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次の宿場町では、今度は干ばつに苦しんでいた。
思うに、一連の天候不順は、おそらく黄泉の国の神様の仕業だと推測される。長い間、聖女様であることに気づかなかったティアラベルローゼに対する罰なのか?それとも真の聖女がリリアーヌではなくティアラベルローゼだと証明させるために、わざと天候不順を起こしているのではないかという疑念まである。
たとえ離婚目的であっても、苦しんでいる民を見殺しにするわけにはいかず、行く先々で聖女の力をフルに発揮していくうちに、ついにアプリコット国の王家の耳に入ることになってしまったのだ。
国王陛下からすれば、真の聖女様がリリアーヌであろうとなかろうと、どっちでもいい話であるが、浮気しているアンドリューは、もし真の聖女様がリリアーヌではなく、妻のティアラベルローゼだった場合、笑い者になることは必定。となることから、事態の収拾と各宿場町で起こったとされる『聖女様出現』と『ティアラベルローゼ妃殿下聖女説』の真相を調べるべく、ティアラベルローゼの後を追う形で、渋々ながら追随することになってしまった。
というのも、父アプリコット国王から、「ティアラベルローゼ妃殿下の実家まで、迎えに行ってくるように」との言明が下されたのだから、無視するわけにもいかない。
たかが妻が実家に里帰りすることに腹を立て、つい「二度と帰ってくるな」と言った手前、どうにも気まずい。
将来の国王がこんな狭量では、先が思いやられるというヒソヒソ噂話が逆風になっている。
今、実家のあるマーシャル国に行けば、さらに後ろ指をさされ、ティアラベルローゼの両親からリリアーヌの件で、批難されることは目に見えている。だから本音を言えば、行きたくない。でも、行かなかったら、もし、ティアラベルローゼが本物の聖女様だった場合、離婚が確定事項となり、大切な聖女様をみすみす失う国益を損ねることになりかねない。
それにもし、離婚が確定事項になってしまったら、王太子の地位を退位し、息子ユリウス王子に禅譲しなければならないだろう。
そうなれば、若いリリアーヌから愛想を尽かされ、挙句、廃嫡されることになるかもしれない。
アンドリューは、ティアラベルローゼのことを嫌っているわけでもない。憎からず思っているのだ。ティアラベルローゼとは、大国アトランティスに留学中に知り合った『高嶺の花』に違いなかった。
在学中に何度もラブレターを書き、手渡してきたが、悉く撥ね退けられ、卒業後、政略で両国間の同盟を成立される際に、結婚にこぎつけることができたのである。
だから、それなりにティアラベルローゼのことを愛し、尊重し、大事にしてきたつもり。たった一度の浮気で、まさか、ここまでティアラベルローゼが激昂するとは、思ってもみなかったことなのである。
今まで一穴主義を貫いてきた男にとって、一度、踏み外した甘い誘惑に抗うことができず、ずるずると甘い罠に嵌り続け、抜け出すことが困難になってきていた。
翌朝、アンドリューは重い腰に鞭を打ち、ユリウスを伴って、出発することにした。
名付けて、「ティアラベルローゼの母性愛を刺激する作戦」のために。王子ユリウスが「帰ってきて」と懇願すれば、いかにティアラベルローゼが頑なでも、素直に戻ってきてくれると甘い考えを持つ。
しかし、ユリウスは、ティアラベルローゼの上を行く頑固者だったことが大誤算となる。
「いやだ。ママなんて嫌いだから、帰ってこなくてもいい。たとえママが僕をいらないと言っても構うもんか!僕もママよりリリアーヌ叔母さんの方がいい!」
「いや……それでは、国益が……」
まだ5歳の幼子に言ったところで、理解できる話ではないことにアンドリューは途方に暮れる。
今になって、リリアーヌとの情事をスムーズにするため、ユリウスを巻き込んでしまったことに後悔する。
父子揃って、女の好みが同じということに、頭を抱えるしかない。
