3 / 12
3. 本性ってわけじゃないよ
しおりを挟む「坂口~。なんか、えぐいイケメンと校門で抱き合ってたって聞いたんだけど」
翌日。クラスメイトの岡本が、ニヤニヤしながら俺の席までやってきた。
「……ああ。あれ、理央だよ」
「ん? あー、前に言ってた」
「そ。俺の可愛い弟が、俺よりでっかくなってた」
「マジかぁ。成長期って残酷だよな」
「お前が言うなよ?」
一年の時から同じクラスだけど、岡本はぐんぐん伸びて、今や俺よりも背が高い。運動部は伸びるなぁ。理央より少し低いくらいか?
「でも、笑顔が可愛いのは変わってなかったよ」
「男相手に可愛いって」
「可愛いんだよ。昔から変わらず、凰ちゃん凰ちゃんって懐いてくれてさ」
「あー、まあ、懐く気持ちは分かるわ~。坂口って、優しい国語の先生って感じだし」
「それって眼鏡だからだろ?」
「いやいや、雰囲気がもう優しい教師よ」
褒めているのかどうなのか分からないことを言って、岡本は突然眉間に皺を寄せた。
「昔から変わらず、かぁ……そういう奴ほど裏があったりしないか?」
「理央に限って、ないない」
笑い飛ばしたところでホームルームが始まって、岡本は「あると思うけどな~」と言いながら自分の席に戻って行った。
◇◇◇
『ごめん、提出物あるから少し遅れそう。迎えに行くから教室で待ってて』
メッセージと一緒に、ごめん、という可愛いスタンプが送られてくる。
今日もマンションに来て欲しいとお願いされていたから、待ち合わせ場所の昇降口に向かおうとしたところだった。
「提出物ならそんなに時間かかんないだろうし、迎えに行ったら?」
「見たな?」
「見えたんだよ。ごめ~ん」
岡本はそう言って舌を出してウインクする。別に見られても困らないけど、雑な謝罪だなぁ。背中を軽く叩くと、ごめんね~と口元に両手を添えて目をパチパチさせた。
「ゴツい男にされてもなぁ……って、なんでついて来るの」
「まあまあ。坂口が可愛がってる理央君、見てみたいし」
「見てもいいけど、裏とかないからな?」
「あると思うけどな~……って、なんかすごい一軍っぽい奴らいる」
岡本の視線の先を追うと、長い髪を綺麗に巻いた女子たちと、制服を着崩して髪をセットした男子たちが廊下に集まっていた。
「うちってそんな校則厳しくないけど、坂口的にあれってオッケー?」
「どうだろう……化粧も濃すぎるわけじゃないけど……」
「スカート短いな~。爪ギラギラしててすげぇ」
そう言いながら女子の足元をジッと見る岡本。でも、俺は……その中心にいる人物から目を離せなかった。
「理央、このあとカラオケ行かん?」
「行こーよ、理央君いるだけで盛り上がるし」
ああ……あれ、やっぱり理央か。美男美女に囲まれてても目立つな。早速友達ができたみたいだし、昔は人見知りだったのに、感慨深い……。
「行かねぇ」
「え~、行こうって。イケメンいないとつまんないし~」
「だる」
だる、って言った?
理央が?
「昨日、凰ちゃんセンパイ? といた時と違いすぎん?」
「お前ごときが呼ぶな。坂口先輩と呼べ」
「対応違いすぎて笑える」
彼らの笑い声がどこか遠くに聞こえる。
眉間に皺を寄せて、面倒臭そうに男子生徒の肩を押して退かそうとする……あれが、理央?
「…………凰ちゃん?」
「あ……え、っと……」
呆然としていたら、目が合ってしまった。
え、これ、なんて言ったらいいんだろ……。
「迎えに行くって言ったのに」
理央は俺のそばまで歩いてきて、聞いたことのない大きな溜め息をついた。
思わず落とした視線の先には、理央の大きな足。昔は俺よりも随分小さかったのに……いつも俺の後ろをついて回っていたのに……。
「別に、こっちが本性ってわけじゃないよ」
「っ……」
理央の声音が柔らかくなる。顎を掴まれて、顔を上げられた。
「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」
記憶の中よりも……なんなら昨日よりも随分と低い声で、とんでもないことを言って爽やかに笑う。俺の可愛い弟分は、なんてふてぶてしい男に成長したんだ……。
「ところで……凰ちゃん、その人、誰?」
「え? あ……クラスメイトの岡本だけど……」
驚きのあまり忘れていたけど、俺の隣には岡本がいた。
「仲いいの?」
「まあ……一年の時から一緒だから」
「あーっ、俺、自主練するんだった! じゃあな、坂口!」
「えっ? あ、そっか、頑張れよ」
ありがと! と言って廊下を走り去って行く。明日、廊下は走るなって言っておこう。
「じゃあウチらも帰るね~」
「凰ちゃ……坂口センパイも、またね~」
理央のクラスメイトたちは、俺にまで手を振ってくれて廊下を歩いて行った。見た目は派手だけど、理央のクラスメイトがいい子たちで安心した。
……でも俺、この後どんな感情でいたらいい?
「凰ちゃん、帰ろ」
「っ……ああ、そうだな」
「そうだ。ちょっとスーパーに寄っていい? クーポン出てて」
理央が見せてきたのは、近くのスーパーのアプリだ。今日はカップ麺と掃除用具が値引きになるらしい。
昨日の理央よりも、少し気怠げな話し方。低い声。表情からも甘えた感じがなくなっている。もしかしたら昨日は、俺が驚くと思って昔みたいにしてくれていたのかな……。
でも、そうだよな。五年も経ったんだから、昔と違って当然だよな。
「理央、しっかり者になったなぁ」
「五年前の俺とは違うからね」
笑い方も大人っぽくなったけど、褒めると喜ぶところは、やっぱり変わらずに可愛かった。
「……もう見られたから、今更どうにも出来ないけど」
「うん?」
「……今の俺、嫌じゃない?」
「嫌じゃないよ。正直、すごく驚きはしたけど、理央ももう高校生だもんな」
不安そうな理央にそう答えて笑ってみせる。それでもまだ心配な顔をしているから、手を伸ばして頭を撫でた。
「本当に大きくなったなぁ」
「凰ちゃんに撫でられるのは好きだけど、俺はもう子供じゃないよ」
ムッとして拗ねる顔が可愛い。でも、撫でられるのは大丈夫そうだな。ご両親のことで荒れていた時期があったって言ってたし……これからは、俺がたくさん甘やかしてやろう。
61
あなたにおすすめの小説
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
アイドルですがピュアな恋をしています。
雪 いつき
BL
人気アイドルユニットに所属する見た目はクールな隼音(しゅん)は、たまたま入ったケーキ屋のパティシエ、花楓(かえで)に恋をしてしまった。
気のせいかも、と通い続けること数ヶ月。やはりこれは恋だった。
見た目はクール、中身はフレンドリーな隼音は、持ち前の緩さで花楓との距離を縮めていく。じわりじわりと周囲を巻き込みながら。
二十歳イケメンアイドル×年上パティシエのピュアな恋のお話。
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった
たけむら
BL
「思い込み激しめな友人の恋愛相談を、仕方なく聞いていただけのはずだった」
大学の同期・仁島くんのことが好きになってしまった、と友人・佐倉から世紀の大暴露を押し付けられた名和 正人(なわ まさと)は、その後も幾度となく呼び出されては、恋愛相談をされている。あまりのしつこさに、八つ当たりだと分かっていながらも、友人が好きになってしまったというお相手への怒りが次第に募っていく正人だったが…?
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる