く蕩けそうな笑みを浮かべる。まるで、世界の果てから遥々会いに来たかのように。
 緩くウェーブの掛かったアッシュゴールドの髪が夕陽を弾き、キラキラと輝く様はどこかの国の王子様のようだった。

 ……ちなみに、三日前に会ったばかりである。

「おかえりなさい、兄さん」

 そう返すと、彼はまた柔らかな笑みを浮かべた。兄呼びが嬉しかったらしい。


「俺はさっきぶりだな。一緒に帰ってきたし」
「そ、そうですね……」

 迎えに出た優斗の隣に立ち、隆晴りゅうせいは直柾に対して“毎日会ってますけど?”アピールをする。これは優斗にも分かる。その証拠に直柾は悔しげな顔をした。

 ちなみに、もう夏休みなので毎日は会っていない。

 隆晴……竹之内 隆晴たけのうち りゅうせいは、高校からの先輩で、文武両道で面倒見が良く、更には顔が良い。声も良い。漆黒の髪が良く似合う男前だ。

 ……つまり優斗は今、顔面偏差値がとんでもない二人に囲まれていた。

「優くん、好きだよ」
「えっ、あ、はい」

 突然割って入ったのは直柾で、脈絡がないのはいつもの事。

「俺に出来ることがあれば何でも言ってね? 俺の命は、君のものなんだから」
「え、っと……今のところは大丈夫です……」

 優斗は曖昧に笑って見せた。
 諸々の事情があったのだが、直柾は“俺の命は君のものだよ”と良く口にする。これさえなければ本当に王子様なのに、と思うが、最近ではこの言動こそ王子様っぽいのかも? と思ったりもする。
 ……決して絆されたわけではない。

「優斗が好きなのは、俺だよな?」
「え? えーっと……」
「優くん、俺だよね?」
「えーーっと……、っ!」

 ジリジリと追い詰められ、今朝の夢と同じ状況になってしまった。ドンッと示し合わせたように顔の左右の壁に手を付かれる。

「優くん」
「優斗」

 左には、直柾。右には、隆晴。

 影になり色を濃くした湖水色の瞳と、射抜くような琥珀色の瞳。

 ジッと見つめられると目を反らせなくなる。体も動かなくなる。きっと、二人の瞳には魔力がある……かもしれないが、こんな、とんでもなく顔の良い二人に迫られれば身動きくらい取れなくなるだろう。

 ……つまり、誰か助けて……。

「ねえ、優くん。好きだよ?」
「っ……はい、あの……」
「優斗。俺を見ろよ」
「っ……」

 視線を伏せる事も出来ず、見つめられたまま、ただ、そのまま……。

「っ……、適切な距離感でお願いしますっ……!!」

 反らせない視線の代わりにそう訴えた。
 何も言わずに見つめられ続けるのもつらい。もう、つらい。

 良いと言うまで触るの禁止、を守ってくれたのは嬉しいが、適切な距離感でともお願いしていた。
 触れてはいないが、近い。どう考えても近い。


 最初に離れたのは直柾だ。ホッとしたのも束の間。

「優くんのこと、抱き締めたいよ」

 眉を下げ、叱られた犬のような瞳で見つめてくる。垂れた尻尾と耳の幻覚まで見え始めた。

 ……駄目だ。絆されてはいけない。

 恋人として付き合えるかを真剣に考えなくてはならないのに、今の直柾に抱き締められればそれが出来なくなる。

 絆されたら駄目だ。

 絆されたら……。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

【完結】我が兄は生徒会長である!

tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。 名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。 そんな彼には「推し」がいる。 それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。 実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。 終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。 本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。 (番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

【完結済】俺のモノだと言わない彼氏

竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?! ■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。

処理中です...