極度の怖がりな俺、ド派手な先輩とルームシェアが決まる

雪 いつき

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14. テーマパーク

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 色々なことがありながら、十月に入った。今日はテーマパークに行く日だ。
 ロアさんが、人が多すぎず、季節もいい時期を提案してくれた。夏の間は待ち時間が地獄だからと言っていた。確かにそれはそうだ。 


「案内役を頼んだのはロアだけなんだけど」

 聖凪せなさんが苦々しく言う。入り口前に着くと、ロアさんだけでなく、ライトさんとソラさんもいた。

 ロアさんは全体的に白っぽい服装で、王子様みたいに見える。
 そんな優しく微笑むロアさんの隣で、ダメージジーンズとTシャツを着こなしたライトさんが胸を張った。

「こんな楽しそうなイベント、俺が来ないわけがないだろ!」
「俺は連れて来られただけ……」

 ライトさんが元気に言うと、ソラさんが隣でぼそっと呟く。
 ソラさんは全体的に黒っぽい服装で、背が高いのもあって、ロアさんの騎士みたいに見えた。


 そして聖凪さんはというと……なんだか、悪役っぽい。
 今日はゆるっとしてないジーンズとオシャレなシャツでシンプルなのに、髪色のせいかな? 顔がクールでイケメンすぎるせいかな?
 聖凪さんとロアさんとソラさんが並ぶと、このテーマパークのキャストみたいだ。
 ライトさんは可愛い系だから、俺の唯一の友達みたいに感じる。平凡な俺が親近感を抱いて申し訳ないけど……。

 一方の俺は、聖凪さんがコーディネートしてくれた服を着ていた。普段愛用しているパーカー系はフードが引っかかると危ないからという理由で、聖凪さんに却下された。


明良あきら君、今日は雰囲気が違うね」
「えっ? はいっ、聖凪さんに選んで貰いましたっ」
「へぇ……聖凪、服をプレゼントしたんだ?」
「しようとしたら、自分で買うと言って聞かなかったんだよ」
「そっか。残念だったね」

 プレゼントできなくてどうして残念なんだろう? 首を傾げていると、ロアさんはにっこりと笑った。

 聖凪さんにお店で選んで貰った服は、白のオシャレっぽい柄のTシャツと、薄いストライプの入った水色のシャツだ。
 シャツは厚手で、夜でも寒くないだろうし日中に暑ければ腰に巻けばいいと言われた。下もジーンズじゃなくて、動きやすい黒のスラックスだ。

 なんだか、大人っぽくなった気がする。鏡に映った姿を見てそう思ったのに、ロアさんたちを見ると全然子供っぽいなと思ってしまった。

「じゃあ、行こうか」
「しゅっぱーつ!」
「うるさい」

 聖凪さんは溜め息をついたけど、前を行くロアさんたちについて行く。


「明良、騒がしくなってごめん」
「いえ、大丈夫です。というか、大勢でテーマパークも憧れがあったので楽しみです」
「そっか。明良がいいならいいか」

 いいどころか、ライブ動画を観て以来ファンになってしまったご本人様方とテーマパークなんて、ご褒美でしかない。最近では、前世の俺が大変な徳を積んだとしか思えなくなってきた。

 入場してからはロアさんがスマホや色んな場所で何かをしてくれた。待ってて、と言われて俺は聖凪さんと待機していたから、何があったか分からないけど、キャラクターのショーを二つも観られるらしい。
 二つもですか!? と大声で喜んでしまったけど、周囲も賑やかだったし、ロアさんは俺の頭を撫でて「可愛い子」と言ってくれた。騒いでも好意的に思ってくれたことに心の底からホッとした。


「次は、装備だね」
 近くの店に入ると、ロアさんはそう言った。
「装備ですか?」
「明良君は、猫耳とうさ耳どっちがいい?」
「明良は、猫で」
「了解」
「えっ、聖凪さん待ってっ」

 そう言ったのに、薄いピンク色のふわふわしたカチューシャを頭につけられる。

「耳が垂れてたらウサギでも良かったと思うけど、立ってる耳はちょっと解釈違い」
「聖凪さんの中の俺の解釈って……」
「やっぱり可愛い」

 聖凪さんは俺を見て満足そうに頷いた。
 立ってるうさぎの耳が解釈違いってどういうこと。この猫の耳は立ってるけどいいのかな?

「俺はうさぎー!」
「うん、似合うよ。可愛い」

 ロアさんに褒められたライトさんは嬉しそうだ。金髪に白いうさぎの耳、確かにライトさんがつけると可愛い。

「ソラは……クマかな。うん、可愛い」

 少し屈んだソラさんの頭に、茶色のふわふわしたカチューシャをつける。
 ロアさんって、ライトさんとソラさんの扱い同じなんだけど……ソラさんはいいのかな?
 ちょっと心配したものの、ソラさんはクマ耳をつけたまま頷いたから、いいんだ、と安心した。


「聖凪は、黒猫があれば良かったんだけどね」
「黒猫、似合いそうですね」
「だよね。明良君分かってるね」

 ロアさんは上機嫌でカチューシャの棚を眺めた。

「紫の猫耳は、俺の髪色とかぶるからちょっとなぁ……明良君と同じだと解釈違いって言われそうだし、この垂れた黒い犬にするかな」
「……まあ、これなら」

 そう言って頭につけるけど、聖凪さん、それもすごく可愛いグッズです。
 垂れた耳が可愛い……あ、もしかしてこれが解釈違いならぬ解釈一致ってこと?

「じゃあレジに行こっか」

 ロアさんに続いて、俺たちもレジに向かう。途中で聖凪さんが買いたいものを見つけたと言って離れた。

「明良君、お土産の店には最後に行く予定だけど、ここで他に買いたい物はない?」
「はい。大丈夫です」

 そう答えたらまた「いい子」と撫でられた。ロアさんって、弟さんとか妹さんがいるのかな?


 お店の外に出て聖凪さんを待っていたら、ロアさんが俺の耳に触れた。

「このピアスも、聖凪が選んだの?」
「これは入学祝いにってプレゼントして貰いました」
「へぇ。自分の誕生石をプレゼントかぁ」

 にっこりとした笑顔に、なんだか背筋がぞわっとした。俺、いけないこと言っちゃった?
 ロアさんの方を見られずにいると、いつも通りの優しい声が返ってくる。

「似合ってるよ。かっこいい」
「っ、ありがとうございますっ」

 ホッとしたのと嬉しいので、また声が大きくなってしまった。

「ロア。明良に触るな」
「はいはい。嫉妬深いなぁ」

 ロアさんは肩を竦めて俺から離れた。その場所に聖凪さんが入って、袋の中から何かを取り出す。


「明良、これバッグにつけて」
「えっ、かっこいい!」

 買いたい物ってこれだったんだ。地球儀みたいなデザインのキーホルダーで、レトロな色合いがかっこいい。
 聖凪さんが、俺のボディバッグにつけてくれる。

「お揃いにしたかったから、プレゼント」
「ええっ、ありがとうございますっ。お揃い、嬉しいです」

 見せてくれたバッグに同じものがついてて、頬が緩む。
 こういうさりげなくつけられるお揃いっていいなぁ。聖凪さんのこと尊敬してるし大好きだし、本当に嬉しい。 

「……ねぇ、なんでこの感じで、まだ付き合ってないの?」
「明良が純粋で可愛いから」
「こんなノロケるくせに、なんでまだ付き合ってないの?」
「一目惚れしたって言ったらスルーされた」

 聖凪さんとロアさんが何か話してたけど、ライトさんの「次いこー!」という声と被って聞こえなかった。


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