夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀

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「こら、二人とも上玉じゃねえか!」

 貧民街で置き去りにされたティアラベルローゼとエレモアは、あっという間に浮浪者たちに取り囲まれてしまった。

 明らかに貴族とわかるような上等の身なりに、浮浪者たちは舌なめずりをしている。

 ティアラベルローゼは腰入りする前までマルーシャ国の王女であったわけだから、護身術のひとつぐらい身についているのだが、なんといっても多勢に無勢、どこから這い出てきたかと思えるほど、あっという間に浮浪者の群れに囲まれてしまった。

 身ぐるみ剝がれて、辱めを受け、どこかに売り飛ばされてしまう危機感が二人を襲う。

 このあたりは、王都のはずれといえども、自警団がいるはず。しかし、待てど暮らせど助けに来てくれるものは一人としていない。

 騒ぎを聞きつけ、誰かが駆けつけてくれたようだが、その相手は口外を根城としていた盗賊団の一味だった。

 まさか「疾風の鷹」のアジトが貧民街にあるとは思ってもみなかったこと。

 二人はアジトの中に引き込まれそうになるのを懸命に、めった刺しになりながらも踏みとどまり、名誉の戦死を選んだ。

 二人とも、美人だったことが幸いし、顔に一つの傷もなかった代わりにカラダには、無傷の皮膚を探すことが困難なほどに滅多刺しにされていて、その数、100に上る。

 二人がそれぞれ背中を預けるような形で、お互いの傷の深さに築かぬまま死んでいった。

 当然のことながら、死体は無残に打ち捨てられ、風と共に腐敗していく。

 



-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-





 気づけば、二人はいつの間にか真っ白なドレスを着て、白い空間に佇んでいた。さっきまでの血の匂いなどなかったかのような静けさに目を見張る。

 その時、頭上からまばゆい光に包まれた神様(?)のような存在が
「聖女ティアラベルローゼよ。今世は、不運であったな。せっかく聖女として生まれてきたのに、関係のない奴が聖女の名を欲しいままにされ汚されたのだから、10日間だけの猶予を与えることにする。悔いのないように、来世への準備をしなさい」

「え!わたくし、聖女様だったの?」





-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-





 こうして二人は戻ってきたのだが、どこか地に足がついていない感じがするのは否めない。

 まあ、一度死んだ身だから仕方がないのかもしれない。

「エレモアもきちんとロバートにお別れを言いなさい」
「妃殿下はいかがされるおつもりですか?」
「わたくし?わたくしの意志は、アンドリューで離縁する。そして、できればティファニーをマルーシャに連れ帰るつもりでいるわ」
「ユリウス様のことは……」

 ティアラベルローゼは静かに首を横に振る。

「ユリウスは、わたくしを母と認めていない。それに偽聖女のリリアーヌを心底慕っているから無理に連れて行けないわ。アプリコットの王位継承権者でもあるからね」

 皮肉なことに実の母より、若いリリアーヌの方がいいのだろうというところは、夫アンドリューとそっくりなのだ。

 父子って、こういうところまで似るものなのかしらね。

 ティファニーも王位継承権者であることに違いはないが、ティファニーには、マルーシャ国を継いでもらいたいと願っている。自分が政略とはいえ、アプリコットに嫁いでしまったのだから、マルーシャ国の後継者として、年頃になれば、同盟国から婿を迎えて、マルーシャを盛り立ててほしいと願っているのだ。

 それからどこをどう帰ったか、記憶があいまいだが、とにかく……、ひょっとすれば、二人とも飛んで帰ったのかもしれない。

 ロバートは、帰ってきたエレモアに寄り添うように迎える。
「無事だったか。まったく殿下も何を考えておられるのやら。とにかく無事に帰ってこられて何よりだ」

 エレモアは小さく微笑み、マルーシャ国に帰国する旨を伝えた。

「え?また、戻ってくるんだろ?そんな永遠の別れみたいな言い方、やめてくれないか?」

「いいえ。私たちは、あなた方に置いてけぼりを食わされた後、本当に死んでしまったの。ティファニー王女様のためにマルーシャ国に戻ります」
「そんな……。嘘だろ?冗談はよしてくれ」

 ロバートの声は低く沈んでいる。エレモアの説明に信じられないという気持ちと青白いエレモアの顔を見比べ、愛するエレモアの言葉を半信半疑ながら信じ、マルーシャ国までの護衛を申し出てくれた。

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