夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

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「さっきから、『離婚』と何度言えば、気が済むのか?ティアラと俺は普通の夫婦ではないのだ。君は正真正銘の正妃であり、マルーシャ国との懸け橋の任を得ているのだ。それがわかっていながら、なぜ何度も『離婚』を口にする?あ!わかったぞ!リリアーヌのことを誤解して、嫉妬しているのか?リリアーヌを寵愛しているのは、単なる国益のためで、やましいことなど何一つない。さっき、置き去りにしたことを怒っているのか?でも、君はこうして無事に帰ってきたではないか。もう十分だろ?いつまで拗ねているつもりだ」

 何度、説明してもアンドリューは、聞く耳を持たない。いくら死んで戻ってきたと説明しても。

 ティアラベルローゼは、もう虚しくなり、両腕で自分を抱きしめる。

 10日という期限は刻一刻と過ぎる。時間切れになるのを恐れて、明日の朝にでも、ティファニーを連れ、里帰りするということで、国王陛下の了承を得たのだ。

「なんだ?ティアラベルローゼ。顔色が優れぬではないか?大丈夫か?アンドリューに国境付近まで送らせるように手配しようか?」
「いいえ。結構です。アンドリュー殿下はお忙しいようですから」
「そうか?あまりリリアーヌのことで悋気を起こさないようにな」

 ティアラベルローゼは、国王陛下まで、この認識だということがわかり絶望的になる。単なる焼きもちからアンドリューとの仲が険悪になっていると思っていることが悲しい。

 もう10日間の期限しかないから、女官に命じて急いで荷造りを始める。もう見切り発車をしてもやむを得ないと思っている。マルーシャ国にティファニーを無事届けさえすれば、後から離婚の書類を送り、穏便に話をつけることができると思っている。何より、マルーシャ国には父も母も健在だから、もし、10日のうちに会うことができたら、きっとわかってもらえると信じている。

 だが、翌朝、アンドリューにより足止めをくらわされることになったのだ。

「ティアラベルローゼ!いい加減にしないか?父上に言って、里帰りを認めさせるなど言語道断だ。君には、王太子妃という立場の責任がないのか?俺には、リリアーヌのことで嫉妬して、わざと里帰りすると策略をめぐらしているようにしか見えないのだ」
「どう考えていただいても構いません。とにかくわたくしには時間がありません。お怒りなら、離婚していただいてもいいのですよ。リリアーヌ様とお幸せになってください。ユリウスもそれを喜ぶでしょう」
「お、お前……!わかった。出ていくのなら、もう戻ってくるな!」

 そのまま馬車に乗り、一瞥すら与えずに、王城を去っていくティアラベルローゼ。どうせ、もう死んでいるのだから離婚の承諾など、敢えていらない。ティファニーさえ無事に国境を越えられれば、後は野となれ山となる、

 何もわからないティファニーは口を真一文字に結んでティアラベルローゼの胸に顔を沈めている。

 まさかティファニーもこのまま二度とアプリコットの血を踏むことがないと知らない。それは、兄のユリウスと生き別れになることを意味しているとも知らずに、ただ父アンドリューの怒った顔が怖くて怯えているだけであった。

 そしてロバートは、騎士団に休暇届を出し、恋人のエレモアと共に、マルーシャに出立することになった。

 驚いたことに、昨日のあの王太子妃置き去り事件に疑念がある騎士は、ロバートに賛同し、共に休暇届を出し、同行してくれることになった。

 マルーシャ国から輿入れの際に同行した侍女を含め、けっこうな大人数での里帰りという名の家出は、滞りなく道中を進んでいく。

 もう二度と戻らないアプリコット国。でも、荷物は最小限度に抑えるように指示を出したティアラベルローゼ。荷物が多いと、どうしても行程に日数を取られてしまいがちになるから。

 最初の宿場町が見えてきた。
 その町は、本来は農産物が豊かで、市場は毎日、お祭りのようなにぎやかさを誇っている街だったはずなのだが、ティアラベルローゼが止まろうとしていた宿屋は、ここのところ続いた雨の影響で、作物がみな腐ってしまい困り果てていたところに、ティアラベルローゼが来てしまった。

 ティアラベルローゼは、黄泉の国での神様が言った「聖女様」ということを思い出し、宿屋の裏の畑で跪き、祈りを捧げることにした。

 その時、奇跡が起こったというか……。不思議なことに数時間で腐っていた野菜がみずみずしく復活してしまったのだ。

 それを見た宿屋の主人は、「なんと!王太子妃殿下こそが、真の聖女様だったのか!」と納得し、無事、その宿場町で泊まることができたのだった。

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