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17. 留学の日
しおりを挟む二年生になり、初めての留学の日が訪れた。
最初の国として選んだのは、ニュージーランドだ。サークルの先輩からも過ごしやすいと聞いていたし、治安もいいらしい。
出発を待つ空港のロビーで、聖凪さんが俺の手をぎゅっと握った。
「寂しい……」
ストレートな言葉に、心臓がぎゅうっとなる。聖凪さんに甘えられると俺、本当に弱いんだけど……。
「一週間で、帰って来ますから……」
じゃあ行きません! と言ってしまいそうになる。でも言ったら言ったで、聖凪さんは行っておいでと言うんだろう。
今回の滞在自体は五日で、旅行くらいの短期間だ。
宿泊先も、部屋を借りずにホテル暮らし。姉妹校を訪れて交流することが目的で、働いたりもしない。
「先輩。そんなに離れたくないなら、一緒に来たらいいじゃないですか」
そう言ったのは佐伯君だ。今回の留学先には、希望が一緒だった佐伯君と行く。
「それが出来るならやってる」
「あ、就職の面接があるんでしたっけ」
「分かってて言ってるな?」
「すみませーん」
佐伯君……聖凪さんのこと一番警戒してたのに、今ではすっかり仲良しだ。
聖凪さんは四年生になって、すでに内定をいくつか貰っている。でも、一番行きたい場所の面接が明後日あるらしい。もしなかったら、本当について来てたのかな?
「ついて行きたいけど、勉強の邪魔をしたいわけじゃないから」
見上げただけなのに、心を読んだみたいな答えが返ってきた。聖凪さんは、顔を見たら分かると言ってたけど、俺ってそんなに分かりやすいのかな?
「明良。気をつけて行っておいで」
「はいっ」
返事をしたら、その唇に啄むようなキスをされた。
「わー、日本でやったぁ」
「日本で恋人にキスしたら駄目って条例ないだろ?」
「ないですねぇ」
のんびり話す二人に、俺の羞恥心がついていかない。
恋人になってから約九ヶ月。聖凪さんは、ロアさんたちや佐伯君たちの前では、遠慮せずに俺に恋人っぽいことをしてくる。
信頼しているからこそだと思うんだけど……たとえ友達でも、普通に人前は恥ずかしい。
佐伯君はもう慣れてしまったのか、こんな反応だ。大津君は、実際に俺と聖凪さんが付き合い始めたと言った時は驚いていたけど、三根君からは、「やっとか」と呆れられた。
「行ってきますのキスも終わったなら、行こうか」
「言わないでよ……」
言葉にされると顔がますます火照ってしまう。
でも……行ってきますの、キス……。
「……行ってきます、聖凪さん」
背伸びをして、聖凪さんの頬にキスをした。
一週間も離れるのは初めてだし、俺からもしたいなと思った次第だ。強がってみても、俺も寂しいのは同じだから。
「明良……帰って来たら、いっぱいキスしよ」
「先輩、色々と台無し。行くよ、由井」
佐伯君に手を引かれて、ゲートへと向かう。強引に見えるけど、こうでもしないと俺たちが離れられないと思ってくれたんだと思う。
ありがとう、と言ったら、どういたしまして、と明るい笑顔が返ってきた。
聖凪さんの姿が見えなくなるまで手を振って、俺は飛行機に乗り込んだ。
初めての海外留学が、とても楽しみだ。
でもやっぱり、聖凪さんと離れるのは寂しい。
聖凪さんもすごく寂しがってくれてたから……。
……帰ったら、俺からも、いっぱいキスをしよう。
-END-
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