悪役令嬢として断罪された聖女様は復讐する

青の雀

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 マリアベルーナが家を出てから、修道院に着くまで2日を要した。その間、誰かに見咎めるわけではなく、順調に旅程は進む。

 食事やかいばは、貯金していたもので買えた。目立たないようにフード付きマントを被っていたので、貴族令嬢とは思われなかったみたい。

 だいたい護衛や侍女も付けずに遠出をしたことがない。

 だから生まれて初めての遠出ともいえる家出に、実はワクワク感が止まらないでいる。

 これも一種の冒険だから。母が厳しくて、遊ぶこともままならなかったので、こういうことにも、いちいち感動してしまう。

 ふと、このまま修道院に行かず、いっそのこと冒険者にでもなれば楽しいだろうか?と頭を過ぎるも、そこまで冒険するのもいかがなものかと思いとどまってしまう。

 一応、お妃教育で、護身術や武術の心得はあるものの。男性とは比べ物にならない程、か弱い……はず。

 我が家の騎士と腕比べしたことがないから、実力の程はわからない。



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-



 一方、その頃のアマリリス家では、マリアベルーナの家出を知り、父の公爵が頭を抱えている。

 屋敷の者に、マリアベルーナの行きそうなところを探索するように命じるも、マリアベルーナの外出先は主に、王城だったわけで、他のところには、一切心当たりがない。

 流行りの劇場やカフェにも行ったことがないマリアベルーナの行きそうなところはまったく見当がつかない。それもそのはずで、アマリリス公爵は、本妻とマリアベルーナを蔑ろにして、愛人のところに入り浸っていたのだから、知る由もない。

 新しい公爵夫人となった愛人は、我関せずと鷹揚に構えていて、動じないどころか厄介払いができて、清々したと言った風にお茶を飲んでいる。

 焦りまくっているアマリリス公爵とは、対照的。

 そこにリリアーヌが、もう昼だというのに、今頃起きてきて、マリアベルーナの家出について

「ああ。昨日、レオンハルト様がマリアベルーナと婚約破棄するって、言ってたから、それと関係があるんじゃないの?レオンハルト様にお姉さまに苛められたって泣きついたら、頭を撫でてくれて、婚約破棄してやるって、息巻いてたから」

「り、リリアーヌ!それはまことか!?なんということをしでかしてくれたんだ!いいか?お前がいくらレオンハルト殿下と親密になろうとも、お前は決して、婚約者や結婚相手にはなれないんだぞ!」

「どうしてよ!お姉さまが婚約者になれて、私が成れないなんて、どうして!」

「身分の差だ。婚外子であるお前は、ただの俺の連れ子としてしか、身分がない。俺の身分は、マリアベルーナで保っているようなものだからな。あーあ。でも、これでマリアベルーナの失踪が王家にバレでもしたら、俺もこの家もお終いだ」

 アマリリス公爵は、こんなことになるのなら、リリアーヌをこの家に入れるべきではなかったと後悔し、同時にマリアベルーナをもっと大切に扱って、せめて父娘の信頼関係ぐらいは築いておけば、こんなことにならなかったのかもしれないと、今更ながらに後悔をしている。

「だって、アイツ(マリアベルーナのこと)ウザイんだもの。それに何もできない私を嘲笑うんだよ。誰からも愛されていないくせに生意気なんだよ」

「いい加減にしないか!リリアーヌも少しはマリアベルーナを見習って、勉強しなさい」

「なんなのよぉ!さっきから、マリアベルーナ、マリアベルーナって、アイツが私を苛めなきゃ、もう少し仲良くしてあげたのに」

「この家で一番偉いのは、俺ではなくマリアベルーナなのさ。マリアベルーナがいるから実父である俺がアマリリス公爵を名乗っていられる。失踪したことがバレれば、この家は取り潰しになる運命なのだ」

 マリアベルーナの実母は、某国の王女殿下で、ブランシェ国に嫁いできた。本来、アマリリス家は、改易になるところが、実母が実父と結婚して、子供を生すことを条件に家が存続していた。

 アマリリス公爵は、妻の王女殿下へのコンプレックスから、つい浮気に走ってしまったのだ。何事においても、完璧すぎる妻だったから。

 王女殿下の血を引くマリアベルーナがいなくなれば、当然、家は改易になる。アマリリス公爵は、その地位を失うばかりか、下手をすれば平民落ちになりかねない。

 離婚するも、できない。離婚したら、たちまち公爵の身分を失い、路頭に迷うことになる。このことは、マリアベルーナでさえも知らない話だったのだ。

「そんな話、初めて聞きましたわ!」

 今まで、さんざんマリアベルーナをバカにしてきた使用人も一様に項垂れるばかり。

「元はと言えば、こんな阿婆擦れに引っかかった俺が一番悪い。お前は、俺の地位を見て、俺を愛している風を装っていたのだな?」

「ええ。そうよ。旦那様が、借り物の公爵だなんて、思わなかったから」


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