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7. お誘い
しおりを挟むそれから一ヶ月が経った。
今年は例年より早い梅雨明けで、七月に入った途端にぐっと気温が上がった。うちの学校は教室に冷房があるから、勉強に支障はない。
設置した当初はこんなに早い時期から稼働させることはなかったのに、と先生が苦笑していて、たった数年でこんなに気温が上がったなら、これから先どうなるんだろう? と心配になる。
岡本とそんな話をしながら次の教室に移動していると、渡り廊下の向こうから、理央とクラスメイトたちが歩いて来ていた。その中の一人が、みんなにスマホの画面を見せている。
「日曜にこの神社のお祭り行かん?」
「ライトアップ綺麗~。理央君、ここで写真撮ろー」
「人混みだるい」
「とか言って、坂口センパイとは行くくせにー」
「それは当然」
理央の顔は見るからに気怠そうで、でもクラスメイトは気にする素振りもない。積極的に交流する気がないのは少し心配だけど……そんな理央がみんなに受け入れられてるならいいのかな。
俺に気付いた理央は、クラスメイトの輪の中心から出て俺のそばに駆け寄ってくる。
「凰ちゃん。日曜に、隣駅の神社のお祭りに行かない? ライトアップが綺麗なんだって」
ええっ、それさっき理央が誘われてなかった?
「センパーイ。理央が一緒に写真撮りたいらしいっす」
「思い出作りたいらしいよー」
クラスメイトたちは不快な顔もせず、行ってあげて、と笑顔で俺に言う。
「理央君、ここで写真撮って送ってよー」
「やだ」
「理央君とセンパイとか、バズりそうじゃん」
「凰ちゃんは俺のだから駄目」
「じゃあ、理央君だけ」
「俺は凰ちゃんのだから駄目」
「それは知ってたー」
あまりにテンポのいい会話。これって、理央、人見知り治ってるんじゃないか?
「理央、俺ら先行くな」
「凰ちゃんセンパイ、またねー」
「だから、呼ぶな」
ムッとする理央にクラスメイトたちは楽しげに笑って、廊下を歩いて行った。
「騒がしくてごめんね」
「楽しい人たちだね。理央が友達と仲良さそうで安心したよ」
「友達じゃないし仲良くもない」
「そう言えるところが仲いいんだって」
今の言葉を聞いても、彼らは気にしないんだろう。本当にいい人たちだと思う。
「でも、友達は理央と行きたくて誘ってたのに、良かったのかな……」
「大丈夫だよ。……多分あいつら、凰ちゃんに気付いててあの話したんだと思う」
「そっか。いい友達だね」
「情報提供は助かるけど友達ではない」
ツンとして言うから、ついクスリと笑ってしまった。理央が自然体でいられるほどの友達が出来て、本当に良かった。
「俺が凰ちゃんって呼ぶから真似するのかな」
理央は突然深刻な顔をする。
「凰太朗」
「っ……元の呼び方でいいよ」
まっすぐに見つめられたまま名前を呼ばれて、心臓が変な跳ね方をした。
「凰ちゃん、ドキッとしてくれた?」
「……まぁ、今のは」
「やった」
嬉しそうにする理央は、いつも通り可愛い。最近、時々大人っぽい顔をするから調子が狂うんだよなぁ……。
「えー、坂口君、平瀬君。そろそろ次の授業が始まりますよ」
「あ、本当だ。岡本、なんでそんな話し方?」
「親しげにすると、平瀬君が怖いのですよ」
「理央が?」
視線を向けても、理央は穏やかに微笑んでいる。
「俺はただのクラスメイトですよ。敵ではないので」
岡本は明るい奴だし、和ませようとしてくれてるのかな? 理央にとっては先輩だし、背も高くてちょっとマッチョだからな。
「あ。日曜、その神社の前で待ち合わせでもいい?」
「うん。ありがとう、凰ちゃん。お祭りの詳細、後で送るね」
パッと満面の笑みになる理央に見送られて、俺たちは次の教室に向かった。
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