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さかのぼること、その少し前のこと。休暇中のロバートは、部下に鋭い支援を浴びせ、エレモアを護るように立つ。
アンドリューと共に同行した騎士団側も、ロバートの姿を見て固唾をのむ。
まさに一触即発の事態に発展していた。
そこへ間が抜けたようなユリウスの「ママ」に、苦笑いを浮かべるしかない面々。
「ママ、行かないで。もう僕のこと嫌いになった?僕は要らない子?」
「そんなわけないでしょ?でも、ママはもう行かなければならないの。だから一緒に帰ることはできないわ。もしよかったら、ママの祖国マーシャル国に来てみない?」
ティアラベルローゼは、心にもないことを口にする。お腹を痛めて産んだ我が子のことを見捨てることは心苦しい。でも、ユリウスは、アプリコット国の跡継ぎ息子だから、連れ帰るわけにもいかない。
それにもう時間がない。それなのに、さっきからアンドリューに抱きしめられて、鬱陶しいったら、ありゃしない。
いままでそっぽを向いて疎遠にしていたくせに、何が何でも連れ帰ろうとしているアンドリューとユリウスの態度にフツフツと怒りがわく。
エレモアの顔は完全に青ざめていて、もう刻一刻と時間が過ぎるのを待つより他がないという感じに苛立ちを隠せない。
ティアラベルローゼも然り。ティアラベルローゼはエレモアに目配せをし、ティファニーだけでも、先に出立させるように合図を送る。あらかじめマーシャル国には手紙を送り、マーシャル側に迎えに来てもらえるように頼んでいた。
もしティファニーだけが、マーシャル国に入国したとしても、ティアラベルローゼは事情を手紙に認め、両親の手に渡る手はずを整えていた。だから、もし時間切れしても、きっと大丈夫なはず。それでも、しつこいアンドリューとユリウスに手を焼く。
とにかくティアラベルローゼは、自分が囮になっても、ティファニーをマーシャル国に届けてほしいと、エレモアに託していたのだ。
エレモアの腕に抱きかかえられたティファニーは、ロバートと共に死の森に入る。
ティアラベルローゼは、なんとかアンドリューを説得して、エレモアの後を追いかける。
アンドリューもたいちょうがわるいと訴えられては、無理に引き留める理由がない。一刻も早く実家に戻り養生してほしいと願ってしまったのだ。
野営の設備は悪くはないが、養生には不向きであるから。それに、この死の森を通るには、真の聖女様でないと無理だと思う。だから、この死の森でティアラベルローゼの真価を見届けたいと見届け無意識に思ってしまったのも事実。
アンドリューは、その場にとどまらず、こっそりティアラベルローゼの後を追う。だが、見失わない程度の速さで追いかけることにした。
ティアラベルローゼを後ろから眺めると、その聖女力はすさまじい破壊力があることがわかる。
「ママ!すごーい!」
ユリウスは大はしゃぎで目を輝かせている。それとは反対の反応をしているアンドリューには気づかないでいる。
「やっぱり、本物の聖女様だったなんて……」
もし、本当に離婚が成立すれば、どんなえいきょうがあるか計り知れない。わが身の保身と国益を天秤にかけ、思案に耽る。
「愛している」という言葉だけでは、ティアラベルローゼの心は取り戻せない。なぜ、あの時貧民街で置き去りなんて、酷いことをしてしまったのか、自分でもよくわからない。
取り返しのつかない失態を犯し、妻が聖女様だという現実を突きつけられて、初めて後悔の海に沈んでしまった。
今までのように並んで立つことができないという悔恨を胸に、呆然とするばかりでいるアンドリューは、暗い目を隠そうともしない。
アンドリューと共に同行した騎士団側も、ロバートの姿を見て固唾をのむ。
まさに一触即発の事態に発展していた。
そこへ間が抜けたようなユリウスの「ママ」に、苦笑いを浮かべるしかない面々。
「ママ、行かないで。もう僕のこと嫌いになった?僕は要らない子?」
「そんなわけないでしょ?でも、ママはもう行かなければならないの。だから一緒に帰ることはできないわ。もしよかったら、ママの祖国マーシャル国に来てみない?」
ティアラベルローゼは、心にもないことを口にする。お腹を痛めて産んだ我が子のことを見捨てることは心苦しい。でも、ユリウスは、アプリコット国の跡継ぎ息子だから、連れ帰るわけにもいかない。
それにもう時間がない。それなのに、さっきからアンドリューに抱きしめられて、鬱陶しいったら、ありゃしない。
いままでそっぽを向いて疎遠にしていたくせに、何が何でも連れ帰ろうとしているアンドリューとユリウスの態度にフツフツと怒りがわく。
エレモアの顔は完全に青ざめていて、もう刻一刻と時間が過ぎるのを待つより他がないという感じに苛立ちを隠せない。
ティアラベルローゼも然り。ティアラベルローゼはエレモアに目配せをし、ティファニーだけでも、先に出立させるように合図を送る。あらかじめマーシャル国には手紙を送り、マーシャル側に迎えに来てもらえるように頼んでいた。
もしティファニーだけが、マーシャル国に入国したとしても、ティアラベルローゼは事情を手紙に認め、両親の手に渡る手はずを整えていた。だから、もし時間切れしても、きっと大丈夫なはず。それでも、しつこいアンドリューとユリウスに手を焼く。
とにかくティアラベルローゼは、自分が囮になっても、ティファニーをマーシャル国に届けてほしいと、エレモアに託していたのだ。
エレモアの腕に抱きかかえられたティファニーは、ロバートと共に死の森に入る。
ティアラベルローゼは、なんとかアンドリューを説得して、エレモアの後を追いかける。
アンドリューもたいちょうがわるいと訴えられては、無理に引き留める理由がない。一刻も早く実家に戻り養生してほしいと願ってしまったのだ。
野営の設備は悪くはないが、養生には不向きであるから。それに、この死の森を通るには、真の聖女様でないと無理だと思う。だから、この死の森でティアラベルローゼの真価を見届けたいと見届け無意識に思ってしまったのも事実。
アンドリューは、その場にとどまらず、こっそりティアラベルローゼの後を追う。だが、見失わない程度の速さで追いかけることにした。
ティアラベルローゼを後ろから眺めると、その聖女力はすさまじい破壊力があることがわかる。
「ママ!すごーい!」
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「やっぱり、本物の聖女様だったなんて……」
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取り返しのつかない失態を犯し、妻が聖女様だという現実を突きつけられて、初めて後悔の海に沈んでしまった。
今までのように並んで立つことができないという悔恨を胸に、呆然とするばかりでいるアンドリューは、暗い目を隠そうともしない。
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