夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

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 ところが、ユリウスの頑なな態度に柔化が見られるようになった。宿場町に到着してからというもの、口々に母ティアラベルローゼを称賛する声が届くと同時に、次第にユリウスは胸を張るような仕草を見せ始めたのだ。

「やっぱり、僕のママは最高だね!今までずっとママは能無しの穀つぶしだと思っていたけど、実は、すごい力を持っていたことを初めて知ったよ」
「誰がママのことを穀つぶしと言った?」

 アンドリューの目つきが変わり、真剣な態度で王子に問い質す。

「え……、それは……リリアーヌおばさんが言ったと思う」
「それを信じていたのか?」
「だって……。リリアーヌおばさんは、僕に優しいことばかり言ってくれるから、ママみたいにアレをしたらダメだとか、コレをしちゃいけないとか、言わないから」
「……」

 今更ながらに、リリアーヌの二面性を知り愕然とするアンドリュー。陰で王子を洗脳していたとは……。自分の前ではいつも猫を被り従順で大人しい女性を演じてきたのかと思うと、無性に腹が立ってきた。

 アンドリューは、ティアラベルローゼが戻ってきてくれるのなら、今度こそ、きっぱりとリリアーヌと別れる決意を固めたのだ。

 それにティアラベルローゼを褒めたたえる声を聴くことは、まんざらでもない。アンドリューは自分の妻が美しいだけではなく、聡明で慈悲深く民から慕われていることがわかり、誇らしくなってくる。

 宿場巡りをしている間に、父と子は、ティアラベルローゼへの憧憬を深めていくことになっていく。

 アンドリューは、まるで少年時代に舞い戻ったかのように、ティアラベルローゼに恋焦がれていた時のことを鮮明に思い出すようになる。

 気まずさよりも、早くこの腕に抱きしめ、愛の言葉を囁きたくなってきた。そして置き去りにしたことを、きちんと詫びよう。そうすればティアラベルローゼは、その謝罪を受け入れてくれると信じ切っている。

 



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-





 マーシャル国の国境線まで、残すところ後一つの宿場町だけとなった。今まで、宿場町で問題がないところはひとつも存在せず、干ばつや長雨などの天候不順によるものとか、流行り病で町全体を浄化しなければならないところとかもあった。
 次の宿場町では、どんな困難が待ち受けているのか、誰も知らない。噂では、魔物による瘴気が立ち込めている死の森を通過しなければ、国境線にたどり着けないらしい。
 普通なら、聖女様でも怖気づくものだろうけど、一度死んだ身なので、失うものが何もない。神は乗り越えられる試練しか与えない、と言われるが本当のことかもしれない、と改めて思い至る。

 神様との期日は、あと一日しかない。

 死んでからというもの、不思議とお腹が空かない。まあ、カラダが無くなったので、無理もない。

 それでもティファニーやロバートをはじめとする騎士に食事を与えなければならないので、無理に食事を摂っている。

 エレモアも同じように、食事を摂るというより、食卓の雰囲気を楽しんでいるようだった。

 エレモアの恋人のロバートが甲斐甲斐しく、エレモアの傍にいて、何かとエレモアを助けているのを見ると微笑ましく感じながらも、アンドリューとの夫婦げんかに巻き込んでしまい、命を落とすことになり申し訳なく思う。

 後一つの宿場町でお別れになるかと思うと、心苦しいし、寂しい気もするがこれで黄泉の国の神様との約束が果たせるのでほっとする。

 ところが、宿場町を目前にして、アンドリュー一行に追い付かれてしまったのだ。

 アンドリューは、ティアラベルローゼの行く手を阻み、王都に戻るように要請してきた。

 あと、少しのところなので諦めるわけにはいかない。絶体絶命のピンチに困り果てていたら、馬車の中から小さな影が飛び出してきて「ママ」と呼び掛けてくる。

 ユリウスの姿に驚きはするものの、動じない。
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