思うに、一連の天候不順は、おそらく黄泉の国の神様の仕業だと推測される。長い間、聖女様であることに気づかなかったティアラベルローゼに対する罰なのか?それとも真の聖女がリリアーヌではなくティアラベルローゼだと証明させるために、わざと天候不順を起こしているのではないかという疑念まである。
たとえ離婚目的であっても、苦しんでいる民を見殺しにするわけにはいかず、行く先々で聖女の力をフルに発揮していくうちに、ついにアプリコット国の王家の耳に入ることになってしまったのだ。
国王陛下からすれば、真の聖女様がリリアーヌであろうとなかろうと、どっちでもいい話であるが、浮気しているアンドリューは、もし真の聖女様がリリアーヌではなく、妻のティアラベルローゼだった場合、笑い者になることは必定。となることから、事態の収拾と各宿場町で起こったとされる『聖女様出現』と『ティアラベルローゼ妃殿下聖女説』の真相を調べるべく、ティアラベルローゼの後を追う形で、渋々ながら追随することになってしまった。
というのも、父アプリコット国王から、「ティアラベルローゼ妃殿下の実家まで、迎えに行ってくるように」との言明が下されたのだから、無視するわけにもいかない。
たかが妻が実家に里帰りすることに腹を立て、つい「二度と帰ってくるな」と言った手前、どうにも気まずい。
将来の国王がこんな狭量では、先が思いやられるというヒソヒソ噂話が逆風になっている。
今、実家のあるマーシャル国に行けば、さらに後ろ指をさされ、ティアラベルローゼの両親からリリアーヌの件で、批難されることは目に見えている。だから本音を言えば、行きたくない。でも、行かなかったら、もし、ティアラベルローゼが本物の聖女様だった場合、離婚が確定事項となり、大切な聖女様をみすみす失う国益を損ねることになりかねない。
それにもし、離婚が確定事項になってしまったら、王太子の地位を退位し、息子ユリウス王子に禅譲しなければならないだろう。
そうなれば、若いリリアーヌから愛想を尽かされ、挙句、廃嫡されることになるかもしれない。
アンドリューは、ティアラベルローゼのことを嫌っているわけでもない。憎からず思っているのだ。ティアラベルローゼとは、大国アトランティスに留学中に知り合った『高嶺の花』に違いなかった。
在学中に何度もラブレターを書き、手渡してきたが、悉く撥ね退けられ、卒業後、政略で両国間の同盟を成立される際に、結婚にこぎつけることができたのである。
だから、それなりにティアラベルローゼのことを愛し、尊重し、大事にしてきたつもり。たった一度の浮気で、まさか、ここまでティアラベルローゼが激昂するとは、思ってもみなかったことなのである。
今まで一穴主義を貫いてきた男にとって、一度、踏み外した甘い誘惑に抗うことができず、ずるずると甘い罠に嵌り続け、抜け出すことが困難になってきていた。
翌朝、アンドリューは重い腰に鞭を打ち、ユリウスを伴って、出発することにした。
名付けて、「ティアラベルローゼの母性愛を刺激する作戦」のために。王子ユリウスが「帰ってきて」と懇願すれば、いかにティアラベルローゼが頑なでも、素直に戻ってきてくれると甘い考えを持つ。
しかし、ユリウスは、ティアラベルローゼの上を行く頑固者だったことが大誤算となる。
「いやだ。ママなんて嫌いだから、帰ってこなくてもいい。たとえママが僕をいらないと言っても構うもんか!僕もママよりリリアーヌ叔母さんの方がいい!」
「いや……それでは、国益が……」
まだ5歳の幼子に言ったところで、理解できる話ではないことにアンドリューは途方に暮れる。
今になって、リリアーヌとの情事をスムーズにするため、ユリウスを巻き込んでしまったことに後悔する。
父子揃って、女の好みが同じということに、頭を抱えるしかない。
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