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2. 理央のこと
しおりを挟む「まだ片付いてなくてごめん」
理央はばつが悪そうに笑って、麦茶しかないけど、とグラスを渡してくれた。
訪れた理央の部屋は、立派なマンションの一室だった。理央の父親は不動産会社に勤めていたなと思い出す。成長したとはいえ、理央はまだ高一。セキュリティがしっかりしたところに住ませないと心配だよな。
「……ごめん、凰ちゃん」
「ん?」
「ずっと、連絡しないと、と思ってたんだけど……」
「何か事情があったんだろ? まあ、正直に言うと寂しかったけど、また会えたんだからいいよ」
それに、嫌われたわけでも忘れられたわけでもなかった。理央がまた「凰ちゃん」と言って懐いてくれるだけで、過去の寂しさも吹き飛ぶというものだ。
「俺も、凰ちゃんにまた会えて嬉しい。嫌われてなくて良かった……」
「嫌うわけないって」
項垂れる姿が捨てられた大型犬に見えて、つい頭を撫でてしまう。でも、昔みたいな子供扱いは嫌かもな。
「凰ちゃんに撫でられるの、好き」
理央が笑うから、一度離した手でまた頭を撫でる。大きくなっても甘えん坊で可愛いな。そう思っていると、理央が俺を抱き締めてきた。
「二年前に、両親が離婚したんだ。それで俺、ちょっと荒れてて……連絡できなくて」
「そうだったのか……」
大変だったな、と言葉にするのは簡単でも、荒れるほどに傷ついたことをその一言で慰めたくなかった。代わりに理央の背を撫でると、俺の肩に頬を擦り寄せてくる。
「どっちも再婚することになったから、どっちについて行くのも微妙でさ。凰ちゃんがいるから、戻って来ちゃった」
理央は顔を上げて、泣きそうな顔で笑った。
「そっか……俺のとこに戻って来てくれて、嬉しいよ」
昔から懐いてくれてたけど、今も変わらず兄みたいに思ってくれていることが本当に嬉しい。
「入学したてで一人暮らしは大変だろ? 俺、一応家事出来るし、休みの日とか放課後に来ようか?」
「それは嬉しいけど……でも凰ちゃん、今年受験でしょ?」
「勉強は得意だから大丈夫だよ。息抜きにもなるし」
「凰ちゃん、かっこいい」
「まあ、それしか取り柄ないからな」
「凰ちゃんは、取り柄しかないよ?」
本気で不思議そうな顔をする。そう言って貰えるのは嬉しいけど……俺、運動は苦手だし、服のセンスも微妙だし、ゲームも下手だし……ってことは、今は理央には言わないでおこう。
「凰ちゃん。大学は遠くに行くの?」
「第一志望は家から通える距離だよ。第二志望は他県だけど」
そう答えると、理央は微妙な顔をする。
「第一志望、絶対受かってね。俺、凰ちゃんがいないと生きていけない」
昔は俺に対しても遠慮がちなところがあったのに、すっかり姫気質に育って……。そんな理央も可愛いと思ってしまうんだから、俺も大概、理央に甘いよな。
「凰ちゃん。大好きだよ」
そう言って笑う顔に幼い頃の理央が重なって、感慨深くなる。本当に大きくなって……。俺も好きだよ、と返すと理央はますます嬉しそうに頬を緩めた。
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